化け物、人、ヒーロー気取り
俺と沢潟さんは東京湾沿いにあるコンテナ置き場に二人並んで立っていた。
辺りは薄暗く、等間隔で並ぶ電灯だけが辺りを照らしていた。
既に装備を起動してコート形態で辺りを警戒する。
沢潟さんも二つの枷を装着し、銃剣を付けた二丁拳銃を持ちながら、能力で強化された嗅覚や聴覚で様子を伺っている。
「まだ来てないですね」
「まぁ、気長に待とうぜ。あいつらの目標を達成するには、ここに来るしかねぇんだ。人払いもロボ払いも済んでる。ゆっくり待とうぜ」
「沢潟さん、ちょっといいですか?」
「ん?」
俺は確認のつもりで彼に問うた。
「これ、どう戦うのが正解なんですか?厳密には三つ巴じゃないですよね」
「ああそうだな。いくら理由を用意したって、俺たちは積極的に狙われる立場だ」
彼らにとって共通の敵であることに変わりはない。
柚季派もあの鎧もどちらも俺の死を望んでいる。
その後の川凪さんの生死に関する課題が残っていても、彼らは最低条件として俺と沢潟さんを殺さなければならない。
「あと、あの鎧についてだが、俺に対策があるから任せてくれ。それでもダメだったら、機転とセンスで跳ね返す」
「そ、そうですか」
「……さて、敵さんの登場だ」
彼が犬のように鼻を鳴らし始めた。
どうやら誰かが近くに来たらしい。
「よし、二人だ。方角は…」
彼が向いた先にはコンテナが山積みに置かれている。
そしてその上に人影が二つ。
柚季の幹部とタートルネックのセーターを着た女が立っていた。
柚季の幹部は体の各所にホログラム用の装置が付いている。
「やるぞ、リツト」
「鎧の乱入があるかもしれませんし、それも考慮しましょう」
コンテナの上で佇む二人も敵を睨みながら話していた。
「やはり捕食者がいるな。まぁいい。不意打ちとまではいかなかったが上は取れた」
「レバーはしっかり食べてきました。ここで、彼の首を取る。そうですよね?」
彼女は袖をまくり、肘窩から手の平までナイフを突き立て、さっくりと、撫でるように傷つける。
「その後、俺たちも東京に降り立って『景色』を作る」
(あの時、問われてやっと分かった。俺のやりたいこと。俺が成し遂げたいもの)
(あの時から惰性の殺戮から、作品作りへと変わった。今までコツコツとインスピレーションを貯めてきたつもりだ)
溢れ出た血は空中で形を成して数十本のナイフとなった。
「おいおい、あれヤバくねぇか?」
その光景を見た沢潟さんは不敵に笑い、微かに興奮していた。
「少なくとも準幹部級ですね。気合い入れましょう」
この場に連れてきているという時点で、彼女は柚季派の中でも相当な実力者なのだろう。
距離は遠くない。柚季なら一瞬で詰められる。
小さな刃物たちが射出された瞬間に、その柚季が俺の前に現れた。
振りかざされるナイフを避けたら、沢潟さんが奴の頭に銃を突き付けていた。
それに気づいた幹部は引き金を引く前に移動して距離を取り、銃弾の痕だけがその場に残った。
すぐにコートを広い盾に変形させて、血のナイフ群を防御する間に、距離の離れた幹部に対して沢潟さんが射撃で圧をかけている。
『上は俺が取ります』
無線で告げてから銃の生成と同時に走り出して照準を合わせて引き金を引く。電気の弾丸を二十個に分けて飛ばしてみた、あちらは血の小さな小枝を飛ばして電気の銃弾を防いでいる。
(分けすぎたか。操作できない。次は一発狙うか)
操作できないほどに弾を散らしたのが裏目に出た。そして幹部は目の前に瞬間移動している。
俺は銃のまま殴りかかって血の能力者の射線に入らないように格闘を行う。
既に動きは見ていたこともあってか、何とか高速戦闘も対処していく。ただ、少しだけ押されていた。
すぐに俺たちの間に入った沢潟さんによって、柚季派幹部はすぐに移動して血の能力者の隣に立った。
先程の戦いで柚季の動きに少しだけ違和感があった。
『多少、スピードが速くなってんのもあるが、あの装置と足運びだな』
沢潟さんは分析を俺に共有した。概ね、俺も同じ予想だった。
『離れないで戦おう。離れすぎると瞬間移動で二対一にされちまう』
『そうですね』
『なら、あの上で陣取ってる奴をどうにかしなきゃな…。いや、やっぱ大丈夫だ』
『え?』
俺が疑問に思った瞬間、彼女が乗っているコンテナが宙を舞った。
宙に打ち上げられた彼女に、枝のように別れた銀の枝が迫っており、
「ガァァルァァァ!」
言葉のない、叩きつけるような咆哮を上げながら奴が来た。
さらにもう一つ、もう二つ、コンテナがそれぞれに向かって落ちてくる。
避けたり、コンテナを破壊するなどして各々が対処した直後、接近した鎧がその手にある無骨で巨大な剣の間合いを、二十メートルに延ばして横薙ぎにする。
俺が飛び上がってそれを避けると、血刃の雨が迫っていることに気づいた。
(俺狙いかよ!)
前面にナノマシンの盾を作ると背後に柚季が瞬間移動していた。
突き刺されんとするナイフを捌いて蹴りを入れて、自由落下で地に落ちる。
互いに受け身を取ってから、すぐに電気の剣を俺の周りに集めて衛星のように旋回させた。
相手の能力の弱点は行動後の隙だ。俺の力でその隙を攻め立てられることは互いに分かっている。つまり奴は、この電気の衛星を避けながら攻撃してくる。360°を常に警戒するより楽に戦える。
右手を銃に変形させて、それ以外の四肢はナノマシンで装甲を作る。
「ククク」
どうやら、奴は俺の笑顔が気に食わないようだから、わざと笑って挑発する。
そして衛星の隙間が、俺と奴の間に重なると、膝が目の前に飛んで来た。
左手でそれを防いで右手の銃を向けて引き金を引くが避けられて距離を取った瞬間に、別の角度から衛星の隙間を狙って今度はあの時のナイフが片手にある。
なんとか避けてみるが頬を掠められる。
カウンターを試みたが避けられて距離を取られる。
それを読んでいた俺は、離れた瞬間に、最初に撃っていた電気弾を奴に降らせた。
動きがよろめいた隙にレールガン形態に移行。衛星で左半身を守るよう集めて銃口を──
──奴が移動するであろう、俺から見て丁度三時の方向に向けた。
一連の戦闘で、奴が一瞬で移動できる距離は見切った。さらに左側は電気の衛星を集めることで奴が攻撃する箇所を限定する。念のためレールガンで使う以外のナノマシンはコートのように形態変化をして防御に回しているので、攻撃されたとしてもカウンターすることが出来る。
そうして銃口の方へ目を向けると、信じられない光景を目にした。
(マシンガン⁉)
いつの間にか、なかったはずのマシンガンが俺に向けられていた。
引き金を引いたのは同時。
互いに放たれる弾丸からできるだけ離れようと走り出した。
俺はコートの上から何個も銃弾を受けながら、コンテナに向かって飛んで射線を切った。
(組み立てたのか)
事前に体にパーツを忍ばせていたのだろう。そしてこの一瞬でマシンガンを組み立てた。
だがこちらの銃弾は当たった。
しっかりとダメージは入ってる。
まだ、勝機が潰えたわけじゃない。
射線を通すために、俺の目の前、十メートル先に柚季が現れた瞬間、盾を顕現させながら走り出した。
この盾なら、マシンガンの銃弾を正面から受けることが出来る。
それを確認できれば、奴は当然、俺の背後を攻める。
マシンガンの射撃が止まった瞬間に盾の裏に潜めていた電気の刃を背後に撃った。
発射と同時に俺も飛び出して、盾のまま奴を殴り飛ばした。
一方、血刃の雨を向けた直後、オサムは血の能力者に右の銃を発砲しながら、左の銃剣で切りかかろうとしていた。それらの攻撃は血の盾で防がれるがヒビが入っている。盾の強度はそれほどらしい。
彼はそれを見た瞬間にその盾を蹴りで割り、その勢いのまま彼女を蹴飛ばした。
さらに追撃をしようとしたが、地面から銀の刃が出てくるのを察知して飛び退いてそれらを避ける。
「血と死を以て糧となれ。怪物」
(怪物の狙いはオレか?)
「グルルァ!」
鎧はその巨体を思わせないスピードで迫ってきた。
リロードした左の銃で血の能力者を撃って牽制しながら、巨大な剣を右の銃を撃って牽制して待ち構えた。
三メートルは飛び上がって振りかざされる刃渡り2メートルの剣を二つの銃剣で受け止める。
受け止めた後すぐに足元にある爆発物を仕組んだ玉なしのマガジンを頭にめがけて蹴飛ばした。マガジンが兜に当たり爆発した直後に、剣を受け流して地に刺し腹を蹴飛ばした。数歩のけぞった鎧に銃撃で追撃する。しかしそれで止まることはなく、振りかざされる剣と銃剣が火花を散らして何度も交じり合う。互いに致命の一撃を入れるために、ほとんど互角の戦いを繰り広げていた。
しかし、分が悪いのは沢潟の方である。
鎧の能力者の一挙一足は沢潟に大きなダメージを与え得るものだ。それに対して、沢潟の攻撃にはそれがない。鎧の能力者の体力が多すぎる。
彼は石の山を一つずつ運ぶことで崩そうとしているかのような感覚だった。銃弾を織り交ぜて攻撃しても、その底はまるで見えない。
剣戟の中で剣を蛇のように変形して沢潟に飛びかかったのでそれを回避すると、彼の隣に、リツトが転がりこんだ。
書きながらこいつら全員強いなと思っていました。
この作品、未来視持ちのカリムがいるので登場するキャラのレベルが高いんです。
未来視に好き勝手させないために味方側のレベルを上げる。
↓
それに釣られて敵のレベルも上がる。
といった感じです。




