正体バレバレな女剣士、なぜか聖騎士志願する③
距離、数歩。
ルナは竹刀を握る手に力を込める。
目の前に立つレヴィン――その眼光は鋭く、まっすぐルナを射抜いた。
その視線に、ルナの胸は高鳴る!!
ルナ(うわあああ……顔、半年ぶりくらい!? 嬉しすぎるううう……!)
拳がプルプルと震える。
ざわ……
その高揚は、思わぬ方向へ聖騎士たちに伝わった。
なんて気迫だ……!!
当の本人は気づくはずもなく、強者を相手に構えを崩さず、口元には弧を描く微笑が浮かんでいた。
思わず、ルナの口元も緩む。
最初に動いたのは、ルナだった。
踏み込みは浅く、速度も抑えめ。
だが――
カンッ!!
竹刀が触れ合った瞬間、
乾いた音が一段、高く響いた。
「……っ」
レヴィンの眉が、わずかに動く。
(今の……)
力じゃない。
速さでもない。
――“間”が、妙に正確だった。
もう一度。
レヴィンが打ち込む。
ルナは半歩だけずらして、受け流す。
カン、カン……!!
「お……?」
「なんだ、あの子……」
観戦していたベテラン勢が、ざわりと声を落とす。
「派手さはねえのに……」
「無駄が、一切ないぞ」
ルナは息を整えながら動いていた。
ルナ(落ち着け……相手はレンだから……油断は許されない)
――懐に、入れる。
一瞬の隙。
ルナは踏み込んだ。
スッ――
竹刀が、レヴィンの胴の前をかすめる。
「……!」
レヴィンは即座に距離を取った。
「……今の」
「狙ってた?」
ルナ「…まあ」
短く、正直に。
レヴィンはじっとルナを見る。
視線が、鋭くなる。
レヴィン
(この動き……)
胸の奥が、わずかにざわついた。
レヴィンが口を開いた瞬間、向こうの口も開いた。
ルナ「あの…!」
レヴィン「え…?」
ルナ「ど…どうだと思う!? この装備…」
思いがけない質問に、レヴィンはキョトンと目を丸くして瞬きをする。
ルナは普段こういう服装はしない。
友人と選びに選んで挑んだ今日――女子としては、気になるところだ。
レヴィン「え…ああ…装備か…ええっと…?」
(俺、女の子の装備の善し悪しなんか分かんねえな…)
事情を知っているアーサーは、ごほんごほんとやけに咳払いをして見せる。
アーサー(褒めるんじゃ…レヴィン!! ミニスカートとやらを…)
アーサーの目線に気づいたレヴィンは、女剣士のスカートに目が行く。
すると、レヴィンは納得したようないい笑顔を見せた!!!
レヴィン「ええっと…短い!!」
だああーーっと崩れる聖騎士たち!!
ノア「丈の話じゃねえよ!?」
思わずツッコミが出てしまうノア。
レヴィン「え…!? 違うの…?」
ルナ「そう!! 短いのチョイスしたの!!」
やや前のめり気味に反応するルナ!!
ノア「合ってんのかよ!?」
これにはもう、突っ込んだ方が恥ずかしくなる!!
ルナ「短いの、普段履かないから…ちょっと勇気がいりまして…」
レヴィン「……そうなの??」
ルナ「うん……」
おい!そこだ!!
褒めろ…と、聖騎士たちは思わず心の声が揃った。
レヴィン「ふーん……動きやすそうだな」
聖騎士たちは心の中で――おいおい、もう少し食いついてやれよ――と思った。
だが、セレナはほっと胸を撫で下ろす。
ルナ「まあね…? これはこれで動きやすいかな…?」
何故か笑顔になるルナ。
アーサー(??? なんで嬉しそうなんじゃ…? 女心とはよくわからんのう…??)
ルナ(やっぱりそういうミニスカヒラヒラより、普段の自分で挑めば良かったかなあ…)
レヴィン「あのさあ…人違いだったらごめんだけど……」
アーサー(いくらなんでもここまで会話してて声とかでルナだとバレたかのう...!?)
「……もしかして...スラムにいたリュウさんの装備着てた子...?」
レヴィンの問いに、ルナは一瞬目を開く。
ルナは、ぷいっと顔を背けたまま、
わざと素っ気なく言い切った。
「違う……人違い」
「いや、女剣士違いだよ……」
言い終わると同時に、
ほんの少しだけ顎を上げる。
アーサーは、その様子をじっと眺めていた。
レヴィンはというと――
「そっかー!!」
あっさり。
「なんか、動きが似てる気がしたんだけどなあー」
そう言って、
後ろ頭をぽりっと掻く。
屈託のない笑顔。
まるで、深読みという概念が存在しない男。
「うんうん」
「そうそう」
ルナは必要以上に頷く。
レヴィンは再び、竹刀を構え直す。
「まあ、いいや」
「続けよう」
ルナの背筋が、ぴんと伸びる。
アーサーが低く咳払いをした。
「おしゃべりタイムは終わり…続行じゃ」
アーサー(……隠す気なら)
(最後まで、付き合ってやろうかの……)
ルナは、ゆっくりと息を吐き、竹刀を握り直す。
つま先に体重を乗せ、視線だけをレヴィンに向ける。
レヴィンもまた構えを取り直すが――
先ほどとは少し違う。
表情は柔らかいまま。
しかし、目だけが研ぎ澄まされている。
(……やっぱり)
(さっきより、空気が違う)
次の瞬間、レヴィンが踏み込んだ。
速い。
直線的。
ルナは、ほんの半拍遅らせて動く。
カンッ!!
受け流し。
すぐさま体を捻る。
(ここ……!)
一瞬、レヴィンの脇が空いた。
――だが。
「っ、甘い!」
レヴィンは無理に打ち込まず、
体勢を崩さないまま距離を取った。
ルナの竹刀は、空を切る。
(……今の判断)
(前のレンより、ずっと上手い)
観戦していたベテラン勢が息を呑む。
「互角……いや……」
「読み合いになってきたぞ」
セレナは、思わず胸元で手を組んだ。
セレナ(……すごい)
(あんなに真剣な顔……素敵…)
レヴィンは一度息を整え、ふっと笑う。
首を傾げる。
「うーん…」
少し考える素振り。
そして――唐突に、にこっと笑った。
「じゃあさ」
「次、全力で来ていいよ」
「遠慮しないで」
ルナ(……っ)
わずかに唇を噛む。
(……全力で、って)
(それ、簡単に言わないでよ……)
胸の奥が、じり、と熱を帯びる。
目の前のレヴィンは、柔らかな笑みを浮かべつつ――
立ち姿は完全に“迎え撃つ剣士”。
逃げ道はない。
ルナはふっと息を吐く。
「……後悔、しないでよ」
小さく、低く。
今までより、ほんの少しだけ“素”に近い声。
その一瞬、アーサーの眉が、ぴくりと動いた。
次の瞬間――
ルナが、消えた。
「……!?」
レヴィンの視界から、一瞬だけルナの姿が抜け落ちる。
踏み込み。
体重移動。
角度。
すべてが、噛み合いすぎている。
カァンッ!!
強烈な衝撃。
腕に、びりっと痺れが走る。
「……っ!」
今までとは、明らかに違う。
力。
速度。
そして――“覚悟”。
ルナは、もう隠していなかった。
自分の全てを込めた打ち込み。
レヴィンは、それを――真正面から受ける――!!
今回のルナの志願回をお読みくださって、ありがとうございます!
ルナの恋心の揺れ、いかがでしたでしょうか?
ミニスカヒラヒラを褒められちゃうと、もっと背伸びしなきゃ……と焦ってしまうルナ。
でも、あんまりミニスカ自体に関心のないレヴィンにちょっとほっとして、自然体でいられたのでした( ´͈ ᵕ `͈ )♡




