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偽りのピースキーパー   作者: 新川翔
Reviver編
21/50

The Reviver

 俺と奴が話していると、目的地の扉の奥から別の能力者が四人現れた。


『どうなって』


 さらに無線から椿の声が聞こえた。どうやら、椿が俺たちの通った道を辿ってここに到着したらしい。


『椿、奥の四人任せられるか』


「もちろん」


 彼女は俺の隣まで来て直接話した。


「頼む。色々」


「任せて、一蓮托生でしょ」


 彼女は四人の方へ向いて言った。

 井原原の枷を掲げる。彼は俺が抱えた時にそれを取り外し、俺に渡していた。

 そもそも、これが出来るか分からないが、やってみる価値はある。少なくともこの状態では、幹部レベルの人間は倒せない。


 覚悟を最短で決めて、枷を左手に嵌める。

 駆け巡る血がおぞましいほど痛い。体の全てが暴れている。体の全てが叫んでいる。能力の強引な引き上げ、それに対する反発で、おかしくなる。

 さらにもう一度、ドローンを起動し強化のリミッターを完全解除。


 全能感が理性とぶつかって、思考が定まらない。


「七転ッ、八倒ォ…全て…払って」


 膝を着いてもがく俺に迫る木の根は、全て椿の銃が撃ち抜いた。




 恨みも怒りも気力も悲しみも使命感も。

 散らかった感情は、

 全て全て固めて───




「お前を、潰す!」


 潰し尽くす。

 完膚なきまでに潰す。

 二度と面を上げられないほどに潰す。


 潰して潰して。潰す。


 その体勢のまま飛び出した。山なりに飛んで頭めがけて引き金を引く。迫る木の根は全て井原原の銃で切断した。ただ、残量は限られている。


 弾丸群は防がれ、電気の剣を障壁となる木の根に突き刺す。


「邪魔だァ!」


 剣の温度を上げて焼き切ると、根の影から犬が俺の肩に嚙みついた。


 植物だけでなく動物も操る能力があるらしい。


 すぐに迫る巨大な木の根を躱して電気で犬を焼く。奴の手には試験管がある。あれから無理に成長させたのだろう。ただ、現時点で俺が操られていないから、戦闘中に俺が操られることはないだろう。

 木の根に乗ってから、一直線に走って奴の頭を掴んで壁に叩きつけると、壁が抜け大きな空間に移動した。


「第二ラウンドだ!潰す!」


 そのまま床に頭を叩きつけようとすると、その床から俺を狙う根が現れた。それは躱して距離を取り牽制のため、マシンガン形態の拘電の引き金を引き続ける。動物たちは全て水で切り倒す。


 着地した瞬間に駆け出して木の根どもを、雷の剣と銃と手足で蹴散らしながら目標に接近する。

 相手はすぐに木の鎧で防御を固め、接近戦が始まった。

 枷二個分で強化した電気の熱でも、奴の鎧を焼ききることは出来ない。身を守るために耐久力を上げたものだろう。


 だが、電撃を浴びさせれば動きは鈍るし、動きにくいものを纏ってくれたおかげで、こちらが多方面から攻撃できるようになった。


 スピードを上げて攻撃するこちらに、防御することでしか対応できていない。

 たまに鎧から木の根が出ても、この状態の俺なら簡単に躱すことができる。

 全方位に電気の塊を浮かせ、目に見える罠を敷いて意識を削ぐ。

 そして、距離を取った瞬間に全ての電気を奴にめがけて発射した。

 全ての弾を当てる調整はしない。

 罠は半分ずつ、牽制用と直撃用に分けて、牽制用は地面に着弾する前に軌道を変えて全て俺の手に収束させてナイフを作り上げた。


 水の残量はメーターによると、次で最後。それを確認した俺は、もう一度奴めがけて走り出した。


 奴の発した木の根が迫る。


 ただ、奴の体は電撃で鈍っており、近距離であっても木の根を精密に動かせなくなっていた。

致命的な攻撃だけを躱すと、奴は自分一人を覆うくらいの木の障壁を出した。そこにナイフと斬水銃の水で起こさせてそれを突破。


 しかし、木の刃が二本もまだ残っていた。


「な⁉」


 そのはずはない。


 今の爆発で攻撃出来そうな植物は全て爆発させたはずだった。


 よく見ると、奴自身の胸から木の根が伸びていることに気づいた。


 体の一部ではあるが、能力と一体化している(・・・・・・・・・・)


(奥の手か?)


 上手く躱しても肩と脇腹を掠めていく。すぐに体勢を立て直して一旦距離を取る。


(まずいな)


 千載一遇のチャンスを逃してしまった。


 残りの体力だと、あと数分もこの状態を維持できない。



 ならば、さらに無理をして一か八かを───



『合わせて!』


 無線から椿の声がするのと、彼女は俺が空けた穴から飛び降り、奴に向けてマシンガンを撃っている。


 弾丸が木の壁で防がれるのを見て、マイの父の持っていた剣を取り出していた。俺はすぐに拘電を拳銃にして、刃の部分に高出力の電気弾を当てる。



 しかし、突く刺された剣は小さな亀裂だけを作って、そこで止まってしまう。



(さっきより硬さ上がってるんじゃねえか?)



 俺は彼女のいる反対方向に走り出した。


 椿はそこからすぐに飛び退いて、少し遠いところまで距離を取る。


「たかが、枷一つに、邪魔されるとでも?」


 奴は怒りの感情のまま木の根を向ける。


 彼女はもう一つ、何かを懐から取り出した。

 それは、きっと周辺に仕掛けられていた爆弾の起動装置。


「貴様、待て!」


 椿がなにか策を持たずここに来るはずがない。


「黙れ」


 彼女はそう言いながら、そのスイッチをほくそ笑いながら押した。

 爆発で飛んだ奴を蹴る。


「アァァァァ!」


 さらに、走る途中に貯めていた全ての電気を、手のひらに集めて奴の顔面を殴って流し、床に叩きつけた。


 倒れる奴の胸倉を掴んで、何度も、何度も、何度も殴りつける。


 ただひたすらに、感情を吐き出して拳に乗せる。

 殴る。

 殴る。

 殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って。


───疲れた。



(ようやく、終わったのか)


 力を抜いて立ち尽くし、血まみれの動かない幹部を見て終わりを実感する。


(終わったのか…?)




 その時、床が抜けた。



 

 ───は?


 戦いの余波?違う。こいつは気絶しながらも床を破壊した。

 まずい。地面が遠くなる。

 手を伸ばしても届かな───


「あっぶない!」


 椿がギリギリのところで俺の手を掴んでいた。互いに息切れしながら見つめ合う。


「さっすが」


「それほどでも?」


 それでも、互いに純粋に笑っていた。彼女は力一杯俺を引き上げて、俺は何とか穴から脱出する。


「そのルートか!」


 彼女のおかげで穴から抜け出すと、一人の男が満面の笑みをこぼしながら現れた。


「カリム!」


 吠えて、睨みつけながら銃を構えた。奴はこの空間に入る時にできた穴から、大声でこちらへ叫んでいる。


 クイナも隣で、銃を構えている。


「ははは!可能性低かったんだぜ。このルート!」


「なんだよ!茶化しに来たのか⁉」


「いや、そんな意図はない。ハハ!ただの、確認だよ!」


 さらに、大げさに両手を広げて高らかに宣言した。


「言っておこう!未来を選ぶ権利は僕にある!」


 その宣言が、余りにも傲慢なものだったので、怒鳴るように返す。


「黙れ!未来を守る権利が、俺にはある!」


 俺の言葉を聞いた奴は、悪魔のような笑顔をしてから、すぐにどこかへ逃げてしまった。

 すぐにその穴から茨木さんの姿が見える。


「奴に接触したのか⁉」


 茨木さんはこちらを確認すると、無線のことなど忘れて大声で呼びかけてきた。


『しました。すぐどっか行きましたけど』


 彼の問いに、クイナが無線で答えた。


『そうか…。その傷では動かない方がいいな。井原原も、命に別条はないようだ。救援を呼ぶ、そこで休んでくれ。私はアレを追う』


 茨木さんはそう言い残してカリムの走った方へ向かって行った。


「覚悟しとけ…」


 復讐なんて考えはない。

 やり返すという意思はない。

 ただ、杜若カリム、お前は野放しにしてはならない存在だ。

 いるだけで口を開き、混乱を招く。



「俺が潰してやる」



 チャンスがあれば、隙があれば、俺が奴を仕留める。


(楽しみにしておけ、お前は必ず止めてやる)





 空が青い。

 日差しはあるが気温は低い。

 そして、空気は乾いている。

 騒動終結から数日後の休みの日、俺はとある臨海公園で海を見ていた。

 異能局は本部を制圧し、幹部を一人と、俺の家族を殺し、傷つけた自然野郎や幼馴染たちを含む多数構成員を捕まえ、作戦は大成功となった。


 それから調べて分かったことだが、あの幹部に近い実力を持った自然野郎は、派閥に属していない人間で、カリムの指示で俺の家族を殺していた。

 そして、当のカリム本人はあの地下で会った以来、行方を眩ませており、茨木さんは彼を追うためにまたどこかへ行ってしまった。また、あの時妹を襲った幹部はカリムと自然野郎のことだったことが後から分かった。


 井原原も意識はしっかりとあり、一か月もすれば復帰できるらしい。


「おーい、聞こえる?さっきから呼んでいるんだけど」


 椿がいつの間にか隣にいた。


 その両手には缶コーヒーがあり、片方をこちらに差し出している。


「あー、すまん。ぼーっとしてた」


 事後処理の疲れから、思わず惚けてしまった。俺は彼女から温かいものを受け取った。


「コーヒー、ありがとう」


「ちゃんとしな。まだまだ続くんだから」


 彼女はこちらを向いて、そうほほ笑んでみせる。


「ああ、そうだな。…まだまだ続くんだ。これからもよろしく」


「オーケー、よろしく」


 俺は、あの時とは違う使命を抱えて、この場から歩き始めた。彼女は笑いながら脇腹を小突いている。


 頬を冷たい風が掠め、肌がひりついていた。ただ、このまま進めば、花が咲く季節だ。


と言うわけで、リツトのRiviver編完結です。

彼はここから頑張っていくみたいです。


次は『化け物とヒト』編です。

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