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第37話 村の宝

 巨人との戦いから1日が過ぎ、俺は再度スクレの村を訪れている。

 いや、訪れているのではなく、潜入と言ったほうがいいだろう。

 静寂が辺りを支配する中、月明かりだけを頼りに、建物の影から影へと移動をしていく。

 目指すは例の地下階段、俺はどうしてもあのコデビルが何を狙っていたのか知りたかった。

 村の人間があそこまで秘密にしているものが何なのか?

 この村だけに関わるモノならば、放っておくのも致し方ない。

 だが、嫌な予感がする。

 この異世界に来てからというもの、俺の感は結構当たっている。

 ただの取り越し苦労なら良いが……。




 巨人の破壊をくぐり抜けた建物が、まばらに存在している。

 それらに身を隠しながら移動を続ける。

 人気はほとんど無く、思ったよりすんなりと例の穴の見える位置までたどり着く。

 松明の光に照らされた見張りが2名、入り口の左右に仁王像のように立っている。

 侵入口は1つのみ、その目を掻い(くぐ)って侵入するのは難しそうだ。


さて、どうするか?


「……無問題」


 後ろからついて来ていたミサキが呟く。何やら案があるようだ。


「……スリープ」


 怪しい紫色の(もや)が、見張りの周囲に発生する。

 見張りの村人は、次第にうつらうつらと船を漕ぎ出し、しばらくするとその場に崩れ落ちた。


「……成功」


 ミサキがドヤ顔で俺を見てくる。


はい、流石です。


 俺が素直に言葉に出して褒めると、ミサキは照れたように「……当然」とそっぽを向く。なるほど。今までやられっぱなしだったが、ミサキ攻略の糸口が見えた気がした。

 ちなみに、この魔法は気を張っている者にはほとんど効かないとのこと。

 戦闘中にでも効けば便利だと思ったんだが、残念。

 とにかく邪魔な見張りは排除できた。

 早速、俺たちは地下の階段を下りていった。




「暗いな」


 俺がそう言うと、ミウがライトの魔法で内部を照らしてくれた。良く出来た相棒である。

 視界がはっきりしたところで、辺りを確認する。

 視線の先には人工的に掘られた地下道が、奥へと続いている。特に分岐はなく1本道だ。

 俺たちはその1本道を1歩1歩慎重に奥へと進んでいく。





 そのまましばらく歩いていくと、進むべき道が途切れてしまった。


「カナタ、行き止まりだよ?」


 ミウが「どうするの?」といった風に聞いてくる。


「いや、何かあるはずだ。もう少し探してみよう」


 そうでなければ村人の態度の説明がつかない。

 俺は壁や床を丹念に調べていく。

 すると、見るからに怪しげな岩が壁に出っ張っているのを発見する。

 俺は、その岩がどうにか動かないものかといろいろ試してみた。

 岩に下方向の力を加えたその時、それがレバーのように下に下がる。


ガコン!


ゴゴゴゴゴゴ…


 天の岩戸が開いたかのように正面の壁が動き、入り口が現れる。

 覗いてみると、まだ奥へと続いているようだ。


「よし、行こう!」


 2人に声をかけ、俺たちはさらに奥へと向かっていった。








 そしてまた行き止まりに到達。

 だが、先程と違うところは小さな社が目の前にあることだ。


 ここが終点かな?


 その小鳥の巣箱より少し大きい程度の社の隙間から、青い光が漏れ出しているのがわかる。

 俺は恐る恐る、その小さな観音開きの扉を開けた。


「ん!? これは?」


 中には水晶のような丸い玉が(まつ)られている。

 その青く光る玉を鑑定してみた。



  青のオーブ


    ???????



 何だかよく分からない鑑定結果だ。

 俺はゆっくりと手をのばし、それに触れてみる。

 特に変化は無いが、何やら暖かい。

 この疲れを癒すような暖かさは、このオーブの力なのだろうか。



ジャリッ



 俺の背後で音がする。

 振り向くと村長を始めとする村の面々が、農具を武器がわりに持ち、こちらを睨みつけている。


「見てしまったか…」


 村長が嘆くように呟く。


「これは何ですか?」


 俺は片手に持っているオーブについて質問する。


「それは私にも分からない。一つだけ言えることは、ほとんど何も育たなかったこの土地に豊作をもたらす、村にとって掛け替えのない宝だということだ。見てしまったのは仕方がない。大人しく渡してくれないか?」


「ですが、昨日の魔物はこれを狙ってきたんですよ! ここにあればまた村が襲われますよ」


 その村長の答えに俺は反論する。


「我々はこれがない生活は考えられんのだよ」


 その後もいろいろ説得を試みるが(らち)があかない、話し合いは平行線である。

 これ以上の説得は難しいと判断し、俺は玉を村長に渡す。

 村長と村人はどこかホッとした表情をしていた。


「この事だが、くれぐれも他言無用にな。まあ大人しく渡してくれたあんたなら大丈夫だと思うが…」


 村長がオーブについて口止めしてくる。

 俺は黙って頷き、村人の間を抜け、地下道の出口へと向かった。





「あぶないのに、何でまだ持ってようとするの?」


 ミウが俺に聞いてくる。


「危険と分かっていても、その便利さを一度知ってしまうとなかなか(・・・・)手放せないものなんだよ」


 ミウは首をかしげる。

 どうやら、その心理が理解できないみたいだ。

 俺は黙ってミウの頭を撫でてあげた。





 さて、魔物の狙いがあのオーブなのは、ほぼ間違いないいだろう。

 だが、村の人が手放さないとなると…、どうするか?

 まさか1日中見張っているわけにも行くまい。

 地下まで潜入したのは良いが、結局オーブを見ただけで終わってしまった。

 おそらく再度、あのオーブを狙ってくるだろう。

 何か解決策はないものか……。

 1日中頭を悩ませたが、結局良い解決策は見当たらなかった。



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