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魔法科学の最終定理 ──創世の術式と黒甲冑──  作者: ポポ丸


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第92話◆――だが、合った

 黒甲冑が、隙間からぬるりと車内へ降り立つ。

黒が、垂れるように落ちてくる。まるで水が浸透するみたいにヌメリと。


床に触れた瞬間、

金属のはずの足音が、鈍く沈んだ。

黒甲冑の手に、黒い残滓が集まる。黒が濃くなる。



煉は思い出した。「あれはレックスに浴びせたヘルハンドだ」


(……あれは、触れたら終わる)


煉は即座に視線を走らせた。

――消火器。


迷わず蹴り飛ばす。硬い音を立てて、破裂する。


白い薬剤が、一気に車内へ広がった。

同時に、煉は座席へ滑り込む。

黒い手が振るわれる。


――音が、遅れて来た。


次の瞬間。


座席が、抉り取られた。

煉の頬を、熱が掠める。熱さがじんわりと伝わる。

一瞬でも遅れていれば、身体ごと消えていた。


白い煙が視界を覆う。息を殺す。

それでも、心臓の音が耳まで響く。

(このままじゃ、押し切られる)


そのとき――

前方のドアが開いた。

「煉!」

明里が飛び込んでくる。

視界いっぱいに広がる白煙を見て、一瞬で状況を理解した。


(消火剤……でも――)


視線が、黒甲冑へ移る。「……その声は、明里か。


魔力が、おまえを指した。


だから来た。


――逃げ場はない」


手に集まる黒い残滓。白い粉塵と残滓が揺らいだ。


(魔力に反応してる……なら、流れごと止める)


その瞬間、明里の中で線が繋がった。


「煉、時間稼いで!」


言い捨てて、連結部へ走る。


黒甲冑の腕が、ゆっくりと持ち上がる。


逸れた軌道が、途中でねじ曲がる。


黒い残滓が、収束する。


(もう一発来る――!)





煉は歯を食いしばり、煙の中を踏み込んだ。


剣を振り抜く。


狙いは当てることじゃない。


“邪魔すること”だ。


黒い手が、わずかに逸れる。








連結部分に降りる。車両の外、剥き出しの連結部だ。風の勢いで目が空けられない。風景が激しく移動する。


明里はハンドルに手をかけ、力を込める。重さが伝わる。 ハンドルを回す、この時間が長く感じる。重さに構っていられない。



ガコン、と鈍い音。

――解除された。

だが。




車両は、離れない。思わず拳を握り車両を叩いてしまった。





黒甲冑の腕が、ゆっくりと持ち上がる。






迷ってる暇はない。明里は両手を連結部に当てた。

魔力を流し込む。

――凍結。

白い霜が一気に広がり、

金属が軋む音を立てて凍り付く。

連結部だけではない。

床、レール、車輪。甲高い音を鳴らしながら車輪が吠える。


キキィィーーー


「……ここで止まれ!」


次の瞬間。

――バキッ。

鈍い破断音。


前方の車両だけが、わずかに前へ滑った。

後方車両は、凍りついたまま取り残される。惰性で滑っていく。


分断。


その衝撃で、車内の空気が大きく揺れた。

白い粉塵が、舞い上がる。

その中心で――

逸れたはずの黒い手が、


――もう一度、持ち上がる。



手から黒い残滓が集まり獣を形作る。

牙の輪郭だけが、先に浮かび上がる。


明里は叫んだ。


「煉! 走って!!」



一瞬時が止まった。白い煙幕から煉が飛び出してきた。



身体を受け止め伏せた。




黒い残滓が、弾けた。


――音が消えた。



次の瞬間――

閃光。

轟音。

爆発。

車両ごと、空気が吹き飛んだ。




衝撃が、前方車両まで叩きつける。

明里は床に伏せ、歯を食いしばる。

熱風が、連結部の隙間から吹き抜けた。

やがて。

音が、消える。


「や、やったぞ」


――返事がない。


煙が、動いていない。


いや。


ゆっくりと、“一点に吸い寄せられている”。


その中心で――


黒が、形を取り戻していた。


まだ目の位置すら定まっていない。


――だが、合った。


炎に包まれた後方車両は、

ゆっくりと遠ざかっていく。

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