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 ギャルとオタク、空から降ってくる女の子について話し合う 2

 「じゃあ俺、アナウンス役とキャッチする男役するから」

 「やる気満々だな」


 オタクは意気揚々と話し出す。

 「ある日うんこを踏んで落ち込んでいた男は、空を見上げたい気分になった。するとギャルが空から落ちてくることを確認した」

 「ちょっと待って、なんでうんこ踏んだ後って設定つけるの? やめない?」

 「順風満帆ではない時、人はどう動けるかが重要なのだよ、だからいいのだ」

 「そうですか。じゃあ、続けます」と言ってギャルは演技をする。

 「誰か助けてー、このままでは地面に激突してしまうわ」

 まさかの技巧派である。言葉は緊迫感に溢れ、目を瞑れば今にも空から落ちてしまいそうなギャルが見える勢いである。ギャルは至極真面目に、この茶番をしている。俺も本気を出さねばと、オタクは身を引き締めた。

 「俺に任せろ、受け止めてやる」

 「ありがとう、そこのジャニーゾの松本潤男まつもとじゅんおみたいな顔のひと」


 「ちょっと待て」


 ギャルはキョトンとした顔をして、オタクを見て、口を動かした。

 「何か、変だった?」

 「なぜ、国民的アイドル顔の人間が、受け止めてくれるのだ、そんな都合のよい話があるか!!」

 「違うよオタク君」

 「何が違うんだ」

 「狙って落ちているんだよ」

 「ね、狙ってだと!!」

 「オタクのよく見る漫画も、空から落ちてくる女の子に協力的な良いやつばかりだろ」

 「たっ確かに」

 「そんな偶然あると思うか」

 「確かに不自然だ」

 「人間は狡猾なんだよ、人を選ばない訳がないだろ、天空の城ラポタのシートだって、(あっ、あの機械弄ってる男の子、割と好みかも。ここに落ちよっと♪)くらい選んで落ちてんだよ」

 「マジかよ」

 「だから、私も松本潤男似の男の元に、行くんだよ」

 「好みの男にフライアウェイしたと」

 「そうだよ」

 なんて無慈悲な世の中なのであろうか、オタクはひどく悲哀を潤んだ劣情を心に宿した。イケメンは女の子が降ってくる可能性 すら高いらしい。なんて傲慢。なんて運。イケメンは所得税を増やすべきだと思いました。


 「じゃあ、俺の事を選んで女の子が空から落ちてきた設定とする」

 「了解」とギャルは言って茶番の続きを始めた。

 「誰か助けて、このままでは地面に激突してしまうわ」

 「任せろ受け止めてやる、そう俺は言って、空から落ちてきたギャルをお姫様抱っこした」

 「ありがとう、そこのオタクっぽい人」

 「さて、君は何で空から落ちてきたのかね」とオタクはギャルに聞いた。

 「一身上の都合で飛んできました」とギャルは言い、続けて「詳しいことは言えないのです」と説明した。

 

 お互いの間に、笑いは無く、何とも言えない空気が流れる。

 滑っているのだ、大事故である。

 ギャルは言い放つ。

 「なあ、オタク」

 「何? ギャルさん」

 「飽きたわ」

 「俺も言おうと思ってた」

 「やめよう」

 「わかった」

 「満足した?」

 「1つ分かったことは、ギャルが潤男松本じゅんお まつもとが、好きだと言うことだ」

 「まあ、嫌いじゃないな」

 「俺と、どっちが好き?」

 「うざい彼女か!!」

 「俺もイケメンに生まれたかったわ」

 「全ての生き物は、配られたカードで勝負するしか無いんだよ」


 その言葉は真理であるように感じられた。


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