怒りと可愛い俺
短くなりました。すみません。
俺達はギルドで飯を食べたあとすぐに、近場の洋服売り場に向かった。そして中に入ると皆は、俺に試着室前の椅子に座らせた。
ベル「ここで待っててくださいね!」
誠「え?いや…」
千夏「じゃあ私達は洋服選んできますね!」
誠「ちょっと…ああ…行っちゃった…。」
一人取り残された俺は、不安を抱えながらも皆を待つことにした。暫く待っていると、皆が可愛い洋服を持って戻ってきた。…俺が着なきゃいけないのか…。
アルス「それで…誰から始めますか?」
誠「マジで着なきゃいけないの…?」
アイラ「当たり前じゃん。」
誠「当たり前なんだ…。」
剣聖「で、どうするの?誰からやる?」
セナ「誠に決めてもらえばいい…。」
剣聖「ああ、確かにそうだね。」
誠「え…?いや俺は着たくな…」
剣聖「誰からがいいの?」
誠「…名前順でいいと思います…。」
順番を無理矢理決めさせられた俺は、アイラから順に皆の服を着させられた。フリフリの可愛いのから清楚なもの、露出の多いものまで多種多様な服を。
誠「はあ…やっと終わった…。」
ベル「気に入ったのありました?」
誠「ないに決まってるだろ…。」
千夏「そんな…よく似合ってたのに…。」
誠「いや、別に買わないとは言ってないぞ。」
剣聖「じゃあ気に入ったんじゃん。」
誠「それは断じて違う!…ただこうも体が女っぽいと男の服着てる方がおかしいだろ?」
アルス「…体って主に胸のことですか?」
誠「え?うん…?」
ベル「じゃあ胸のない人は女じゃないってことですか。」
言われた途端に背筋が凍った。俺はまたしても貧乳組みを怒らせてしまったのだ。そして俺は今日一日だけで、十二台ものトラックにハネられた。
店員「ありがとうございましたー。」
誠「…どうも…。」
俺は腫れた頬と大量の服を抱えて、剣聖と千夏と共に店の外に出た。外にはまだ怖い顔をする貧乳組みが待っていた。
誠「あの…もう許してくださいよ…。」
アルス「許す訳ないです!」
アイラ「貧乳をバカにしやがって…。」
誠「バカになんてしてないんだけどな…。」
ベル「じゃあ貧乳の女が好きなんですか?」
誠「え…?あ、ああ…うん…。」
セナ「うわ…。」
誠「…なんて答えたら良かったんだよ…。」
俺は理不尽な質問にため息混じりに文句を言ったあと、助けを求めるように剣聖と千夏の方を見つめた。が、目をそらされてしまった。
誠「はあ…。なあ皆…そう怒るなって…。」
アイラ「怒るに決まってるだろ。」
誠「…そんなに気にしてるのか?」
セナ「じゃあ誠は自分のち○こが小さいって言われて嬉しいの…?」
誠「そりゃ嫌だけど、女の子がそういうこと言うのやめようか。」
セナの荒ぶりを止めたあと、俺は怒る貧乳組みを説得して(説得しきれたとは言ってない)ギルドで飯を食べてから家に帰った。が、貧乳組みはまだ怒っているのか部屋にこもってしまった。
誠「あー頬痛い…。」
千夏「大丈夫ですか…?」
剣聖「凄い腫れてるじゃん…。」
二人はソファーに座る俺の両端に座り、俺の頬に手を触れた。突然優しくなる二人に驚き、俺は肩を狭くした。
誠「…俺が悪いのかな…?」
千夏「うーん…どうでしょうね?」
剣聖「悪くないとは言い切れないかな。」
誠「別に俺は貧乳が嫌いって訳じゃないんだけどな…。」
剣聖「でも大きいのも好きなんでしょ?」
誠「うん…まあ。」
千夏「やめませんかこの話…?」
誠「あ…はい。」
千夏に話を止められた俺はソファーから立ち上がり、風呂に入った。そして風呂から上がり服を着ようとしたとき、
誠「…マジか…。」
そこにはいつもの服ではなく、今日買った可愛い服が置かれていた。俺は数秒間悩んだ末に、覚悟を決めて着ることにした。
誠「……。」
俺は鏡に写る自分の姿を見ていた。可愛らしい服が似合ってしまっている俺は、あまりにも気持ち悪かった。気持ち悪すぎて危うく鏡を叩き割るところだった。




