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ギャルとオタク校則について話し合う⑥

 朝のホームルームに向かう途中で、ゲームをしている生徒、制服を着崩している生徒が目に入った。

 窓の外から、問題児が二人に増えていることを確認した先生は、とても大きなため息をついた。


 ……なんで私の受け持つクラスに、モンスター生徒が二人もいるんだ。


 そう思って悲しむのが普通な筈なのに、面白い、興味深い、校則に従わない者が、一人だけにならなくて良かったと、思っている自分が心の中にいることに気が付いた。

 教室のドアを開け、オタクに向けて先生は、

 「ゲームをしているもの、今すぐゲームを止めて、こちらに持ってきてください。それと、ピアスをしてるもの、外して持ってきなさい」と言った。


 オタクは視線を先生に向け、瞳で言葉を話すように話しかける。

 「まだ、ホームルームまで時間があるはずです、自由な時間にゲームをしてはいけない理由は無いと思うのですけど?」

 

 先生は深いため息して、思考を巡らす。

 はぁ、何で私の受け持つクラスに、強めの自由主義者が二人もいるのだ。そう思って苦笑いする。

 この二人を理屈で、説得するのは不可能である。

 回りに迷惑を掛けない限り、人間は何をしても基本的には良いのだから。

 こいつらは、自分の意思で行動できる人間だ。それは必要なことだけど、学校では上に従うという、ルールを守ることを教えないといけない。矛盾だ。


 なんとか上手く、導いてやりたいと、本気で思う。

 しかし、職員として、注意しなければならない。

 「集団に属するならルールは守れ」

 先生がそう言った後オタクは、

 「先生、話があるので後でお時間頂けませんか?」と、返した。

 鐘の音が校舎に鳴り響く。


 「わかった、放課後生徒指導室に来なさい」

 そういい終えると、

 先生は朝のホームルームを始めた。


■★●●●●●●●●●●


 「おい、オタク、何か考えでもあるのか?」

 後ろを振り向き、ギャルがオタクに話しかける。

 「考えというか、確認したいことがあるんだ」

 「何を確認したいんだよ」

 「聞きたい?」

 「聞きたい」

 「どうしよっかなー」

 「うざっ、早く答えろよ」

 オタクは真面目な顔になり、

 「何で校則がいきなり変更されたのか知りたい」と、言った。

 「何でって、校外からの苦情だって先生言ってたじゃんか」

 「そこだよ、おかしいとか思わないか?」

 ギャルは顎を手で擦りながら、少し眉間にシワを寄せて考える。

 「確かにおかしいな、この学校はそもそも自由な校風で運営していた。昔から校外の苦情くらいあったはずだものな。何でいきなり、校風変えるほど、苦情を真摯に受け止めたのか? そこだな」


 「そう、そこの理由を取り敢えず知ろうと思ってな」

 「理由が解れば、校則を変える糸口が見つかると」

 「可能性はあると思ってる」

 



「俺の名はスコール、恵みをもたらすもの!!」

 オタクは生徒指導室に入ると同時に叫ぶ。

 顔を上に向け、腕を広げている。


 「おい、オタク、恥ずかしいことしてんじゃねえよ」と、笑いながらギャルが言う。


 先に生徒指導室に居た先生は、無表情である。


 「オタク君、冗談はほどほどにして、話をちゃんとしましょう」

 「そうですね、僕も暇じゃないですし」

 オタクは真剣な表情で答える。

 「さっきあんなに、はしゃいでたのに、そんなに急に真剣になれるもんなの? 」とギャルは、戸惑いの声を上げた。


 机をはさみ、オタクと先生が対面、ギャルはオタクの横に座った。

 

 先生は眼鏡を人差し指で少し上げて話し始める。

 「オタク君、話を」

 「先生、校則が変わった理由は何ですか?」

 「理由ねえ、前に話した通り苦情だ」

 「なるほど、その苦情は。近隣住民苦情ですか?」

 ギャルがオタクのわき腹を突く。オタクはギャルの手を握って、

 「ギャル、イチャイチャしたいのはわかるが、それは後のお楽しみにしよう」

 ギャルは汚いものを触った後のように手を払う。

 「予想をはるかに超える気持ち悪い言葉返ってきた、後でもやらないし違う。まどろっこしいことするのやめようぜ」

 ギャルは口角を悪そうにあげて、

 「なあ、先生、苦情を言ってきたやつは誰なんですか?」

 ふふっと、先生は笑って、真顔になり、

 「君たちは、それを知ってどうするのですか? 闇討ちでもするのですか?」

 「いやいや、とんでもない、その堅実な姿勢をご教授してもらおうかと思いましてね」と、オタクは返す。

 「あらあら、言葉は人を表すといいますが、君たちは真逆を行ってますね、普段の素行からは考えられない発言だ」

 「真逆だからこそ、わからないから、知ろうとするのが人間じゃないですか?」

 「結論から言わしていただくと、誰かをいうことは出来ない」

 「そうですか、この学校の親御さんとかですかね?」

 ここで、オタクは注意深く先生を観察する。体は口よりよく話すからだ。

 先生は、「それは言えませんねぇ」と言った。

 「はっ、なんで言えないの? 正しいこと言ってるなら、表に出て良いだろうがよ」と怒り口調でギャルは話す。

 「個人情報ですから」と先生は言い切る。

 「先生としっかり話し合おうとした、君たちに免じてもう一つ教えてあげましょう、苦情の内容に違いは無いが、その人の言葉で校則が変わったということです」

 オタクは、目を丸くして頷き、「わかりました、ありがとうございます」と言って生徒指導室から出ようとするが、先生に呼び止められる。

 「オタク君、ギャル君、最後に一つだけ」と一白置き、


 「君たちの行動が表現したいことは先生もわかっているつもりです。本質的にはそれが正しいと思っています。 だけどね……何かを変えたいなら、抜本的に物事を変える瞬間のために、小さな小競り合いで体力を消費するのはやめなさい」

 と、語った。

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