表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
65/66

パンツ紛失事件

夕暮れの廊下を、レヴィンは珍しく難しい顔で歩いていた。


「タイオン、ノア。ちょっと相談がある……」


その声音は妙に真剣だった。



「……なんだよ急に」


ノアが眉をひそめる。


(この前の迷宮の件か……?ボロボロに負けたし……責任も感じてるんだろうか……)


隣のタイオンも、静かにレヴィンを見つめた。



レヴィン

「後で俺の部屋に来てくれ」



ーー2人は仕事を終えると、そのままレヴィンの部屋へ向かった。



ーー妙に明るい。


なぜか無駄にライトが増えている。



ノア

「……なんだこの部屋」


引くノア。


レヴィン

「明るい方がよくね?この前見つけて!」


一度笑顔を浮かべるが、すぐに真顔に戻る。



(こいつが相談なんて……余程のことなんだろう)


2人は覚悟を決めた。


そして数秒の沈黙のあと――


「実はパンツがない....」


「は?」


空気が止まった。


「俺が今履いてるのしかないんだ...」


冷めた顔をしたノアに対して、タイオンはゴクリと喉を鳴らした。


「……な、何枚あったの?」


「合計で6枚!」


「7枚じゃないんだね……」


タイオンは再びゴクリと喉を鳴らす。


「……レン……言いにくいんだけど……」


レヴィン

「うん……」


「干し方すごい時あるよね……?」



数秒後、レヴィンは静かに口を開いた。


「そこは否定しない……」


「飛んだんじゃ……ないかな」


タイオンが恐る恐る告げる。


沈黙。



レヴィン

「……いや」


首を横に振る。


「そんな簡単に飛ぶかな……」

ノア「飛ぶわ!!」


今まで黙っていた分、即答が鋭い。


「この前なんか片側しか止まってなかったぞ!!」


レヴィン

「朝忙しかったから……!」


慌てて言い訳する。


タイオン

「しかも一昨日、雨だったのに干しっぱなしだったよね……?」


レヴィン

「それは……天気予報見忘れてて……帰ってから取り込んだし……」


小さく反論...。


ノア

「その時点でびしょ濡れだったんだろ」



レヴィン

「……うん」



ノア

「で、適当にまた洗って干したんだろ」



レヴィン

「……うん……」



ノアとタイオンは、何か言いたげにレヴィンを見た。



いたたまれなくなったのか、レヴィンは視線を逸らす。


「夜干したから……黒いと見えなかっただけで……」


小さく言い訳。



ノア

「その時点で何枚あったんだ……」


静かに追撃。



レヴィン

「……3枚くらい……?」



ノア

「もう半分消えてんじゃねえか!!」


部屋にツッコミが響いた。


タイオンは静かに口元を押さえた。


「レン……それ、徐々に減ってたんだね……」


レヴィン

「でも3枚は居なくなったとして!!! あとの3枚は心当たりがねえんだよ!!」


勢いよく立ち上がる。



タイオンは一瞬ひるむ。


だが、ノアには通用しない。


ノア

「もう買えばいいんじゃねえか……黒い無地なら5枚セットで売ってるの見たことあんぞ……」


部屋が静まった。


ノア

「もう諦めて買いに行くぞ!! 一緒に選んでやるから!!」


レヴィン

「黒い無地がいい!!」


ノア

「分かってるわ!!」


タイオンは小さく呟いた。


「結構頑固だね……」


レヴィン

「これは俺の中で終わってないんだ!!」


ノア

「パンツにそんな熱量向けんな!!」


タイオンは少し考えてから首を傾げる。


「でも……もし本当に誰かが持っていったなら怖いね……?」


部屋に一瞬の沈黙。


「……下着泥棒だ!!!」


レヴィンが勢いよく立ち上がる。


ノア

「誰が男の下着なんか盗むか!!!」


「お前の下着取りそうなのなんかアディオさんくらいだろ!!」


タイオン

「いやいや……それは冗談きついよ……」



ーーその時だった。


レヴィンがぽつりと呟く。


「この前アディオ泊まりに来て洗濯してくれた」



ハッ――


二人の目が見開く。



沈黙。



タイオン

「……まさか」



ノア

「いやいやいや!!」


頭を抱える。


「だからって盗むわけねえだろ!!」


「でもアディオ洗濯上手いんだ!!」


ノア

「そこじゃねえ!!」



レヴィン

「しかも干したのアディオだ……」


再び沈黙。


ノアは静かに天井を仰いだ。


「めんどくせえ事件になってきた……」



静まり返るレヴィンの部屋。


増えたライトがやけに眩しい。


重い空気の中――


通信機が鳴った。


レヴィン

「……!!」


勢いよく顔を上げる。


「アディオだ!!」


ノア

「出ろ!! すぐにだ!!」


タイオン

「頑張って!!」



『レン?』


低く落ち着いた声。


アディオだ。


レヴィン

「アディオ!! 実はパンツが――」


『ああ、それなら一枚間違えて持っていった』



部屋が止まった。


「「「…………」」」



『荷物に混ざってた。さっき気づいた』


淡々と続けるアディオ。



ノアはゆっくり顔を覆った。


「マジで容疑者だった……」



タイオン

「冗談じゃなくなっちゃったね……」



レヴィンだけが安心したように頷く。


「やっぱり俺無くしてなかった!!」


ノア

「一枚だけな!!!」


ツッコミが炸裂する。


通信の向こうでアディオはさらに続ける。


『この1枚は俺が履くから、新しいパンツを送る。今日届くだろう』


レヴィン

「サンキューアディオ!」


素直に礼を言う。



数秒後。


ノアが固まる。



ノア

「いや……なんで古い方お前が履くんだよ??」



その声は届かないまま、通信は切れた。


沈黙。


増えたライトだけが、やけに明るい。


「……」


「……仲良しなんだね」


タイオンがぽつりと呟いた。


「違ぇだろ絶対!!」


ノアが即座に叫ぶ。


一方レヴィンは、どこか安心した顔で頷いていた。


レヴィン

「アディオ優しいんだよなー!!」


「そこじゃねえ!!」


しばらくして、部屋の扉がノックされた。


届いた荷物を開けた瞬間――


レヴィンの目が輝く。


黒い無地のパンツ、五枚セットだ!!!


レヴィン

「買いに行かなくても6枚に戻った!!」


大喜びで箱を掲げる。


ノアは呆れた顔をする。


「5枚タダで新品ゲットしやがった……」


タイオンは箱を覗き込みながら呟く。


「聖騎士って白い下着の人多いけどね……」


ノアは腕を組む。


「俺はグレーだな」


レヴィンは即答する。


「俺はずっと黒一択!!」


「だから見失うんだよ!!」


ノアのツッコミが響く。


レヴィンは誇らしげに胸を張る。


「暗黒騎士だし!!」


「普通そこ寄せねえんだよ……」


ノアは疲れた顔で呟いた。


レヴィンは嬉しそうにパンツを畳み直し、収納へ戻していく。


綺麗に埋まっていく棚を見て――


どこか満足そうに息をついた。


レヴィン

「これで安心して眠れるーー!!」


タイオンは優しく微笑む。


「良かったね」


ノア

「お前の平和ちっせえな……」


増えすぎたライトに照らされながら――


残り2枚の行方だけが、静かに闇の中へと消えたまま。


ふとした沈黙のあと、タイオンが小さく首を傾げた。


「……そういえば」


ノアが振り向く。


「どうした」


タイオンはタンスを見た。


「奥はまだ見てないよね」


レヴィン

「え?」


ノア

「いやそれ絶対ないだろ」


レヴィンは恐る恐るタンスの奥を除き見た...。



「……」


「……あった」


奥に、ぺらりと挟まれた黒い無地のパンツが2枚。


しわしわになっていた。


レヴィン

「ここかああああああ!!」


ノア

「なんでそんな奥に行くんだよ!!」


タイオンは静かに頷いた。


「洗濯物あるあるだね……」


レヴィンは2枚を丁寧に取り出し、誇らしげに並べる。


タイオンはやさしく微笑む。


「解決してよかったね」


ノア

「お前の事件、全部生活力の問題じゃねえか……」


増えすぎたライトに照らされながら――


こうして『パンツ紛失事件』は、完全に幕を閉じた。


——ただし、レヴィンの生活力は何も解決していない。

レヴィンは暗黒騎士とのことを一晩中考えて眠れない夜を過ごしましたが、朝起きて洗濯しようとしたら昨日まであったはずのパンツがなかった模様です。


レヴィン「昨晩履き替えたパンツまでいない!!!なんで….!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ