ギャルとオタク、アイドルと自分の比較について話し合う
ギャルが、松本潤男が、好きだと言うことを、頭の中で反芻していた。
いくら咀嚼しても、牛が食べる草のように体に吸収されていくわけもなく、体は考えることを拒んでいるとすら感じる。
俺はかっこよくない、自分の容姿を客観的に把握している。
ギャルと出会ってすらいない松本潤男の好感度が高いのはその容姿、その人気、認知度からくるものなのだろう。
俺は松本潤男の容姿を誉めることが出来ない、ギャルと共感したくない。それは、嫉妬心であり、プライドであり、もしカッコいいと誉めようものなら、なぜ自分は違うのだと自虐してしまうのだ。
他人を評価していいのは他人に評価されても傷つかない平均点以上を叩き出せる人間だけ。他人に評価されたとき傷つくとわかっている人間は他人を評価しないし、表舞台にそもそも立たない。
俺も表舞台に立たないつもりだった。
だけれど、彼女の開く舞台があるとしたら、ライバルと凌ぎを削り頂点に立ちたいといつも思っている。
とんだライバルが現れたもんだ、俺は国民的アイドルに勝てるのだろうか? とギャルに直接聞いてみると彼女は笑いながら答えた。
「嫉妬心ヤバイな、アイドルなんて空想みたいなもんだからそこまで深く考えなくてよくね?」
「考えなくて良いかどうかは、論点が違う。今考えてほしいのは俺か、アイドルどちらが好感度上かと言う話だ」
「男はバカだね、何でも競いあって」
ギャルはやれやれといった調子で両手を上げた。
「そりゃ、顔の好みはアイドルさ、それは紛れもない事実だよ」
「やはりそうなのか」とオタクは事実を受け止めた、心に苦いものが残る。
「だけどな」とギャルはオタクの頭をクシャクシャ撫でながら、
「オタクと培ってきた時間や君の性格、色々なものを考慮したら勿論オタクだよ 」と笑った。
「じゃあ、仮にアイドルが同条件な場合は、アイドルが勝つと言うことか?」
「そんな、空想の話は無いんだから考えなくて良いだろ、ばーか」
「俺は、空想の中でも同じ結果が欲しいんだ」
「めっちゃ強欲だな」
「答えてくれ」
「そうだな、じゃあ逆に聞くけど、どういう答えでオタクは納得するんだよ、満足するんだよ」
オタクはその返答を聞いて自分がどんな答えが帰ってきても納得できないと悟った。
仮に、オタクを選ぶと言ったら、嘘だと相手の言葉を否定し、もし、アイドルだと言ったら、やっぱりかと傷ついていたのだ。
ギャルはそれに気づいて答えなかったのだろう。
「すまない、無駄なことを聞いてしまったようだ」
「オタクさんやい、自分に劣等感があるのは皆同じだ、私だってある、だけど比べたってしょうがないのだよ。それなら好きなように自分が思うように生きたらいいと思わないか? 私は縛られるのが嫌いさ、校則とか色んなものにな、だからギャルって言われるんだろうな。それを嫌だと思ったことはない、何故なら他人の意見なんて、どうでも良いから」
「俺だって、割りと自由に生きてる方だと思うのだが」
「そう思うよ、だから私達は仲良くできてるんだろ。今さら他人の意見なんて気にするなよ」
「ギャルの意見は気になるよ」
「弱くなったな、オタク……昔より」
「そうかもな、……でも今の自分も嫌いじゃないよ」
「オタクの直球な所、私も割りと好きだぜ」
「ありがとう」




