ビンタと苦労
俺達はギルドに着いたあと、いつも通り近くの席に座り飯を食べていた。するとリディが少し呆れた顔で俺を見てきた。
誠「…なに?」
リディ「…結局なんでビンタされたんですか?」
誠「ん?あー…。」
俺は少し考え込むように目を閉じたあと、顎に手を当ててリディの胸を凝視した。ふむ…それなりにデカいですね…。
リディ「…!?どこ見てるんですかっ!?」
俺の目線に気づいたリディは慌てて身を引き、胸を両腕で覆った。そして遠慮なく俺を睨み付けてくる。
リディ「そんなんだからビンタされるんですよ…!」
誠「それは違うぞリディくん…。一応言っておくが君だってビンタの射程内なんだからな…?」
リディ「…え?私もなんですか…?」
誠「そうだぞ…だから言動一つ一つに気を付けた方がいい…。」
リディ「…わかりました…。因みにビンタってどのくらい痛いんですか…?」
誠「ふむ…そうだな…例えるならばトラックにハネられたくらいの…」
アイラ「聞こえてるからな。」
俺は背後に迫る影に身を震わせ、冷や汗をかきながら振り返った。そこには眉間にシワを寄せる貧乳組みが立っていた。
誠「トラックが四台…」
俺の言葉はそこで途切れ、代わりに軽快な炸裂音がギルドに響き渡った。俺は地面に倒れ、目に涙を浮かべた。
剣聖「…大丈夫?」
誠「…大丈夫…。」
千夏「頬凄い腫れてますよ…?」
誠「…知ってる…。」
俺は痛む頬を押さえながら立ち上がり、貧乳組みに謝罪をした。しかしまだ皆は怒っているらしく、返事をしてくれなかった。
誠「あの…。」
アルス「ふんっ!」
ベル「…貧乳を否定するからこうなるんですよ。」
誠「いや別に否定してる訳では…」
セナ「大きいくせに…。」
誠「いやだから…」
俺はそう言いながらこう思っていた。…あれ?もしかして胸が小さい人って心の器も小さいの…?と。
誠「はあ…随分嫌われたな…。」
千夏「まあまあ…時間が経てば許してくれますよ。」
誠「そんなもんかな…?」
千夏「そんなもんですよ。」
誠「はあ…。」
剣聖「…落ち込みすぎじゃない?」
誠「女の子に嫌われたんだぞ…?そんなすぐ立ち直れる訳ないよ…。」
リディ「…ほんと女の子好きですね…。」
誠「当たり前だ!女の子には男にないものがたくさん詰まってるからな!」
リディ「例えば…?」
誠「胸。」
剣聖「誠にもあるけどな。」
誠「はあ…君は自分の胸を自分で揉むのかい?」
剣聖「いや、そんなことしないけどさ…。」
誠「いいか!?胸っていうのは人のを揉むから楽しいんだよ!オッケー!?」
剣聖「お、オッケー…。」
誠「全く…。」
俺は不満な表情のままリディに金を渡し会計を済ませ、皆の方を振り返った。そして一呼吸おいてから、
誠「…さて、帰るか。」
ベル「はい?」
誠「…え?なに?」
セナ「まだ帰らない…。」
誠「いやでも今日はやることな…」
アルス「洋服買いに行くって約束したじゃないですか!」
誠「いや約束なんてしてな…」
アイラ「ほら行くぞ!」
俺は皆に腕を引かれ、背中を押されてギルドを出た。そして晴天に目を向け再び涙を流した。くそっ…流しきれなかったか…。
リディ「…誠さんって結構苦労してるんですね…。」
千夏「ですね…。」
リディ「助けてあげないんですか…?」
剣聖「まあ…面白そうだし?」
リディ「…そうですか…。」
千夏「じゃあ私達もそろそろ行きますね。」
リディ「あ、はい…。」
剣聖「じゃあねー。」
千夏と剣聖はギルドの扉の前でリディに手を振りながら、別れを告げて先を歩く俺達に着いて来た。
リディ「…誠さん…苦労してるなあ…。」




