第38話 オーブ奪取作戦
あれから、更に一日がたった。
現在、別荘のある一室に、お馴染みの面々が集まっている。
「……よくぞ生き残った我が精鋭たちよ」
いや、違うから。
ミサキのボケを軽くスルーし、話し合いを始めさせてもらう。
「集まってくれてありがとう。実は俺では解決策が思いつかない事柄があって…。何か良い案があったら教えて欲しい」
俺は事の顛末を皆に話した。
皆が理解したところで話し合いが開始される。
先ず口火を切ったのはユニ助だ。
「高貴な我の正体を話せば良いのではないか? 村人たちは喜んでそのオーブとやらを捧げてくれるだろう」
「「「………………」」」
的はずれな意見だが、本人はいたって真剣そのものである。
当たり障りなく流しておこうと思った所で、ミサキが一言呟く。
「……ユニ助、ハウス」
「我は犬か!!」
ユニ助が激高する。
「ハウス、ハウス〜♪」
意味がわかっているのかいないのか、ミウがさらにからかう。
せっかく設けたこの場を壊したくないので、俺は騒ぎが大きくなる前に止めに入る。
「はい、ストップ。ミウもミサキもからかわない。ユニ助も真剣に考えてくれているんだから…」
「では、我の意見が採用されるのか?」
ユニ助がキラキラと期待に満ちた目で俺を見つめてくる。
「いや、当然却下で」
ごめん、それ無理。
その言葉に消沈したユニ助をとりあえず放置しつつ、他の人達の意見を求める。
すると、ミサキが淡々と語りだす。
「……すり替えれば良い。元々は作物が育たなかった土壌かもしれないが、現在の土は充分に育っている。豊作は無くなるかもしれないが、田畑が枯れることはないはず…」
なるほど、そうするともう一度、今度こそは気づかれずに潜入が必要だな。
似たような代わりの玉も必要になるわけか。
とりあえずこの意見は保留にしておこう。
「では、儂の意見はどうかな?」
続いてゴランが意見を述べる。
その意見はリスクはあるが、村人には一番気づかれない気がした。
ゴランたちには少々危険が伴ってしまうが…。
「なあに、構わんさ。儂らが受けた恩に比べたら安いもんよ。心配するな」
そうか、ならば悪いがお言葉な甘えさせてもらおう。
なるべく早めに切り上げれば危険は少ないはずだ。
俺はゴランの意見を採用することにした。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
今にも空から星が降ってきそうな満天の星空。
現代の大都会では決して見られない光景の下、今日も何人かの見張りが村の周りを警戒する。
「暇だなぁ〜」
男は、暇こそが見張りの幸せだということを分かっていないのか、退屈そうにスクレ村の外周に沿って巡回する。
その男は、前回の巨人騒ぎの時はたまたま村を出払っていたため、あとからその話を聞いていても実感がわかなかった。
そんな騒ぎは何年かに1回有るか無いか、俺には関係ない。
今まで平和だった村の育ちだ、そう思うのは仕方ないだろう。
しかし、その甘い予想は覆されることになる。
突如その男の目の前に現れたのはオーク。
声を出す暇もなく、その男はオークの大きな拳により昏睡させられる。
オークは気絶したその男には目もくれず、村に入口へと向かった。
その後ろに付き従うのは、およそ30匹のオーク。
今、スクレ村は岩の巨人以来の早すぎる危機を再度迎えることとなる。
ウオオオオオオッッッ!!
村の入り口を突破し、オークが雄叫びを上げた。
その叫び声により、見張り以外の村の人々は何者かの襲来を知ることとなる。
剣や農具を持った村人たちが村の入口に集結する。
今、村人とオークの戦いの火蓋が切って落とされた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ウオオオオオオッッッ!!
ゴランの雄叫びとも言うべき叫びを、俺は村の建物の影で聞く。
ある村人は武器を持ってオークに向かい、また、ある村人は子供を連れて村の奥へと非難する。
必然的に村の中心部分、例のオーブの在り所の周りには人が減ることになる。
ミサキの魔法で意識が薄くなった見張りを背後から打撃で昏睡させ、俺たちは地下道へと飛び込む。
「ミサキ、急ぐぞ。ミウやオークたちが心配だ」
そう、治癒魔法が使えるミウはオークたちと供に行動している。
ミウは最初、俺と離れたがらなかったが、オークたちに万一のことがないようにと必要性を訴え説得、なんとか別行動に納得して貰えた。
だが、離れたくないのは俺も一緒である。
万一のことを考えると、1分1秒でも早く終わらせたかった。
「……カナタ、焦っては駄目。失敗の元。ミウなら心配ない」
ミサキの助言に少し冷静になり、俺はかつて知ったる地下道を通り、オーブのある場所へと向かった。
思ったよりも早く、例の社に到着した。
俺は小さい開き戸を開け、オーブを取り出し小袋の中へ放り込む。
「ウィンドカッター」
ドカカカッ!
風の刃で社を引き裂きつつ壊す。
オークが壊したように見えるだろうか?
多少不安を抱きつつ、俺たちは出口へと駆け出していった。
ようやく出口に辿り着き、周りを警戒しつつ脱出、地上へと降り立つ。
ここまでは誰にも見つかっていない。
俺たちは慎重に物陰から物陰へと移動、柵を乗り越え外への脱出に成功する。
村から少し離れたところで、打ち上げ花火をイメージしたライトの魔法を打ち上げる。
空は一瞬、昼間のように明るくなる。もちろんこれはオークたちへの引き上げの相図だ。
俺は遠目でオークたちの引き上げを確認してから、自分たちも計画通りに落ち合う場所へと向かっていった。
「ガハハハッ! 儂の活躍をカナタにも見せたかったわい」
ゴランが嬉しそうに笑っている。
村人たちは無事なんだろうね? ちょっと心配になってきた。
「心配ありません、手加減はしてあります。怪我はすれど重傷はいないはずです」
若いオークが答えてくれた。
ちなみに、オークたちはというと、現在特に怪我人はいない。
戦闘直後には何人かはいたが、ミウの治療によって治ってしまっている。
もともと大した怪我では無かったとのことだが――。
ただの村人にオークの相手は難しい、その事が改めて分かる。
どうやら心配しすぎだったのかもしれない。
「ミウも頑張ったよ!」
俺の腕の中でミウがアピールする。
「ああ、頑張ったな」
いつものように頭を撫でてあげる。
ミウが気持ちよさそうに目を細めるさまに癒されつつ、俺は今後について考える。
このオーブをどうするか?
すぐには結論が出なそうだったので、ひとまず考えることをやめ、俺は皆と供に別荘へと戻っていった。
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