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バトルファイル  作者: クバ


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バトルファイル 005-1 VS新フレーム


ロックコロニー。入港管理局小型船用出口。


サングラスの職員が、申請書の表示された端末を手に小型船の荷台船倉を覗き込む。

トラックコンテナがピッタリ四本入る大きさの積荷空間には、宇宙空間用ワーカーがニ機ベルトで固定されている。


職員

「c556宙域で採取?あの辺りはもう残って無いって聞いてますけど?」

ハンチョウ

「慣らし運転兼ねたお宝探しよ」

職員

「ご存知だと思いますが、採取した資源は正確に……」

ハンチョウ

「はいはい、ご存知よ」


慣れた様子のハンチョウと、キョドらないように狸寝入りしていたラルズ、データモニタリングを担当する整備士サトウの三人を乗せた小型船は、特に注意を引く事もなく入管をパスしてコロニー外へと出てゆく。


c556宙域は入域料を払って資源採取出来る浮岩群だが、権利者が掘り尽くし、一般開放されてからも数年が経ち、もはや誰も行かなくなった絞りカスな宙域である。


人目が無く視界が悪く、宙域に浮遊する大小の浮岩には変則的な機動を強制される。まさに模擬戦にはうってつけの穴場である。




船倉から滑るようにゆっくりと、ハンチョウ搭乗の一号機とラルズの二号機が、浮岩漂う宇宙空間に出る。

船倉に固定されていた時にカバーされていた手首部分には、センサーカメラユニットが差し込まている。これが火器の代わりに命中やダメージをシミュレートしてくれる。


サトウ

「ブースター装着準備。データ不足で自動は無理だから慎重にねー」


小型船の四角い船体。その上下左右に設置されているブースター。それは海賊に揶揄されたロケットワーカーの、けつにぶっ刺さっていたロケットと同型の物だった。

ロックが外れて弱々しいアームが小型船から少しだけブースターを遠ざける。このブースターを宇宙用ワーカーの重心である腰に接続する事で、人型機動兵器になるのである。


ラルズ

「おっつ!!ちょっと!!これは」


ポスチェスラスターが光る度に、二号機は大きく体勢を崩し、引っ張られた安全帯は小型船の姿勢すら狂わせる。


模擬戦開催が決まってから五時間。申請やら積み込みやらの時間の全てを、ラルズはシミュレーターにあてた。プリーニオの戦闘ログを見て唸り、エースのログを見てその異常な機動に改めて呆れる。

十分とは言えないものの目一杯の準備はしたのだが、「7%アップはもう別物」とのハンチョウの言葉が脳裏に響く。


ハンチョウ

「キックが強すぎね。別モードを作れる?」

サトウ

「チューニングモードを新設。ビーム出力を下げて、相対位置のスラスターを73にしてスラスト距離調整……っと」


小型船の操縦席で物凄い速さでコードを書く小太り黒縁メガネの整備士サトウ。彼もまたハンチョウの言うエンジニア兼アーティストだった。


サトウ

「上書き完了。加減しながらやってみてー」


操縦席で左手のポスチェグリップを慎重に右に捻り、前に押し出すラルズ。


両肩と足首のレフ板が煌めき、機体は二十度右を向いて静止、滑らかに前進を開始してブースター先端に移動した。


ラルズ

「おお!同じ機体とは思えない滑らかさ!エンジニアって凄いんですね!魔法じゃないですか!」


魔法使い呼ばわりされて気分が良かったのか、サトウはニヤリと口角を上げてキラーンと眼鏡を直した。


ハンチョウ

「位置調整はカメラで確認できるわね?装着したら燃料撹拌と点火チェック」

ラルズ

「……チェックっと」

ハンチョウ

「ラルズちゃんは、ソフト上書きの方がAIの自習より早いと思ったらいつでも中止信号を出して。サトウ君対応よろしくね」

サトウ

「りょうかいー。こっちは止めないで随時上書き入れてくからー」


ワーカーのケツにロケットがぶっ刺さったお馴染みのスタイルになった人型機動兵器タイプKENフレーム。

ハンチョウとラルズが搭乗する二機は、ブースターを噴射させると、連れ立って小型船から離れて行った。


小型船の窓の中。小さくなる二つの光点を見送るサトウは、通信パネルのスイッチを押してボリュームレベルを上げる。


サトウ

「いるか?」


しばしの沈黙の後、我慢出来ないとばかりの、前のめりな声が返ってくる。


通信

「まってたぜーー!!留守番以外は全員いるぜ!艦橋からのモニターも切ってきた!」


通信から流れる複数名の声。期待に溢れた顔がモニターにひしめく。


通信

「間違っても盗聴されるなよお」

サトウ

「僕の作った暗号コードは相当に手強いよー。もし破れるヤツがいるとしたらそれは……僕だけだね」

通信

「かっこつけてんじゃねえよ!実況はよ!」


コホン。と小さく咳払いをして、サトウは骨董品のマイクをコンソール前に置いた。

そのマイクは、後に「世紀の凡戦」と言われた、西暦1976年のボクシング世界ヘビー級チャンピオンと極東プロレスラーの真剣勝負にて、実況船橋慶一が使用したマイク。

そのレプリカだという。価値は不明である。


サトウ

「さぁ待たせたなぁオマエラ!間もなく始まる新型フレームを使っての模擬戦!今回のパイロットは整備班の神、実はパイロットとしての腕前も並じゃない。ハンチョウーー!」


通信

「ハンチョウ!ハンチョウ!」


サトウ

「対するは!ヒュウガのニューフェイス!奇跡のシェイク耐性を持つ航海士!シミュレーターの成果を見せられるか!二号機ナビ、ラルズーー!」


通信

「ド・リ・ル!ド・リ・ル!」


ラルズは、先日プリーニオと共同で出した企画書ドリルパンチが整備班の間でバカウケており、密かにドリルと呼ばれていた。


すん。とテンションを下げたサトウ。通信スイッチを切り替える。


サトウ

「モニター感度良好。ルートチューブ、アップロードスタンバイ」


ハンチョウ

「ラルズ、ダウンロードされたルートを早く抜ける勝負よ。途中のCGデコイを5秒以上ロックオンするのよ」

ラルズ

「まずこれで、機体制御に慣れろってことですね」


人型機動兵器の全天モニター内。ダウンロードのシークバーが伸び、カウントダウンが始まる。


サトウ

「さぁ!オマエラ!始まるぜ始まるぜ!戦闘AIの事前予想はハンチョウ勝利87%!ラルズは良いところを、可能性を見せられるか!」

「ファーストラウンドルートチューブ。2.1.スタートだあ!」



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