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偽りのピースキーパー   作者: 新川翔
Reviver編
11/50

性能検査

 拠点に帰ると井原原が俺の部屋の前で待っていた。


「どこ行ってた?」


 扉の前に立ち、中に入れないようにしている。


「飯食ってた。発信機でわかるだろ。それくらい」


 部屋に強引に入ろうとすると、それを防がれる。


「ああ、そうだが。だが、外で飯食う必要ないだろ」


「必要あったよ。外の空気をゆっくり吸えたからな。ほらここ。日の光も当たんないし」


「お前、そんなに日向ぼっこが好きなのか?」


「…いいぞ。日向ぼっこ」


「そうか。はぁ。…入っていいぞ」


 彼はわざと見逃して部屋に入れてくれた。部屋の中に入って、ベッドの上に転がる。


『お前は裏切った』

『もう戻らない』


 そんなこと分かってる。言い聞かせてきた。趣味が悪い。かさぶたをはがして塩を塗り込み、ナイフまで刺してくる。

 一人で感傷に浸っていると、ノックした後に椿が部屋に入ってきた。


「どうした?」


「いや、訓練はしたのかなって」


「いやしてないけど」


「それじゃあしとく?ためになると思うけど」


 確かに、彼女の言う通りだ。一度この武器を使ってみた方が良いだろう。


「やろう」


 俺はドローンと拘電を持ち、彼女に連れられて訓練室と呼ばれる場所に移動した。ブレスレットを取り、腕に枷を着けて銃を出現させていると、目の前にマネキンのような人形を椿が持って来ていた。


「お、ありがと」


「ん」


 彼女は人差し指と親指で丸を作る。


「それ、能力を弾にして打ち出すタイプでしょ」


「ああ、そうだけど」


「なら、射撃の技術はあんまり関係なくなる。能力を操る要領で軌道を修正できるから」


 そのマネキンに標準を定めてから45度ずらし、目標を狙った気分で引き金を引く。


 電気の弾は弧を描いてマネキンに当たった。


「すごいな」


「有効な範囲はあると思うけど、実際の銃よりかなり扱いやすいんじゃない?」


「そうだな。しばらくここに籠ってていいか?」


「いいけど、今夜から警戒態勢に入るから、それまでに出だら?」


「ああ、ありがとう」


「それじゃ、頑張れ」


 彼女が訓練室を出たのを確認してからもう監視が付いていないことに初めて気づいた。


(信頼されたってことか?)


 電気弾をマネキンに放つ。どうやらこの銃には弾切れはない。また、今まで通り電気を滞空させて形を作り、射出させることもできる。条件さえ揃えば全方位からの攻撃を一人で行うこともできる。さらに能力そのものも強化されたからなのか、体も軽くなってきた。


 能力者は力が強くなればなるほど体の動きが良くなって超人的な行為が行えるようになる。

 俺の体はいつもより数段動きやすくなっていた。


(この力なら、もう少し融通を利かせられるか?)


 俺はここまで運よくたどり着けた。これから、高い実力が求められるだろう。力を持たなければ目的は遂行できない。全てのカードを揃えても地力の差で立ち回れない時がある。


 周りの力と自身の地力。どちらもなければ現状には対抗できない。

 この施設の警備は信用していい。最新の装備が支給されている。ここの能力者たちは信用していい。あの二丁拳銃使いも、井原原もリラシオと比べてひどく劣る戦力ではない。


 あとは俺の力だ。


 そこは、信頼できない。

 なんとしても、ここだけは成功させたい。


「お、やってるな」


 そこにノックもせず、井原原が入ってきた。


「井原原、ちょっと訓練、付き合えるか?」


「あ?ご機嫌だな。えっと、対人戦か?」


「ああ。そういうのやる設備あるだろ」


「あるぜ。奥のボールっぽい機械あるだろ。そこに入ると出来る」


 彼はそう言って訓練室の隅にある、人間ほどの高さの二つの球形の機械を指差した。


「この機械の中の椅子に座って備え付けのゴーグルを着ければ、疑似的に傷つかず戦うことができる。ゲームの対戦みたいなもんだ」


 彼の指示に従うと、いつの間にか訓練室の中央に立たされていた。


「どうだ?気分は」


「よくできてるな。最近流行りのVRMMOってやつか?」


 少しだけジャンプしたりしてみて調子を確かめる。右手には既に枷の銃、拘電が握られていた。そして、手元には親父のドローンがない。どうやらこの空間では使えないようだ。恐らく、あれが国の技術ではなく、リラシオの技術で開発されたのでデータが反映されていないからだろうか。


「よし、感覚は分かった。さっそくやるか」


「おいおい、お前そんなバトルジャンキーだったか?」


「別にいいだろ」


 井原原は手元に銃を出した。ホログラムのように表示されたそれは、俺と同じ型のように見える。様々な形態に変化できるものだろうか。


「そういえば、お前がどんな能力か知らないな」


「そうだな。それはフェアじゃない」


 説明を始めようとする口調で奴はこちらに銃口を向けた。


 どうやら言うつもりはないらしい。俺は引き金を引く瞬間に左に飛び出した。


 避けた先で銃口から発せられたものを確認する。恐らく水。水を作り、操る能力だろうか。

 そのまま引き金を何度も引きながら肉薄にする。


(殺傷力高いな!)


 適切な距離に来たら体を捻り踵で回し蹴り。それを下がって避けると、俺の体で隠していた電気の槍が突き刺さる。


「ぐっ」


 そこに井原原が銃を小型バズーカに変形して水を放つ。大きな水の弾が地面で弾けて辺りに飛散った。

 距離を取っていたので水滴一つついていない。銃を構えながら前方を細部まで観察する。


「おいおい、すごい強いじゃねぇか。井原原」


「そりゃどうも。出し惜しみなんて、してられないからな」


 彼がそう言うと既に放っていた水が暴れ始める。どうやら銃で出した水も操作の対象にできるらしい。


 これに最初に引っかからなくて良かった。水のカッターという殺傷力と驚異の影に、操作した水を使った目つぶしや場合によっては窒息を狙っているのだろう。


(さて、どうしようか)


 奴の周りにある水が厄介だ。水たまりが近くにあるだけで意識が削がれる。中距離の撃ち合いでは長ければ長いほど、自身のフィールドを広げることにもなる。

 このままでは井原原が有利だ。

 ならば、接近戦だけに集中させて水を操作する暇を失くせばいい。


 すぐに一度に出せる限界の温度の電気の槍や剣を作り出し、銃は小手に変形させる。

 それを射出し水に当てると水蒸気爆発が起きた。そこに突っ込んで殴り合いを始める。

 手数を重視して、ガードの上からでも確実に攻撃を与える。


 今の俺は人間スタンガンのような状態だ。触れれば電流が流れ、相手の動きは鈍くなっていく。

そして、相手が望むのは中距離戦。彼はそれに持ち込もうとするだろう。距離を離される前に潰す。

 しかし、相手はそのまま負けてくれる人間でもない。拳に水を隠したり、所々に小さな水で目つぶしを試みて無理矢理体勢を崩される。その隙に距離を取られて中距離戦に持ち込まれるのだから、たまったものではない。



 水を消し飛ばすための高熱の電気だって、出すのには隙が生じる。中距離になった場合の奴はそこを狙うつもりだ。

 そこに、敢えて誘ってカウンターを返せる実力差はない。ならば相打ちを狙うか。

いや、それでは駄目だ。この騒動で俺が目指すのは相打ちではない。



 中距離に持ち込まれた以上、長引くと確実に負ける。



「終わらせよう」


 だから、素早く勝つための賭けに出る。どちらの読みが優れているかの勝負だ。


「来い」


 彼と少し離れた場所で、水の少ない場所に足が着いた瞬間に、全身に電気を纏って飛びかかる。最早、俺自身でも制御できない全速力。そこに強引に蹴りを合わせる。ただ速さに任せた攻撃。だから読まれれば避けられる。


 そこに俺の体で隠していた電気の刀が降り注ぐ。これも水の壁で防がれる。爆発を起こせるほどのもの練り上げなければ、電流は受け流され俺が操作できないほどに分散してしまう。

そんなのは知っていた。


 俺は蹴りをしている途中に銃の形態を変形させていた。

 形態は疑似カノン砲。彼の背後から、最高出力で叩き潰す。

 引き金を引いた銃口の先で電気の塊は爆発。


 そして、最後に地面に立ったのは俺だった。


「俺の勝ちだな」


「はは、負けた」


 手を差し出して、彼を起き上がらせる。


「狙いが搦め手で受け身のものだと、押し負けるぞ」


 彼の水のジェットの殺傷力を影にして、目くらましや妨害で隙を伺う戦い方は、良い戦い方ではあるが、俺が指摘する弱点はあった。幹部たちは基本、能力のゴリ押しだ。それに力負けしてしまう可能性はあった。


「アドバイスどうも。でもメインは殺傷力高すぎてさ」


 確かに、目的が拘束なら対象を傷つけるのはあまり好ましくない。


「いや、足の腱を狙えばいいだろ。お前くらいなら出来るはずだ」


「結構、バイオレンスじゃねえか」


「幹部相手にはここまでしないと無理だぞ。かなりきつい」


「おお、そうか。忠告どうも」


 手を指し伸ばして立ち上がらせてから、シミュレーションが終了する。


「そこのお二人。ちょっといい?」


 機械から出ると、訓練室の入り口付近に椿がいた。

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