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明るさの裏側 ①

レヴィンは、本物の暗黒騎士ゼロに敗北した事実と、

その一連の出来事が迷宮の主の仕業であったことを、

王と団長へ正式に報告していた……。


王と団長は顔を見合わせ、渋い表情を浮かべた。


王様「やれやれ……レヴィンは引きが強いのう。寿命が縮まったわい……」


ふう、と足を伸ばす王様....。


王様「だが、よく無事に帰って来たな……レヴィンよ……」


レヴィン「王様……」


団長「ゼロと言えば、中央大陸最強の剣士ですからね……」


レヴィン「……へえ……」


王様「今日はゆっくり訓練でもするがいい。メンタルルームも開けておくぞい」


レヴィン「……ありがとうございます」


レヴィンは一礼し、「失礼します」と言って部屋を下がった。


王様「ふむ……あいつが真面目だと、変な感じじゃのう……」


団長「何か……思い込んでいなければいいのですがね……」


王様「まあ……ハリスがおる。大丈夫じゃろ……」



レヴィンは素振りを終え、芝生に腰を下ろし、風に身を任せていた。

周囲では、聖騎士たちが剣を打ち合わせる乾いた音が響いている。


レヴィン(……強かったな。ゼロ……)


――その静けさを、記憶が引き裂く。


ラビ『レヴィンはあ……

尊敬してたリュウくんを、自分の手で殺して……

それで“英雄”になって……』


(――)


ラビ『でも、ラビの迷宮で……

多くの命を救えなかったからあ……』


ラビ『英雄は、あっという間に

悪者になっちゃったんだよねえ……』


ラビ『……でもお……

真実でしょ?』


レヴィンは、無意識に拳を強く握りしめていた。


――真実なんだ。

全部、どうしようもない真実……。


その時だった。


気づけば隣に二人がいた。

タイオンとノアは自然と腰を下ろしていた。


レヴィン

「……お前ら、怪我なかったか!? 大丈夫だったか!?」


開口一番にそう言ったレヴィンに、二人は目を丸くする。

昨日パンツで騒いでたやつとは思えない真剣な顔で言うもんだから、少し驚いてしまった。


ノア

「むしろお前だけボロボロだったじゃねーかよ」


そう言って、人差し指でレヴィンの額をツンっと突いた。


レヴィン

「いや……だってさ……二人に何かあったら、俺……」


言葉が途切れ、手がわずかに震える。

もし、あの時二人まで巻き込まれていたら――

そう思うだけで、胸の奥が重く沈んだ。


タイオン

「大丈夫だよーむしろノアは“ぽーっ”てしてたし!」


ノア

「違う!!タイオンだろ!?」


2人はそう言い合いふっと力を抜く。


ノア「ま...ラーメン...食いに行こうぜ」

タイオン 「行こー」


レヴィン「へ……?」


ノア「悩んだ時にはお前、腹いっぱい食いそうだからな……」


レヴィンはぱあっと顔を明るくして、

「いっぱい食うー」と大きく頷いた。


タイオン「いこいこー! 混んじゃうよー!」



三人は《聖騎士ラーメン》なるものを注文した。


レヴィン「何だよ、聖騎士ラーメンって!!」


店主「そりゃあ、聖騎士の体を労わったラーメンだろ」


ノア「……ふつーのラーメンじゃねーか」


タイオン「あはは!美味しそうじゃん!安いし!」


レヴィン「安くて!多くて!美味い!!

サイコーじゃん!!」


ワハハッ、と笑い声が弾み、店内は一気に明るくなる。



タイオンとノアは、レヴィンの食欲に目を丸くする。


レヴィン「オカワリ!!」

店主「おう」


ノア「三杯目だぞ……午後から動けんのか?」


レヴィン「へーきへーき!俺、一日五食だから」


ノア「どういう計算だよ」


タイオンは餃子も頼み、三人でシェアする。


「はい」


そう言って、餃子を一つ、レヴィンの口元に運ぶ。

レヴィンは反射的にそれを受け取って、もぐっと噛んだ。


レヴィン「んま」


タイオン「なんかさ、レヴィンって食べ物あげたくなるんだよね(笑)」


ノア「……わかる」


店主も無言で頷いていた。


レヴィンはもぐもぐと幸せそうに頬を動かしている。


「美味かったあああ」


三人が席を立とうとした時―

店主「ほら、割引券だ。次、使いな」


そう言って、

**『聖騎士ラーメン一杯無料券』**を三枚、三人に手渡した。


レヴィン「やった」


ノア「また聖騎士ラーメンかよ」


タイオン「いいじゃん。俺らが別のやつ食べたくなったら、レヴィンに食べてもらえばさ(笑)」


ノア「それもそーだな」


レヴィンは、何も疑わずにニコニコと満足そうな顔をしていた。


「ほらよ」


店主は手慣れた様子で、レヴィンに何かを差し出す。


ノア「なんだそりゃ?」


レヴィン「お菓子」


タイオン「……レヴィンって、どこ行っても誰かにお菓子もらってるよね……」



ーー三人は並んで歩き、城へ戻る。

昼下がりの風は穏やかで、さっきまでの緊張が嘘のようだった。


ノアとタイオンの隣で、同じ速さで歩いて、

同じラーメンを食べて、同じ年で――

それだけで、十分だと思っていた。


午後練に入って間もなく、レヴィンの呼び出しがかかった。


「レヴィン=アレクスさん……メンタルルームにお越しください」


「あ……呼ばれちまった」


ノア「お前、そんな苗字だったんだな」

タイオン「なんか急にちゃんとした人感ある」


レヴィン「やめろよ」


そう言って軽く笑うが、声はほんの少しだけ硬い。


タイオン「気を付けろよー」

ノア「無理すんなよ、レン」


レヴィン「おー!!」


いつも通りの返事をして、たたっと小走りでその場を離れるレヴィン。

だが背中は、さっきまでよりほんのわずかに強張っていた。


――メンタルルーム。


ドアを豪快に開けると、椅子がガタリと慄いた。


医師「……メンタルルームに来るやつで、そんな元気いっぱいに開ける奴いねえわ」


レヴィン「あれ? 普通に開けたつもりだったんですけど」


医師「自覚ないのが一番厄介だな」

ため息混じりに言いながら、医師はカルテを閉じる。


医師「まあいい。座れ」

レヴィン「はーい」


軽い返事とは裏腹に、

レヴィンは椅子に腰を下ろした瞬間、ふっと力を抜いた。


さっきまで張りついていた“平気な顔”が、

この部屋では自然と剥がれていく。


医師「どうする……?ハリスと二人の方がいいだろ。俺もいてほしいか?」


レヴィン「ハリスだけでいいっす」


医師「あ、そう」

(こいつといい、アディオといい……医者をなんだと思ってるんだ……)


医師は肩をすくめて席を立ち、

代わるようにして、ハリスが部屋に入ってくる。


ハリスは席に着くなり、どこか悲しそうな表情を浮かべた。


ハリス「……大丈夫だよ」


レヴィン「……」


その一言で、張り詰めていたものが切れたように、

レヴィンの肩から力が抜ける。


一気に、しおらしくなった。


ハリス「……話しても、話さなくても。

もう全部見えてるけど……ね」


「……」レヴィンは視線を落とす。


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