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ギャルとオタク、一歩踏み込んでみる。ハグをする。

 生徒指導室から退出し、オタクとギャルは顔を見合わせた。

 「オタク、これからどうするよ」と、ギャルは少し微笑みながら言う。

 オタクにとってそれは、待っていたものだった。これから二人でどうしようか話し合う。一人で抱えず誰かに話せるだけで心は軽くなる。ギャルの心が軽くなったと俺が思えたことが、励みになった。


 「取りあえず、誰の手引きで校則が変更したのか、調べるところからだな。きっと学校が無視できないくらい偉い人だと思う」

 「そうだよな、学校内で、親に影響力がある学生を調べる必要があるよね、友達に聞いてみるよ。今は私孤立してるけど、服装を校則に沿わせれば、皆協力してくれると思うし」と、ギャルは寂しそうな笑顔を浮かべた。

 「そうか、校則に沿わせるのか、俺はその恰好好きだけどな」

 「そうか、見納めだから、しっかり見とけよ」

 彼女はそう言って左足を軸に、くるりと回る。

 オタクは顎を引いて、ギャルを眺める。


 「スカートが遠心力で浮き上がり見えた健康的な太ももが目に毒だ。いや、目の良薬だろうか。あの瞬間俺の視力は確実に5.0以上あった。これは良薬だろう。

 腰の曲線、胸の曲線、真っすぐと力みなく伸びた背筋は、思はず踏んでくださいと言いたくなるような女王感がある。

 茶髪でセミロングの艶やかな髪の毛は、テントウムシの背中の光沢を想像させるほど美しかった」


 「おいおい、褒め言葉が独特すぎだろ、変態とドMと虫好きな奴がそこに隠れてるぞ。そしてな、私の美しい髪、天使の輪ちゃんを、テントウムシの背中の光沢で例えるなよ」

 ギャルと久しぶりにテンポの良い会話が出来て、こんなにも楽しい。彼女の突っ込みが心地良い。

 「えっ、声出てた?」と、オタクは返す。

 「なにキョトンとした顔してんだよ、わざとらしい」

 「本当の見納めになるときまで、褒め言葉は取ってあるんだよ」

 「オタクのくせに、キザなセリフはきやがって」

 「オタクだからだろ」 


 オタクは、ハッと目を見開き、手を叩いて「思い出した」と、言った。

 「何を思い出したんだよ」

 「生徒指導室出たらイチャイチャするって約束したじゃん」

 「いや、してないよ」

 「えっ」とオタクは呟き、顎を手で触りながら、「それはおかしいと、俺の記憶では……もしかして、また世界線が変わっているのか!!」と言った。

 「オタクさん、オタクさん、パラレルワールドってやつですか?」

 ニヤニヤしながら、ギャルは質問する。

 うむっと、オタクは声を出してから、

 「ギャル……それ以上聞かない方がいい、そうしないと最悪……世界が……」と悲しい声を漏らす。

 「何てこと、オタクさん、私に出来ることありますか」と、慌てた調子でギャルが言った。

 何てノリの、良い女の子だろうか。

 「俺とイチャイチャすること、それを形だけでも行うことで世界線は安定する」

 オタクは腕を広げて、目をつぶり、

 「さぁ、ハグしよう、来るんだギャル」と、大きめの声を出す。


 次の瞬間の柔らい感触に、橘の匂いの香しさにオタクはビックリした。本当にハグされたのである。

 腕はオタクの背中まで回り、胸も当たっている。驚きすぎて感触がわからない。

 いつもならセクハラすんなとか、殴られるとか、そういうオチの付き方で終わるはずだ。

 しかし、実際にはギュッと、強めにハグをされ、完全に固まるオタク。

 ギャルが、オタクの肩に顔を押し付けてるため、表情が伺えないが、耳元が真っ赤になってることはわかった。


 鳥の鳴き声が聞こえる。

 風の吹き抜ける感触が分かる。

 接触部分は少しだけ汗ばんで湿っていくような気がした。


 ギャルは耳元で「色々ありがと」と囁いた。凄くくすぐったくて、だけどやめてほしくなかった。

 その後、スッと離れて、顔の前で腕を交差させながら、走り去っていった。除き見える顔が赤いことが、嬉しく、だけれど……

 

 まだ、何も解決できてない事が……悔しかった。

 

 ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆  ◆◆◆◆◆


 家に帰り、部屋の片付けをしながら頭の片付けをする。

 「どうしたもんかな」と、独り言をもらす。


 例えば、権力のある親、PTAの会長とか、議員とかが見つかり、そういう人間の圧力のせいで、校則が変わっていたと仮定する。


 見つけられると、説得できるは別だ。理由がわかっても、説得できない場合もある。法律や政治を抜本的に変えようと思ったら自分で作る立場になるしかない。


 考えが混濁してきた為、気分を変えて、甘い飲み物を作ることにした。

 ココアビンの蓋を開ける。カカオの香りと、砂糖の香り、これが混沌としたものがココアの香りになる。

 うん素晴らしくいい匂いだ。同じカカオ豆なのにチョコレートは少し匂いが違うことをふと不思議に思う。

 同じものなのに調理方法、混ぜるものを変えると違うものになる。料理とは不思議であるな。

 俺自身を料理して、違うものに変えてしまうのも悪くないと、思いついた。


 「生徒会長になるか」

 自分で言ってみて、悪くないアイデアだと気づく。

 オタクは同時平行で、計画を進めることにして、教科書を広げ勉強を始めた。


感想貰えると嬉しいです。

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