=第五章=
大変お待たせして申し訳ないです。
今後は、一週間に一回更新になるかもしれません。
なるべく早く更新できるように頑張ります!
「「「……」」」
翌日、装備を整え王の間に集まった三人を待っていたのは、王と完全武装した騎士団、そして立っているのもやっとのような死に体のヴァースだった。
「……昨日の叫びの結果がこれか」とため息まじりのテーラ。
「……なんか、彼、一晩でだいぶやつれてない?」と若干心配そうなサバウドーラ。
「……けっ、いいざまだ」と悪態をつくロベルフ。
三者三様の対応をしながら、みなが先にいたヴァースの横に並ぶ。
それを見てファロルド王が声をかける。
「さて、話をする前に、悪いがサバウドーラ。ヴァースに回復をかけてやってくれ」
「え? でも彼自分でできるのでは?」
「あ~……ちょっとやり過ぎちまってな。魔法力をギリギリまで使わせちまったというか……」
「……それは王が悪いのか、それともこいつの魔法力がないのか……」
「おいおいテーラ、俺は悪くねえぞ? やり過ぎたのもちょっとだ、”ちょっと”。それに、あのじいさんの修行が終わったとも聞いてるから、魔法力がないわけではないだろうから……やっぱ、不安定で使い過ぎちまうんだろう」
「……傷はほとんどないし、回復ってやっぱり魔法力の方ですね。マジックポーションをとってきます」
「ああ、すまないな」
しばらくしてサバウドーラが濃緑の液体の入った小瓶を持ってやってくる。
「ほら、これ」
「……」
だが、ヴァースは差し出された小瓶を受け取ろうとしない。というか、顔すらサバウドーラに向けない。
「ちょっと! 起きなさい!」
「……ふぁっ!? あ、ごめんさない!」
どうやらほんの数分の間に立ったまま寝てしまっていたようだった。
「ほら、早くこれ飲んで」
「……なんです、このまずそうな液体は?」
「いいから、さっさと飲む!」
サバウドーラの勢いに負け、渡された小瓶を開ける。と、見た目とは裏腹にハーブの香りの効いたさわやかな匂いがヴァースの鼻を刺激する。
匂いは良いが、味はどうか。おそるおそる口をつけると……
「ぶえ、まずぃ……」
「仕方ないでしょ、これでもハーブで匂いはごまかしてるんだから、味は我慢しなさい。それより、さっさと飲んで!」
「はい……」
ヴァースは意を決して勢いよく濃緑の液体を煽る。
味はひどいがさらっとしており、すぐに飲み込めた。ハーブのおかげで、後味もなんとなくさわやかに感じないこともない。
「……お? お、おお!?」
飲み込んですぐ、食道を通って胃に到達したかと思ったら、染み出すようにしてお腹の中から力が広がっていくような不思議な感覚があった。が、すぐに収まる。
「お~……」
「どう?」
「うん、ちょっとは回復したと思う。ありがとう」
「ちょっと!? 私が渡したのはBランクのハイ・マジックポーションよ!? それでちょっとしか回復しないなんて……」
「え、そ、そんな良いもの(?)をくれたの? あの、なんか、ごめんなさい……」
「……はあ。在庫がそれしかなかったとはいえ、せっかくの……。ていうか、あなた魔法力どれだけあるの?」
「え、わかりません……」
サバウドーラに責められるように言われ、思わずしゅんとするヴァース。
「……王様、ホントに彼で大丈夫ですか?」
その姿にさらに詰問する気も失せて呆れたサバウドーラがファロルド王に尋ねる。口には出さないが、他の二人も同じ気持ちだった。
そのことを察した王は、それでもなお意見を変えず、毅然として言い放った。
「方針を変えるつもりはない。剣術も最低限必要なことは教えこんだし、あくまでサポートが目的だからな。問題ない」
頑として意見を変えそうにない王に、三人ともがこれ以上は言っても無駄だと悟る。
「それに……回復しないのは、”呪い”が関係しているせいかもしれんからな」
「え?」
それに反応したのはヴァースだった。
「どういう、ことですか?」
「……その様子だと、あいつはお前に伝えなかったようだな。ま、無理もないか」
ファロルド王は少し悩むそぶりを見せるも、”呪い”という言葉を出した時点で伝えようと決めていた。王は言葉を選びながら、慎重に口を開く。
「……ヴァース。お前が魔法をうまく使えないのは、間違いなく”呪い”のせいだ」
「……呪い?」
「そうだ。その呪いのせいで……おそらく、特に攻撃魔法に関して強い”呪い”がかかっているんだろう。あいつの――お前のじいさんの話では、最初は魔法力すら感知できないぐらい強く縛られていたらしい。むろん、あいつも手は尽くしたんだろう。そのおかげか、お前は魔法が使えるようになったと聞いた。だが、完全に呪縛から解放するには至らなかったんだろう」
「……じいちゃん」
亡くなる直前の祖父の”心残り”――それはこのことだったのかと、ヴァースは理解した。
「……どうして、じいちゃんは俺に言ってくれなかったんだろう」
「……さあな。かわいい孫となったお前に情がわいて言えなかったのか、それとも、仮にも偉大な――いや、お前を育て始めてからのあいつは、プライドなんて安っぽいものに固執していなかったな。まあ、強いて言うなら……お前の”夢”を呪いなんかに奪わせたくなかったんじゃないのか?」
「……!!」
その言葉にハッとして、ヴァースは亡くなった祖父に改めて深い優しさと愛情を感じた。
そして、その事情を察した三人もなんとなくヴァースを見る目が優しくなっていた。もっとも、そうは言ってもロベルフは簡単に許そうとは思っていなかったが。
「しんみりさせちまったな。さて、気を取り直して本題だ。これからお前らには改めて【赤鬼】討伐に出向いてもらう。今回はその出発式だ。……俺が撃ち損じた尻拭いみたいな形になって申し訳ないとも思うが、今のお前らなら必ず倒せると俺は信じている。あいつを生かしておくにはいかねえ。そうだろ、ロベルフ」
「はいっ!」
ロベルフの気合の入った返事に、王は満足気にうなずいた。
「よし。だが、恨みや怒り、憎しみに捉われるなよ。ヤツを倒す。だが、それは過去の清算じゃねえ。未来をより平和にするために戦い、そして勝つ! 頼んだぜ、おめえら!」
「「「「はいっ!」」」」
王の激励にヴァース、テーラ、ロベルフ、そしてその場にいる騎士団が声をそろえて答える。
それと同時に、ロベルフを先頭にテーラ、ヴァースも続く。




