ギャルとオタク校則について話し合う⑥
朝のホームルームに向かう途中で、ゲームをしている生徒、制服を着崩している生徒が目に入った。
窓の外から、問題児が二人に増えていることを確認した先生は、とても大きなため息をついた。
……なんで私の受け持つクラスに、モンスター生徒が二人もいるんだ。
そう思って悲しむのが普通な筈なのに、面白い、興味深い、校則に従わない者が、一人だけにならなくて良かったと、思っている自分が心の中にいることに気が付いた。
教室のドアを開け、オタクに向けて先生は、
「ゲームをしているもの、今すぐゲームを止めて、こちらに持ってきてください。それと、ピアスをしてるもの、外して持ってきなさい」と言った。
オタクは視線を先生に向け、瞳で言葉を話すように話しかける。
「まだ、ホームルームまで時間があるはずです、自由な時間にゲームをしてはいけない理由は無いと思うのですけど?」
先生は深いため息して、思考を巡らす。
はぁ、何で私の受け持つクラスに、強めの自由主義者が二人もいるのだ。そう思って苦笑いする。
この二人を理屈で、説得するのは不可能である。
回りに迷惑を掛けない限り、人間は何をしても基本的には良いのだから。
こいつらは、自分の意思で行動できる人間だ。それは必要なことだけど、学校では上に従うという、ルールを守ることを教えないといけない。矛盾だ。
なんとか上手く、導いてやりたいと、本気で思う。
しかし、職員として、注意しなければならない。
「集団に属するならルールは守れ」
先生がそう言った後オタクは、
「先生、話があるので後でお時間頂けませんか?」と、返した。
鐘の音が校舎に鳴り響く。
「わかった、放課後生徒指導室に来なさい」
そういい終えると、
先生は朝のホームルームを始めた。
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「おい、オタク、何か考えでもあるのか?」
後ろを振り向き、ギャルがオタクに話しかける。
「考えというか、確認したいことがあるんだ」
「何を確認したいんだよ」
「聞きたい?」
「聞きたい」
「どうしよっかなー」
「うざっ、早く答えろよ」
オタクは真面目な顔になり、
「何で校則がいきなり変更されたのか知りたい」と、言った。
「何でって、校外からの苦情だって先生言ってたじゃんか」
「そこだよ、おかしいとか思わないか?」
ギャルは顎を手で擦りながら、少し眉間にシワを寄せて考える。
「確かにおかしいな、この学校はそもそも自由な校風で運営していた。昔から校外の苦情くらいあったはずだものな。何でいきなり、校風変えるほど、苦情を真摯に受け止めたのか? そこだな」
「そう、そこの理由を取り敢えず知ろうと思ってな」
「理由が解れば、校則を変える糸口が見つかると」
「可能性はあると思ってる」
「俺の名はスコール、恵みをもたらすもの!!」
オタクは生徒指導室に入ると同時に叫ぶ。
顔を上に向け、腕を広げている。
「おい、オタク、恥ずかしいことしてんじゃねえよ」と、笑いながらギャルが言う。
先に生徒指導室に居た先生は、無表情である。
「オタク君、冗談はほどほどにして、話をちゃんとしましょう」
「そうですね、僕も暇じゃないですし」
オタクは真剣な表情で答える。
「さっきあんなに、はしゃいでたのに、そんなに急に真剣になれるもんなの? 」とギャルは、戸惑いの声を上げた。
机をはさみ、オタクと先生が対面、ギャルはオタクの横に座った。
先生は眼鏡を人差し指で少し上げて話し始める。
「オタク君、話を」
「先生、校則が変わった理由は何ですか?」
「理由ねえ、前に話した通り苦情だ」
「なるほど、その苦情は。近隣住民苦情ですか?」
ギャルがオタクのわき腹を突く。オタクはギャルの手を握って、
「ギャル、イチャイチャしたいのはわかるが、それは後のお楽しみにしよう」
ギャルは汚いものを触った後のように手を払う。
「予想をはるかに超える気持ち悪い言葉返ってきた、後でもやらないし違う。まどろっこしいことするのやめようぜ」
ギャルは口角を悪そうにあげて、
「なあ、先生、苦情を言ってきたやつは誰なんですか?」
ふふっと、先生は笑って、真顔になり、
「君たちは、それを知ってどうするのですか? 闇討ちでもするのですか?」
「いやいや、とんでもない、その堅実な姿勢をご教授してもらおうかと思いましてね」と、オタクは返す。
「あらあら、言葉は人を表すといいますが、君たちは真逆を行ってますね、普段の素行からは考えられない発言だ」
「真逆だからこそ、わからないから、知ろうとするのが人間じゃないですか?」
「結論から言わしていただくと、誰かをいうことは出来ない」
「そうですか、この学校の親御さんとかですかね?」
ここで、オタクは注意深く先生を観察する。体は口よりよく話すからだ。
先生は、「それは言えませんねぇ」と言った。
「はっ、なんで言えないの? 正しいこと言ってるなら、表に出て良いだろうがよ」と怒り口調でギャルは話す。
「個人情報ですから」と先生は言い切る。
「先生としっかり話し合おうとした、君たちに免じてもう一つ教えてあげましょう、苦情の内容に違いは無いが、その人の言葉で校則が変わったということです」
オタクは、目を丸くして頷き、「わかりました、ありがとうございます」と言って生徒指導室から出ようとするが、先生に呼び止められる。
「オタク君、ギャル君、最後に一つだけ」と一白置き、
「君たちの行動が表現したいことは先生もわかっているつもりです。本質的にはそれが正しいと思っています。 だけどね……何かを変えたいなら、抜本的に物事を変える瞬間のために、小さな小競り合いで体力を消費するのはやめなさい」
と、語った。
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