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偽りのピースキーパー   作者: 新川翔
化け物とヒト
42/50

目指す場所、届かぬ気色

 競技場前では俺と柚季の攻防が激化し始めていた。


 ただ殴られ続ける訳にもいかない俺は、装備で防御、能力で発生させている雷で攻撃するように、役割で分けて戦闘を行っていた。

 しかし形成は劣勢だ。

 もうそろそろ事態を好転させなければ、こちらが潰れる。


 丁度、切り札を切れる時間だ。


 空から観察させていた蜻蛉型のドローンをこちらに呼び寄せる。


「これでお前を潰す」


 親父のドローンを改修して強化、サイズアップさせたものだ。


 能力を強化させるだけでなく、AIで敵の仕草を学習させて俺にその情報を叩きこむ。つまり俺は目に依らない移動予測を行うことが出来るようになる。


 腹は俺の背骨の上に張り付き、足は肋骨のように上体を多いナノマシンでできた翅は俺の上体を包み込んで、頭は帽子のように変形する。


「軍の制服。のようだな。それ、カネヒロさんのか?」


「ああ」


 脳に情報が流れ込んでくる。


 俺の様子を見た彼は、心の底から嬉しそうににやけ始めた。


「フフフ、ハハハ!いいなぁ、目がまるで彼だ」


 無邪気な笑顔で指差して笑っている。


「壊したいなぁ…きっと楽しいだろうなぁ…」


 そして奴は、次の瞬間にはマシンガンをこちらに構えていた。

 やはり銃火器を持ち歩いていたようだ。ただ、もう遅い。その動きには対応できる。

 何発もの銃弾が放たれようとも、今の俺なら動きを予測して受け流したり、避けることが出来る。問題はその後だ。


 今の柚季は早すぎる。

 マシンガンの速度と威力が牽制になるほどだ。


いくら予想しても早すぎるので対応がギリギリだ。ドローンで情報を集め、一気に攻勢に回ることは出来ない。


 楽に勝たせてクイナの支援に向かう余裕は貰えないらしい。だが予測さえできれば、詰み重ねでいくらでも攻勢に回ることが出来る。


 他のことは考えなくていい。


 ゆっくりと着実にこの野郎を追い詰めていこう。


「ククク」


 笑えた。


 笑えてしまった。


 こんな緊迫した状況で笑みがこぼれた。

 自分でも分からないが、俺はこの感覚がたまらなく楽しかった。


 国立競技場前で二人の男がニヤリと笑いながら互いの命を削り合っている。


 ナイフが体を掠って皮膚が裂ける感覚。受けてもいい銃弾を受けて致命傷となる銃弾を避けるスリル。刹那の遅れさえも許されない緊迫感。


 それら全てが混じった果ての高揚感。


 俺はこの戦いを楽しんでいる。殴って蹴って撃っての繰り返しが愉悦になる。


 攻撃は電撃がメインだ。


 拳を振るよりも早く攻撃を与えられる。


 奴の移動する道や次の行動はしっかりと把握している。今までと同じ通り、装備と四肢で守って電撃で攻撃し、時々隙を突くために時々装備で攻撃を行う。


 対して、奴はダイナミックに勢いに任せて動いていた。


 恐らく動きが読まれていることに気づき始めたのだろう。


『動きが読まれるのなら対応できないように動けばいい』という発想で、高められる極限のスピードで俺に攻撃している。


「こんなもんか!まだまだ倒れないぞ俺は!」


「黙れ柚季!骨にヒビ入ってるくせによく言うよ!」


 距離を取って互いに息を切らす。この距離なら、一度ナノマシンの装甲を変形できる。


「思わないか?自分が何者なのか。この世界で傷は残せないのか」


「…何言ってる?」


 適当に返して奴を叩く策を考える。


「私の力は、余り役に立たない。いや卑下ではないんだ。人一人早く動けたところで、今の世界それほど変わらない。今の世界は個人では変えられない」


「当り前だろ。個人で動かせるほどこの世界は軽くない」


「だが、変えてみたいんだ。究極的に誰にも替わりがいるこの世界でそれを示せたら、どれだけ楽しいのか…」


「取り敢えず、お前は潰そう。それでやりたいのが殺戮なんだろ。なら、その願いを粉々にする」


 次の瞬間、奴は俺の懐にナイフを突き立てていた。

 俺はナノマシンにプログラムした自動操作で変形させて、ナイフをしっかりと掴んでいた。


「⁉」


「油断したな」


 ショットガンに変形させていた右手の銃の引き金を引く、すぐにナイフから手を離して距離を取ろうとしたが、流石に俺の方が早い。


 電撃弾の何発かは命中して、飛び退いた先で動きが止まる。


 その瞬間を見逃さずに蹴飛ばして、さらに追撃でショットガンの引き金を引く。

 これで、一つ返した。このまま徐々に


 奴は転がった先ですぐに走り出して俺に殴ろうとする。



 のは、分かっていた。



 それを防御して脇腹を蹴る。


 蹴って蹴って蹴って蹴って、銃剣で腹部を突き刺した。


「グ」


 さらに電流を流して動きを阻害する。互いに動かなくなり、奴の傷口から血が滴り始めている。


 下手に高速で動けば、その傷口から臓物が漏れるだろう。


 このまま電流を流し続ければ俺の勝ちだ。


 すると、彼は思いがけない行動に出た。


 そのまま自ら足を進めることで、銃剣どころか銃身までを腹の中に受け入れていった。


「油断、したな」


 突き刺した銃剣の腕の、俺の左腕に2本目にナイフが付きたてられた。


(クソが、反応が送れた)


 刃物が貫通する前に傷口周辺にあるナノマシンで進行を止める。

 焦った俺はこの男にさらに痛みつけるために、その状態のまま柱に貼り付けにした。


「ガはぁ!」


 さらに、ナノマシンの一部をナイフに変形して奴の左腕み貼り付けにした。

 俺の目の前で血を吐いた奴だが、それでもその目は生気で満ちている。


──何を⁉


 奴は俺の考える予想を易々と上回った。


 俺の肩に刺していたナイフを抜き、流れるように腹に刺したうえで、拘束から強引に抜け出した。


 奴は競技場の敷地を囲っている門を開け、足を引きずりながらどこかへ逃げようとしている。


 最早、能力を使う力も残っていない筈だ。それでも奴は、奴の自身の望みのために、この場から離れようとしている。



 ナノマシンで傷口を覆ってから一刻も早く奴を仕留めきるために走り出した。


 奴は階段から転げ落ちて血を垂らしている。


「随分と…楽しそうだったじゃないか」


 俺に追い付かれた奴は見下ろされながら


「…」


 俺は粛々とナノマシンを飛ばして柚季の首を地面に拘束する。


「おい、拘束ごときで封じられると思うな。逃げるぞ」


「やってみろ、強引に逃げたら首が飛ぶ」


 今回の拘束具は内側に刃物を付けた。強引に外せば拘束されている部位が切断される。


「酷いな。殺しには、躊躇いがないのかな?」


 戸惑いがないわけではない。コイツと同じ場所に居たくないから、殺しはしたくない。

 だがそれ以上に、コイツが逃げて誰かを害するが我慢ならない。



 もし、コイツを殺すか、逃がすかの2択を迫られたら迷わず前者を選ぶだろう。



「やはり君は、あの人の息子だよ」


 ショットガンに奴を気絶させるために十分な電力を貯める。


「ああ、あの景色を──」


 俺は引き金を引いて、奴の意識と願いを完全に砕いた。


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