正体バレバレな女剣士、なぜか聖騎士志願する②
周囲の視線が一斉に彼女に注がれる。
タイオンは「ひ、ひぇ…」と固まったまま、ただ呆然。
アーサー「うむ…さすがルナじゃな…」
ルナ「ちょいちょい…アーサーさん!! レンに会うまでは内緒で!!」
アーサー「タイオンじゃちと無理があるかのう…誰か、三つ編みの相手を…」
若手たちは一斉に首を横に振った!!
必死すぎる…!!
ノア「つーか…こんなん、レンしか相手できねえだろ…」
タイオン「だね…」
「でしょっ!! そうだよね!! うんうん」
ルナは思わず、ノアの一言を称えるべく手を握った!!
ノア「いっ…てえええええ!!」
思わず握られたルナの握力に、ノアの手は真っ赤に染まる。
ルナは期待を込めてアーサーを見つめる。
アーサー「む…?ま…まあそうじゃのう…メンタルケアも終わった頃じゃが、レヴィンはどこじゃ…?てっきりニコニコしながら見ておると思ったのじゃが」
ルナ「いいえ…いませんよ!! さっきから探してましたから」
タイオン「よ…余裕がありますね…」
あんな中でも、レンを探していたのかあ…。
アーサー「メンタルルームに誰か、伝えに行ってくれ」
ルナ(お昼寝でもしちゃってるのかな…?んふふ)
ワクワクしながら、レヴィンが現れるのを待つ。
若手「…あ…いや、なんかさっき、女の子から呼び出されてましたよ。あいつ」
ノア「な、なにいいいいい!?」
アーサー「なんじゃと!! 羨ましいぞい!!」
ルナはショックのあまり、固まった。
女の子…誰…!?!?
「いたいた」
その時、レヴィンの声が聞こえ、タイオンが声をかけ、呼びに行ってくれた。
ルナ(ついに会える…いつぶりだろう…もう半年以上になるかな。
あ…でも、あの時ちょっとだけ会ったか…)
回廊の奥から、足音が聞こえ始める。
カツ……
カツ……
軽く、規則正しい音。
同時に、空気がふっと変わる。
そこには――
久々に見るレヴィンの姿があった。
背筋を伸ばして歩く姿。
鎧の着こなしも、立ち居振る舞いも、以前より洗練されている。
ルナ(ま……まぶしい……)
胸の奥が、ぎゅっと掴まれる。
思わず、ぶんぶんと首を振る。
ルナ(落ち着け私!! 今日は再会に来たんじゃない!! 試験に来たんだから!!)
だが――
その少し後ろ。
控えめに、遠慮がちに。
小走りで追ってきた女性が、きょろきょろと周囲を見回しながら口を開いた。
「……あの……私も、ご一緒して大丈夫でしょうか……?」
柔らかく、上品な声。
お嬢様って感じで、服も上品、髪もきちんとまとめられていて……とても女の子らしい。
……女子力。
ルナは、その場に呆然と立ち尽くす。
一瞬、言葉を失う。
ルナ(か……かわいいい……!!!)
可愛い。疑いようもなく、可愛い。
ルナ(可愛いいいい!!)
男性陣「可愛いなあああ!!」
むさ苦しいおじさんたちが、ドッとレヴィンに押し寄せる。
セレナは思わず、レヴィンの後ろに隠れる。
ルナ(か弱いっ……!!! 私、あんなことする必要ないし、やったこともない……)
アーサー「お主の彼女か?」
レヴィン「いや、友達です」
あまりにも即答だった。
一切の迷いも、照れもなく。
それ以上でも、それ以下でもない声音。
――その瞬間。
空気が、目に見えて変わった。
セレナはぴたりと動きを止める。
ほんの一瞬、笑顔のまま瞬きだけが遅れる。
……固まった、という表現が一番近かった。
「い…いやいや友達って言ってもよぉ? 一緒に出かけたり、プレゼントもらったり……彼女目前じゃねえか…」
と謎のフォローを送るベテラン聖騎士。
ルナ(出かけてる……!!! デート!?)
レヴィン「セレナ、ちょっと待っててくれ、あの辺に座ってて」
「…ええ」
素直に頷き、セレナは指示された席へ向かう。
そのやり取りは、あまりにも自然で――どことなく親密さを感じさせた。
「……?」
「今の、なんか普通に恋人同士っぽくなかったか?」
聖騎士たちが、小声でひそひそと囁き合う。
「なんだよ、照れてただけか」
「レヴィンもやるなぁ……」
レヴィンは、ふと視線を巡らせる。
「……で」
「“すごい女剣士が来てる”って聞いたんだが……」
その視線が、まっすぐに――
「……あの子か?」
ルナを射抜いた。
「……っ」
胸が、どくんと跳ねる。
「若手じゃ、相手にならなくてのう」
アーサーは意味ありげな表情でニヤッと笑う。
「へえ……それは、楽しみだなあ……」
レヴィンはそう言って、タイオンから竹刀を受け取った。
軽く肩で振り、感触を確かめる。
そして――
まっすぐに、ルナの前へ立つ。
向かい合った瞬間、ルナの心臓が思い切り跳ねた。
無意識に背筋を伸ばし、慌てて一礼する。
「……よろしく……」
声が、ほんの少しだけ震えた。
「よろしく!!」
返ってきたのは、あまりにも屈託のない、満面の笑顔。
――何も変わっていないレンの笑顔……。
ルナ(く……っ!!! 可愛い!!)
視線を逸らそうとしても、逸らせない。
レヴィンは、こちらをじっと見ていた。
「……緊張してる? いいよ、気楽に打ってきて」
ルナ「……違う意味で緊張してる」
レヴィン「違う意味? なんの意味?」
ルナ「お……お気になさらず…!」
そう言って、竹刀を構える。
レヴィンも即座に竹刀を構え、その表情も一気に変わる。
ドクン…!!!
ルナの心臓が、また一段と強く鳴った。
剣士だなあ……やっぱり。
その顔に、剣士だった亡き父の面影が重なる。
ルナはバイザーの下で、思わず目を細めた。
胸がぎゅっとなるのを感じながらも、声には出さず、ただ静かに――噛み締めていた。
アーサー「――では!!」
「始め!!」




