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偽りのピースキーパー   作者: 新川翔
Reviver編
12/50

開戦

 機械から出ると、訓練室の入り口付近に椿がいた。


「今回の作戦」


 彼女は俺たちそれぞれにタブレットを投げ、キャッチしたのを確認すると内容を読み上げる。


「リラシオとその傘下の組織が動き始めた。動きや配置から攻められる場所は東京電波塔、国会議事堂、第一部隊拠点に絞られた」


「国会議事堂⁉」


 リラシオとは、大きな穏健派の発言力が無くなっただけで、ここまで大きく暴れる組織だっただろうか。


「続きあるから、落ち着き」


 思わず大きく反応した俺を椿はなだめた。


「前者二つはやるにしてもリスクがでかすぎるので、囮だと判断。最低限の戦力をそこに残し、他全てを第一部隊拠点へと集結させる。そして、ここでは二つの作戦を行い、カリムを嵌める」


 嵌める、とは大きく出ている。どうしようもない未来にでも追い込むつもりなのだろうか。


「一つ目は杜若リツトを囮として陣列を組み彼を守る作戦。そして、入ってきたテロリストたちをここに閉じ込めて外から潰していく作戦」


 確かに内と外の挟み撃ちの場合、内側に多大な圧力がかかる。

 だが、包囲できるならそれがいい。


「前者の作戦を遂行中に後者の者へ移るものとする。そのタイミングは杜若両名には伝えない」


 伝えないのはカリムの未来予知に引っかかる可能性があるからだろうか。


「ユウナには承諾の元、睡眠薬を飲んでもらい。秘密裏に運搬。ルートは誘導班のみの機密」

「そして今回は杜若リツトを戦力として数え、適切なタイミングでこちらとの合流を行ってもらう。タイミングは自身で判断すること」


 俺の引き際に関してはかなりアバウトな支持だ。未来を不確定にさせておきたいのだろう。


「発信機を付けて茨木ジンと合流する。杜若リツトを包囲まで届けたらリツトは後退、包囲に茨木ジンを参戦させる。以上」


「お、信頼していいぞ。あの人は異能局の中で一番強い人なんだ」


「そうか。…ってあの人か」


 確かカリムが、何度かネガティブなニュアンスでその名前を口にしていたような気がする。


「そういや、なんで睡眠薬飲ますんだ?」


「意識がない方が良いって話。今まで異能局は杜若リツトと戦ってきて、未来視の制限とか限界を推定しているみたい。その制限とかは部下には詳しく教えてくんないんだけどね」


「あー、納得した」


 多少の不満はあるが、今はそこに突っ込んでいられない。あちらの策に従おう。

 異能局の未来視への推察はどうなっているのだろう。彼女を寝かせるということは『対象の意識がないときは、未来を見ることができない』という推察を立てているのだろう。


「あ、ユウナちゃんに会う?許可取っとく?」


「お願いしてもいいか?」


 彼女の提案を受け入れた。どっち道頼もうとしたことなので、手間が省けてお得をした。


「よし、ん、じゃあね」


 彼女はそう言って訓練室から出て行った。少し速足だった気がする。


「俺も準備してから持ち場いくわ」


 彼もそう行って訓練室から出て行くと、一人で訓練を再開した。




「落ち着いてるじゃん」


 許可が取れた後、ユウナの部屋に入った。椿がまた、入り口の近くからこちらを見ている。


「ま、けじめは着いたからな。いつまでもナヨナヨしてられない」


「そう」


 ユウナは隣に座る俺の肩に頭を乗せながら相槌を打つ。


「そういや薬飲んだか?」


「うん。あと少しで効果が出るって」


「そうか…」


 寝るまでのタイムリミットが近づいている。なんて例えは不吉すぎる。


「なんで私を守るの?可愛いから?」


「おいおい。自分で言うなよ」


 本当に親の良いとこ取りをしたような綺麗な顔ではあるが、そんな理由ではない。


「ま、そんな訳ないだろ。いや、可愛いことは否定しないよ。でも、それは家族だからだ」


 彼女は幼馴染より大切だ。


「色々大変だったな。苦労かけた」


「迷惑かけたわけじゃないでしょ。私だけほとんど戦ってないし」


「本来、戦わなくていいんだよ。俺が銃を持っているのは、勝手に我儘通しただけだ」


 そうだ。

 その通りだ。


 偶々、異能局に戦力が足りず人材を求めている状況で、偶々、心を読める能力によって信頼の保障がされたお陰で戦えている。


「思い出話でもするか?」


 少しでも長く話しておきたいから昔話を振ってみた。


「なに?らしくない」


「いいだろ。これくらい」


「そういうの良いでしょ。他の人、聞いてるし」


「…そうだな」


 その後、何もしない時間が流れる。何もない。起伏がない。言葉もなく、音もない。

 何もないからこそ、居心地が良い。虚無は楽でいい。

 虚無という言葉に反して気分は充実していた。


「…お兄」


 彼女は俺の肩に寄り掛かったまま話しかけた。


「なんだ?」


「あとは、頼んだ」


 そう言ってベッドの方へ倒れる。完全に倒れる前に彼女を支え、ゆっくり下ろした。



 大好きで、可愛い可愛い妹だ。



「ユウナちゃんは預かる」


「ああ、本当に、頼む。椿」


 椿が扉を開けて、武装した部隊を部屋に呼び込んだ。


「最初の作戦が終わったら、私も包囲に参加するから、その言葉は後ろの人たちに言って」


「護衛部隊の隊長を務める柳だ。君の妹は私達が守ろう」


 部隊の方々は隊長と思われる人を先頭に俺の前に整列した。


「はい、お願いします」


 頭を深々と下げる。


「顔上げろ。男が軽々と頭を下げるんじゃねぇよ」


 部隊の隊長が肩を叩き、俺はゆっくりと頭を上げた。


「お、意外と良い面してるな」


 顔を真正面から見た部隊長はそう言った。


「いや、覚悟ができずに寝返った腰抜けだと思ったが、どうやら覚悟を決めてる面みたいだな」


 部隊長は振り向いて、部下達に指示を出し始める。


「よし、その子を丁寧に運べ。この子の傷は我々の誇りの傷だと思え」


『了解!』


 彼の部下たちがユウナを運ぶ準備を始める。担架を取り出して慎重に彼女を乗せた。


「地図の道は知ってるでしょ。頑張れ」


 きっと、俺が一番、危険なポジションにいる。


「ああ、やってみせるよ。丁度いいタイミングで帰る。それで良いよな?」


「そう、オーケー」


 俺は彼らの移動方法を目に入れないために一度部屋を出た。彼女の部屋から移動したら無線から連絡が入るらしい。隠し通路か、それとも部隊の中に転送の能力者がいるのか。

 俺はドアの近くに超小型カメラを置いて、しっかりと廊下が見えるか確かめたりした。さらに腕に枷を着けてドローンを纏い、銃を構え、外に設置したカメラの映像を眺める。


『もしもし』

『はーい。もしもし』


 椿の声が届いた。


『部屋に入っていいよ』


 ユウナのいた部屋に入ると確かに人はいなくなっていた。すぐに扉と鍵を閉めて椅子を扉の前に持ち出してそこに座る。脱出経路を調べるためにここの構造を調べた際、俺とユウナのいた部屋はこの拠点の丁度中央にあった。


 もしかしたら、異能局は最初からこの作戦のシナリオを想定して、ここに俺たちを匿ったのかもしれない。


 無線からリラシオが進行を開始した合図が入る。命令には『各自計画通り』という文言があった。どうやら、全ての隊がここから抜け出す算段はあるらしい。それこそワープする能力で。

 無線から忙しなく聞こえる声と、俺がいる静かな部屋。まるで対岸から事件を眺めているようだ。しかし、ここは対岸では決してない。俺は喧騒のど真ん中で悠然と座っている。

 移動する旨がどんどん伝わり、津々と人がいなくなり、縷々と緊張感が高まる。


 音が聞こえる。どうやら扉の前に人が来たらしい。カメラを通して数を確認する。



 数は二。



 確認してすぐにドアを蹴破った。

 誰かを一人巻き込めたので、ドアで押さえつけながら電流を思いっきり流す。

 潰した奴は超能力だろうから死んではいないだろう。


「サァ!始めようか!」


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