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偽りのピースキーパー   作者: 新川翔
Reviver編
18/50

作戦会議

 ある領域にまで至った機械に人の権利を持たせるかどうか。それを建前とした資源の取りあい、第三次世界大戦。その過程で各発展途上国は二百年の持続可能な社会を手に入れた。戦う目的を失った彼らは次第に戦争を終結させることで、今の国際社会は醸成された。


「こちらこそ初めまして」


「2p、彼に今の状況を教えてくれないか?」


『只今、法務省異能局にて、超能力者に対する制度を考えているのはご存知ですね。そして今の焦点は、能力者か非能力者か、どちらを手厚くするかという題目です。状況は拮抗。私の予測ではどちらを取っても混乱が起きるという結論なので、かなり議論が白熱しています』


『我々が今求めているのは情報。特に超能力者の日常生活についてです。それを新たな変数として加えることで、どちらがベターなチョイスか判断できます』


「訳は分かってくれたかな?まぁ、情報を集まっても、議論が平行線になり、このまま決められなさそうだったら、私がどうにかするよ」


「どうにかするって、どんな?」


 やけに抽象的だったので聞いてみた。


「その法律を施行した上で起きうる問題に対する対策。教育、国民の意識を変える方法を考えたり、ま、出来る限りの全てをする」


 彼はするりと彼なりの考えを提示した。


「信頼してもらっていい。私は戦争を起こしたくない。特に次の戦争、第四次はね」


 食前酒が互いの前に届けられる。


「ひとまず乾杯しようか」


(食前酒だよ、本物だよ、見たことねぇ!)


「「乾杯」」


 俺は乾杯してからそれに口を付けた。緊張で味がしなかった。


「一つと二つを乗り越え、人種の違いに目を付けるようになった。三つ目で人以外とも対等に理解し合えた。それで今起きているのが、人類内での問題だ。こんなところじゃ止まっていられない。日本に第四の火の粉は降らせない。君は二百年後論を聞いたことはあるかい?」


「自給自足できなくなる前に、人類は迫る脅威に対策しなければならないってやつですね」


「ああ、提唱されたのは第三次後で、実際は今から百五十年後の話だがな。だが、日本は脅威に晒される可能性は低い。なんせマグマ発電が実用化に向かっているから…」


 そこまで自慢げに言うと、彼はフリーズしたように固まった。


「話を戻そう。今の君たちに頼みたいことは、我々の準備が整うまでの平和安寧の維持だ」


「それは勿論、できますよ。そのつもりですし。魂を賭けられます」


「魂、か、悪くない響きだ。何回も使うと陳腐になっていくが、一度ならいいインパクトになる。…私も魂を賭けよう。この国をよりよく発展させることに」


『私もそのつもりです。機械に魂という表現は正しくはないですが、感覚で理解できます。私も、魂を賭けましょう』


 2pが言った言葉を総理は一人で小さく反芻し始めた。


「なんだかこの時点でもう胡散臭いな。あまり使う表現じゃないな。人に呼びかける時に使うのは」


 彼はそう言った後、さらに続けて人について語り始めた。


「人ってのは、疑い深く狡猾でロマンチストだ。破綻していて単純じゃない。だからここまで来れたし、こんなに問題が起きた。私達全員が日本を背負っている間はこの一連の状況を最小限の損害で乗り越える」


「はい。精一杯、力添えさせてください」


 彼の言葉に応えると、お互いに前菜が置かれる。


「ああ、そろそろ頂こう」


「はい。いただきます」


 それを頂こうとしたその時、扉からspらしき人々が現れて次々と空いている椅子に座って言った。


「え?」


 フォークを持つ手を止めて総理へ理由を求める目を向ける。


「あぁ、予定はキャンセルになった。ま、頂こう。他のみんなと談笑しながら」


 俺はその日、もう二度と食べることはないくらい豪華な食事を楽しんでから拠点に戻った。






「お疲れ」


 拠点へ帰り部屋の扉の前に立つと、クイナとすれ違った。


「お、まだいたのか?」


「ちょっと暇潰してた」


「ああ、そうか。まぁ、そういう日もあるか」


 俺は深くは聞く理由もなかったので特に詮索はしかなかった。


「それで、どうだった?生の内閣総理大臣は」


「なんだか掴みどころがない人だったな。あっちの腹の内についてあまり話していないからかな」


「それじゃあ、こっちは信用できない?」


「そうでもないよ。どうやら、争いを起こそうとしていないのは本当みたいだ」


「どうして分かったの?」


「…長くなるから、中でいいか?」


 クイナを部屋の中に入れてカウンターに案内した。


「なんか飲むか?ココアとか」


「そんなのもあるの?ここ」


「まぁな」


 棚にあった粉を取って湯を沸かしマグカップを置く。


「実はスーツの下で携帯用の枷を装着してたんだ。そんでうそ発見器と同じことをした」


「…すごいことするね。バレてたら捕まるでしょ」


「本当かどうか知りたかったんだ。まぁ、見逃された可能性もあるけどな」


「君を引き入れるためにわざと、ってこと?」


「そういうこと。あ、お湯湧いた」


 二人分のココアを注いで、一つを彼女に渡す。


「どうも」


 彼女は礼を言ってそれを一口、口に含んでから、俺へと目を向ける。


「ねぇ、何かして欲しいことある?」


「え?」


 とぼけてみても、依然と俺に目線は注がれ続ける。

 彼女は何がしたいのだろうか。


「あ、ごめんね」


 俺の感情を察したのか、彼女はすぐに引き下がった。


 ここでとぼけた自分を罰したくなった。

 彼女はきっと、ただ、普通に俺に何かをしてあげたいのだろう。


「今はないよ。今は。頼むときには頼む」


 視線を外してココアを一口飲んだ。善意を踏みにじった罪悪感で彼女をまっすぐ見ることができなかった。


「本当に?」


 彼女は首を少し傾げて上目遣いをしてこちらを見ている。


「本当。助けが必要になったらすぐ言うよ」


 そこから何も話さず、俺たちはココア一杯飲み終わってから解散となった。





 起きる。口をゆすぐ。顔を洗う。朝食を食べる。歯を磨く。スーツを着る。


「おはよう。調子はどう?」


「最高潮だ。この上ないくらい」


 俺は迎えに来てくれた椿の方へ向かう。


「行こう。多分今日だろ。カチコむの」


「そ、ついてきて。場所は支部。まずは作戦会議」


 軽いドアを思い切り開けて、彼女と共に第二部隊の支部室へと向かった。


「お疲れ様です」


「お疲れ、椿、そして杜若」


 内田さんが俺たちを出迎える。ハスターさん、井原原、あの時俺を助けた茨木さん、そして、俺が警察に助けを求めた時に来た二丁拳銃の男、それぞれが既に入室して俺たちを待っていた。


「よし全員こちらに集まってくれ」


 内田さんは足元のホログラムの装置を起動させる。


「我々警察庁異能局はリラシオ本部に襲撃を行うことを決定した」


 ホログラムが起動し、どこかの地下らしき場所の三次元マップが映る。


「場所は新宿区新宿駅新宿線線路より入れるアジトだ。これは入り口の一つで、他の入り口は他の部隊が担当する。目的はリラシオメンバーの鎮圧。ただ、抵抗しない者たちは身柄を確保してくれ」


「おいおい。食い漏らしはどうするんだ?」


 二丁拳銃の男がホログラムのマップを見ながら聞いていた。


「それは一度無視だ。今回の作戦は拠点を制圧し奴らの活力を失わせることにある」


「俺がここにいる時点でカリムを野放しにしている。大きく活力を削げるのか?」


 さらに茨木さんが質問する。


「いえ、我々はあそこを占拠するだけで大きなメリットがあります。あそこにはアナログのデータが保管されています。手に入れるにしても、燃やされるにしても、拠点と情報を失う損害は大きいでしょう」


 情報の記載をアナログにしているのは、ハッキングで盗まれないようにするためだ。


「未来予知して色々対策を練られてないですか?」


「どうやら、ないらしい」


 俺の質問にも答え、下野さんは続ける。


「諜報員によると、カリムの信頼度が組織内で下がり、彼の言うことを聞かなくなっているそうだ。前回の侵攻で我々は押上、宮古の幹部二人を捕らえることに成功した。どうやらこの結果は、彼らにとって予定よりも大きな損害のようだ」


 それほどの根拠があるなら、それは信じるしかない。


「これからの超能力事件に多大な影響をもたらす作戦だ。心してかかって欲しい」


「作戦のネタはあいても知ってるはず、包囲し返されたらどうするんだ?」


「我々のアレは豊富な人材と、物量、デメリットの薄さにより決行できたものだ。リラシオにはそれをする余裕はない」


 二丁拳銃の男の問いに答えてから、内田さんは全員の様子をぐるりと確認した。


「よし。この作戦はこれからの国家の在り方に大きく関わる。総員、腹を括れ」


「「「「「「了解」」」」」」


 そこにいる全員が彼に敬礼した。


「と言う訳で皆様、開発部より支給品があります。対能力者各種装備です」


「茨木様には試作型万物破壊兵器」


「井原原様には出力を上げた斬水銃:改」


「沢潟様にもSジャッカルαとβ」


「椿様にはドローン兼、装着可軽鎧『六文銭』と各種火器」


 俺はそれぞれに名前が付いていることに少し驚いた。


「開発者の趣味だ。それぞれの装備、カルマポリスに名前を付けている。君に前回渡したものは急造だったから、問題点に調整を加えたらしい」


 よほど顔に出ていたのか、それとも気を使ってくれたのか、俺の口に出していない疑問を内田隊長が答えてくれた。


「かといって機能はほとんど変わっていない。少し、快適になったくらいだ」


「と言う訳で、杜若様には調整を施した完全版のカルマポリス『トゥバン』です」

ハスターさんは俺たちそれぞれに新しく支給された装備を配った。


「作戦開始は午前0時。それまでに各自自由に過ごしてもらって構わない。それでは解散」


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