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バトルファイル  作者: クバ


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20/22

バトルファイル 013-2 VSアップグレード

エース

「ブリッジ。撃墜機確認してくれ。墜とした敵機、後方艦からの小隊であってるか?」


オペレーター

「……はい!確認しました!撃墜済み機は3機とも後方艦から出撃したものです」

エース

「こっちが追ってる機も角がある回避軌道してる。ミスファイアリングスラスター搭載機だと俺も思う」


エースの声に特に抑揚はないが、エース機は周囲を6機に囲まれた状態でドックファイトをしており、どの敵機を追ってる機体と認定しているのかは分からない。

通信にはずっと警報音とメロディの索敵音が乗っおり、並みのパイロットならパニックを起こしてもおかしくない状態の筈だ。


ハンチョウ

「た……確かに残っている敵機に戦闘AIの予測が合ってないわ……サイトウ!!」

整備班サイトウ

「はい!」

ハンチョウ

「今すぐパッチ作成して!敵機想定をHARUフレームデータに書き換え!どの位でできる!?」

ラルズ

「機動性を15%向上させて下さい!手足がない分、軽くて余剰推力あります!」


戦闘中域に追いついたプリーニオ機、ラルズ機が混戦に乱入。

戦闘中域戦力比は6対1から6対3になったが、海賊宇宙機の戦闘AIラーニングが進捗しており、ラルズ機の被弾が目立つようになってきた。


整備班サイトウ

「90秒下さい!それでもそのまま戦うより生存率は22%高いです!」


多数の敵に囲まれた状態だと、回避優先となり対象敵機を継続して追尾できない為、ラーニング効率はなかなか上がらない。

一方の海賊宇宙機は、多数の目でラーニングしている為、データリンクが構築されていた場合、ずっと見られているに等しい速度でラーニングが進捗していることになる。


エース

「お前ら順に帰投してパッチ当ててこい。時間は俺が稼ぐ」

プリーニオ

「かっこつけんな!俺が時間を稼ぐから最大戦力が先にパッチしてきな!」


一人称が俺になったプリーニオ。それだけ余裕がないということだ。

前後上下左右からのGにシェイクされながらの回避運動、おぼつかない戦闘AIの行動予測、それでも少しずつ海賊宇宙機の塗膜を削り、通信をする乱戦中の3機。


デブリから狙撃するハンチョウ機は、ミスファイアリングスラスターの鋭角的な回避軌道と40%の軽量化が生み出す高機動に「今まで敵対した海賊がどんな気持ちで我々の機体と戦っていたか」を実感し、舌打ちを繰り返していた。


エース

「ラルズとハンチョウは半人前。プリーニオは二人乗りから乗り換えたばかりで、後方警戒に穴がある。だから俺が時間を稼ぐ。これ以上議論するよりは集中したい。帰投支援で戦場を移動する。通信切るぞ」

プリーニオ

「よせ!」


直後エースはミスを装ってオープンチャンネルで通信をした。


エース

「敵母船の後ろに回ったか。了解こっちも向かう」


海賊側の反応がどうだったは分からない。だが、ドックファイトしていた6機の宇宙機のうち4機は海賊母船に向かったエース機を追跡。1機は動きを止め、1機は迷ったように散漫とした軌道をとった。


ハンチョウ

「チャンス!」

プリーニオ

「おいおい」


止まった海賊宇宙機はハンチョウ機に狙撃され、ヌルい軌道をした機はプリーニオから実弾とビームを浴びせられ、2つの牡丹が宇宙空間に咲く。


プリーニオ

「サイトウ!」

整備班サイトウ

「もうすぐ完成……着艦シークエンス中にバグ取りしますんで、順次帰投して下さい!」

ラルズ

「ハンチョウさんからどうぞ!」

プリーニオ

「俺から行く!アイツを助けないと!」




護衛対象のシロナガス級オペレーターが口をあんぐりと開けている。

どんな訓練をしたらそんな着艦になるのかと。

通常の着艦シークエンス手順をいくつも飛ばし、最短距離・縦横回転・姿勢制御の全てを同時にこなし、開ききっていないハッチのスキマに手足付き宇宙機は滑り込んだ。


プリーニオ

「急げ、急げ、急げ……」


祈るように小さな声でつぶやくプリーニオ。そのヘルメットバイザーにシークバーが映り込んでいる。


短くなる完了までの時間が、エースに残された時間に思えてプリーニオは落ち着かない。


プリーニオ

「慣性移動中に再起動するから、権限をこっちによこせ」

整備班サイトウ

「無茶ですよ!再起動中の30秒間、なにも見えないただの的なんですよ!?」

プリーニオ

「その30秒をエースの野郎にくれてやるって言ってんだよ!命令だ!」


戦闘中域への到着が30秒遅れるくらいなら、その時間は命の危険に晒されても構わない。

プリーニオはそう言っている。


そして。


メインスラスター噴射で十分な速度を得てから、プリーニオは操作パネルの再起動を押す。

機動兵器内の全ての計器が動作を止め、全ての光と音が失われる。


宇宙本来の静寂。

宇宙本来の漆黒。


プリーニオは瞼を下ろし、静かに呼吸を整えるのだった。



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