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偽りのピースキーパー   作者: 新川翔
化け物とヒト
33/50

作戦会議 最終調整

 キャンピングカーに戻ると、内田さんからの通話があった。


『よし、全員来たな』


 この通話の中には第二部隊の全員が参加していた。


『これからのことについて伝えよう』


『柚季派が動き出しているのは全員が知っているところだと思う。しかも鎧の能力者がどこかに潜伏していることも分かっている。我々がすべきことは決まっている。まず一つ目は川凪ヒカリ及びウィローを守ること。二つ目は敵を排除することだ』



『それらの目標を達成するための障害が二人の幹部レベルの実力者と言えよう。柚季派の幹部と鎧の能力者だな。リツト、二人と交戦した君の意見を聞きたい。その二人は、第二部隊で対処できるか?』


 ここで俺は二人の実力者について考え始めた。


 鎧の能力者は、銀を操る能力を持っており、流動性のある攻撃を行う。パワーやスピードも能力者の中では随一だろう。以前戦った植物使いよりも強いはずだ。また、攻撃の通りがあまり良くなかった。耐久力が高すぎるというイメージだ。あの能力者を倒すには、長い時間をかけてじっくりと戦わなければならないだろう。



 次に柚季派の幹部だ。

 能力は恐らく、決めた動作を高速で行う能力だ。動きを実行すれば、動画のように動きを実行できるが、よほどのことがなければ止まることは出来ないようだ。彼自身のパワーは鎧の能力者ほどではないが、スピードに関してはこの装備に慣れた俺でも、捉えることは至難を極めるだろう。俺が単独で彼を倒すためには、こちらも攻撃を食らう前提でカウンターを仕掛ける戦術が一番だろう。勿論、あの植物使いより強い。


 というより、あの植物使いは幹部レベルの中でも弱い部類なのだろう。


 俺一人の場合では勝率が低いということは言い切れる。


 柚季派幹部には捨て身の作戦を使っても勝率は五分五分だろうし、鎧の能力者との勝率は三割だろう。


『難しいです。川凪さんやウィロー君の保護を諦めれば話は別ですが、そうはいかない。俺が一対一で戦うなら、柚季派幹部は五割、鎧は三割の勝率でしょう。確実に倒すなら、沢潟さんと連携取りたいです』


『そうか。私が考えている作戦の内の一つに、君が柚季派幹部を、沢潟が鎧の能力者を担当し、勝った方がもう片方を援護するというモノがあったのだが、それは不可能でいいな』


『はい、最悪の場合、俺と沢潟さんが殺されてそのまま保護対象が狙われる可能性があります』


『えっと、いいですか?』


『どうした?いいぞ』


 クイナが発言をしたがったので、内田さんが許可した。


『柚季派の構成員はどのくらいいて、どのくらい集まっているんですか?』


『その報告はハスターからしてもらおう』


『はい。ご主人様。既に補足している構成員、既に空き家になった拠点などから推察すると、現在百~百二十人程度の柚季派の構成員が首都圏に集まっていると考えられます』


『この通りだ。数は非常に多い。これを処理するために、第一の協力も得た。ある程度こちらの負担は軽減されるはずだ。それを踏まえたうえでの作戦を命じる。


 この通話後、沢潟と杜若はとある場所へと向かってくれ。幹部級の実力者は全てそこに集めて三つ巴で戦う。彼らは、杜若と川凪を使っておびき寄せよう。居場所は、カリムがリツトの未来を通して観測するだろう』


『かなり素っ頓狂な作戦を立てたな、隊長。勝算はあるのか?』


 沢潟さんの問いに内田さんは堂々とした態度で答えた。


『ある。まず、鎧と柚季派は繋がっていない。そして両派閥は仲が良いという訳でもない。だから、三つ巴にすることは出来る。詳しい根拠は後で説明する。


 また、乱戦においてはこちらの二人に利がある。決して分が悪い戦いではないはずだ。保護対象の二人は近くで第一に保護させよう。位置情報は後で送る。護衛を担当するのは第一の足利だ。それでいいか?』


 第一部隊の足利。確か、茨木さんの次の強い人だという話を聞いたことがある。


『さて、どのように三つ巴の状況を作るかについて説明しよう。

 まず、敵の目的の整理だ。鎧の能力者の目的は川凪ヒカリ、ウィロー並びにそれを阻む者の殺害。そして柚季派の目的は『二つ』、杜若リツトの殺害と川凪ヒカリの誘拐だ。

 これについては、数分前に入った最新の情報だ。リツト達が拠点を押さえそれによって見つかったものだ。


 大方、暴走させ洗脳で支配下に置き、戦力増強をするのが目的だろう。殺さず、傷つけずに連行しろという指令があった。さらに、椿の報告によると、柚季派は麻酔弾を川凪の方向に向けていた。柚季も彼女を狙っていることは確定だ』


 その時、腕時計が一度だけ振動した。

 どうやら何かインストールされているようだった。


『たった今、杜若と沢潟の装備にとある機能を追加した。

川凪とウィローを保護する核シェルターを開く唯一の鍵だ。シェルター自体は茨木以外に破壊されることはない。つまり、我々の敵が目標を達成するためには、君たち二人の武器を奪う必要が出てくる。そこで共謀の可能性が出てくるが…。沢潟、簡単に戦力差を教えてくれ』


『リツトの話を信じるなら、強さの順は鎧、オレ、幹部とリツトだ。差はそれほどひどくはないな』


『それらを踏まえて考えよう。もし、鎧と柚季が手を組んで我々を倒した後、どうなる?』


『川凪の生死をめぐって争って、柚季派が…負ける。でしょうか?』


『その通りだ。椿。負傷具合に極端な差があれば別だが、私の見立てであれば、手を組んで我々を倒した場合、柚季は目標を果たせない。さらに保険としてシェルターの護衛に足利を配備する』


 あの人の実力は本物だ。シェルターについては安心していいだろう。


『今夜の7時に作戦決行だ。各自、準備をしてくれ』





 内田は通信を切ると、ゆっくり息を吐きながら背中を伸ばす。


「ハスター、すぐに情報屋に例の座標を飛ばせ」


「素直に来ますかね。彼ら」


「柚季派は来る。何せ、大きな目標は杜若リツトだ。後戻りが出来ないほどにもう人が動いている。罠がなく、実際にいると分かったらすっ飛んでくるだろう。鎧も来るはずだ。茨木によると、彼はカリムと接触している。位置情報と餌は得ている筈だ。

 保険として足利も借りた。下げられる頭は下げ、出せる駒はすべて使った」


(これで四割か?それとも、ここで切れる切り札があるとでも…?)


 内田は更なる根回しのために、ハスターを連れて第二部隊室を出た。


 そもそも勝率が上がっただけで、あの三つ巴に勝てる保証はない。


 賽は投げられた。表か裏かは誰にも分からない。


 僕とヒカリさんは椿さんや沢潟さんと別れ、異能局の方々に車で地下シェルターまで案内された。


 そのシェルターには3本のペットボトルと茶菓子が置かれた机と3つの椅子がある。


 その殺風景な部屋の中で、両腕に枷を付けた一人の男が目を瞑りながら正座で座っていて、刀を左に置いている。


「君たちに問う」


 重く、体に響くようなオーラを醸しながら目を大きく開いている。僕たちは彼の言葉の先を、息を飲みながら待ち構えた。


「『雰囲気』出せているかな?」


「はい?」


 ヒカリさんが驚いたからか、困惑の声を漏らしていた。


「私は第一部隊隊長、足利ヨシテルだ。よろしく。君が川凪ヒカリだね」


「はい。どうも」


 彼は彼女を見てからゆっくりと立ち上がりこちらに歩いて来た。


「ああ、名前のことだね。剣豪将軍と呼ばれた男の名前だ。雰囲気がよさそうだからな。変えた」


 聞いてもないのに説明をし始めた。


「雰囲気というのは重要だ。ま、簡単に言えば士気だからね。士気が高いと発揮されるパフォーマンスも高くなる。まさに綺麗な比例関係だ」


 目の前に立っても話し続けている。


「分かりやすくていいな。比例関係は。私は文系脳だ。だからかもしれないが、数学的なものは苦手だね…」


 足利という人は動画を停止したかのように急に黙った。


「そう、だった!ウィロー君。この作戦中は君もこの中に入れないことになっている。その説明は事前に受けていたよね?」


「はい。そうですね」


 僕は外でやるべきことがある。

 ここに来るまでの車の中で、無線で彼が事前に頼んできていた。第一部隊はどんな人間でも勧誘して巻き込んで味方に付けさせる方針らしい。


「あと作戦開始までの少しの間。彼女と話しておくことはあるかい?」


「特にはないです。今生の別れではありませんから。ただ、一言だけ」


「ん、なんだ?」


「この戦いが終わったら、デート、行きませんか?」


「な、あ、え?」


 ヒカリさんは突然のことだったからか、はっきりと言葉が出てきていない。顔も耳も明らかに赤くなっている。

 確かに、唐突すぎたかもしれない。驚くのも無理のないことだ。反省。


「ふむ」


 足利さんは感心したような目で見ている。


「それでは、後で回答をお願いします。足利さん、彼女を」


「承知」


 僕は外に出た。その先で桜島さんが腰に手を当てて待っている。


 彼の隣のキャンピングカーの寝室部分がバックドアのように開き、そこに繋がる階段が現れた。


「流石だな。その猪突猛進さは、我々も見習う必要があるかもしれない」


「何のことです?」


「ああ、いい。それよりも、早く上がって、白い線に足を合わせてくれ。装着は自動で行う」


 階段を上がって言われた通りに足を合わせる。

 すると、車の壁からアームとパーツが出てくる。


「第二は許可をくれなかったが、第一はくれた。私のノウハウ、コネ、カネ、使える全てを注ぎ込んだものだ。無駄にするなよ」


 うなじに何かが刺されて、大脳部分にデータが流れ込む。

 データ名『闘争』『武道』『生物学』等。

 戦うことに必要な知識や経験のデータが展開されていく。

 ヒトを倒す方法。苦痛を与える方法。僕が、いや俺が目的を達成するための全てが揃っている。


「装着開始」


 体全てに装甲が取り付けられて、装備のあらゆる内容が目の前に映像のように現れる。


 ミサイル、飛行能力、格闘機能、この装甲に仕込まれているナノマシンとその量、特殊関節機構、自己修復機能、対能力者武装、それらの限界。第一部隊のネットワークと接続して、彼らが知っている『今の状況』を理解した。


「今の俺なら、あの人を、守れます」


 フルフェイスの、赤いラインに近代の甲冑のような装備を装着し終えると、桜島さんがまじまじと俺の様子をタブレットと交互に見ていた。


「調整は完璧、色々と好調。今からでも出撃できる。目的地は…」


 既に設定してある。第一部隊が設定した座標は、とあるビルの屋上だった。

 背中から三角錐を羽のように二つ生やしてブースターを出す。


「操作方法は、さきほど挿入したデータに入ってる。手足を動かすように、簡便な操作がでるようになっている筈だ。それと、弱点は…」


「はい。分かってます。それでは、飛んできます」


「そうか。行ってこい」


 僕はそう言って指定された場所へと向かった。


第一が第二との協議をせずウィローに対する戦闘許可を出した感じです。

どうやら第一はウィローが必要になるかもしれないと踏んだみたいですね。

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