バトルファイル 003-2 VS手指
戦闘は数分で決着した。割とあっけなく。
先ほど占領し、拿捕曳航中の海賊船。
偵察かなにかで母船を離れた宇宙機が迷子になり、船を見つけて近づいて見たら母船が曳航されていた。逆上して突撃するも敢え無く返り討ち。
通信ログから読み解く状況判断はそんな感じだった。そして帰還シークエンスからの整備固定。楽勝ムードの倉庫、キャビンのドアが開く。
プリーニオはキャビンから左腕に降り、二の腕に差し込まれ固定された実弾銃を足元に見下ろして大きくため息をついた。
プリーニオ
「ロボの手が……俺のロボットパンチが……」
ハンチョウ
「ほら!命中率が4%も上がってる!」
エース
「4%はエグいな。こっちの機体も直付けにして貰おう。反動が少ないビームでも効果はあるのか?」
がっくりと肩を落とすプリーニオをよそに、戦闘AIと同期した端末で戦闘データを確認し、直付けで向上したスコアで盛り上がる整備士達。
後部座席で整備モードへの変更をしながら、キャビンの分厚いガラス越しにプリーニオを気遣う視線を向けていた新入りは、キャビンを出てプリーニオの隣に降りた。
新入り
「プリーニオさん。しょうがないですよ明確にデータに現れた……って何で泣いてるんですか!?泣くほどです??」
プリーニオ
「俺のロボットパンチがぁ」
気の利いた言葉と一緒に肩にポンと手を乗せようとした新入りだったが、良い言葉が見つからず右手は宙に浮いたまま。
新入りから見れば、普段女性の前でのちょいワルオヤジ気取りがややウザいプリーニオ。
だが重複雇用になってしまった航海士職で、一応の勝負の場を作ってくれたのは彼。そして勝負に敗れ雑務要員の薄給になりそうな時、ナビへの道を提示くれたのもプリーニオ。
面倒見の良いキザな兄貴分。そんな相手に気の利いたセリフの一つも言ってやれない。新入りは自分の経験の薄さを自覚する。
ボン。と右手は肩に置かれた。
新入り
「ドリルです」
何いってんだコイツ顔で振り向くプリーニオ。
新入り
「ドリルの企画書を上げましょう!繊細な作業指じゃなくて、最初から破砕兵器として作ったドリルでパンチするんです!」
プリーニオ
「ドリル……パンチ……。ドリルパンチ!!」
色を失っていたプリーニオの顔に生気が戻る。
振り返ったプリーニオは力強く新入りの両腕を掴む。
プリーニオ
「手伝ってくれ!ドリルパンチだ!俺は企画書とか書いた事ないんだ!一緒に作ってくれるな!?一緒にドリルパンチだ!」
興奮し一人称が俺になったプリーニオ、普段のキザったらしいイケオジの僕は演出が入っているようだった。
ハンチョウ
「あー。あそこ変な化学反応起きてるわ」
端末の「同期率」の表示越しに左腕上の二人を見上げたハンチョウは、愉快そうな顔でそう呟いた。
数日後、二枚の異なる企画書が経営部に届く。
一枚は「挿入固定式基部付き武装と、その装着口としての腕部」
もう一枚は「物理破砕兵器としてのドリル付き腕」
それぞれの企画書に対する返信は「試作中」と「検討中」だった。
プリーニオ
「おい!ラルズ!検討中だってよ!俺達のドリルパンチ!検討中だってよ!」
プリーニオもラルズも知らなかった。
検討中という回答が、企画者のモチベーションを保つ為の優しい嘘である事を。
プリーニオ、ラルズ
「ドリルパーンチ!!」
二人はグータッチならぬ、ドリルパンチタッチでニヤリと笑う。
護衛船ヒュウガはこの日。搭載人型機動兵器の手指を失い、代わりに新しい信頼関係を得た。
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