バトルファイル 001-2 VS人型
バトルファイル 001-2 VS人型
太陽系外縁。火星を超えて太陽から離れた宇宙。ここから観る太陽は小さく弱々しい。
その弱い太陽光を右舷に受けて中型輸送船ステンジダットは、フロンティア02コロニー郡へと向かっていた。
通信A
「通信傍受。ステンジダット。航海計画とも一致、積み荷は……精密機械だとよ」
通信B
「当たりだな!増築コロニーで使う機械は新しいヤツが多いからな」
通信C
「腐らない荷ならなんでもいいさ」
浮岩の影から輸送船ステンジダットを伺う海賊達。母艦の姿は見えないが、宇宙機4は機種混成かつ型落ち中古品とはいえ、それなりの戦力ではある。
通信A
「ありゃ?この会社先月で保険辞めてやがる」
通信D
「自衛する気になったか。プロを雇ったか……」
通信B
「どうすんだボス?やるんだろ?」
通信D
「……当然だ。無保険なら誘拐は時間の無駄。積み荷は精密機械だ野郎ども丁寧な仕事しな。かかれ!」
姿勢制御の小さなスラスターが細かく噴射され、浮岩の影から静かに姿を表す4つの宇宙機。それぞれフォルムは違えど、おおむね円錐形をした宇宙機は、輸送船ステンジダットに向かって加速を始めた。
通信A
「輸送船の反応が2つに分かれた!カーゴを分離……いや、もう一隻いる!密着するほど近くを飛んでたみてえだ!」
通信D
「とにかくヤル気って事だな!オメエラ油断するなよ!」
通信BCE
「了解!!」
時は戻り冒頭の戦闘へ。
ビービービー
短い警告音が海賊パイロットの意識を今に引き戻す。
ここに座る者もまた宇宙服など身に付けず、サンダルにハーフパンツ、ドクロのネックレスにバンダナといったラフな格好だった。
自機の状態を示すパネル表示は塗膜損傷50%。混乱に表情を歪めた時。大きな破砕音がして足元が弾け、破片が操縦室内で暴れまわった。
空気漏れを知らせるサインと警告音が響く中、自らの血が珠となって浮かび、警告表示の隙間へと吸い込まれるのを見て、操縦者は声を絞り出した。
海賊パイロット3
「まさか……実弾兵器……直?!」
ピーーー!
緑のビームが二度宇宙機を貫き、宇宙機は爆散した。
母船通信
「ザイル!ザイル!くっそお!こっちは二機やられた!繰り返す二機やられた!二対二だぞ!」
海賊パイロット2
「おいもう一機はどこだ!?見えないぞ!」
海賊パイロット1
「俺が追っかけ回してるよ!くっそなんで当たらねえ!気持ち悪い軌道しやがって!」
手書きドクロの下に星が5つペイントされた宇宙機が、人型の後ろについてビームを撃つ、だが人型の変則的な軌道に、ビームはかすりもしない。
海賊パイロット1
「戦闘AIの射撃補正がバグってやがるのか!?射角が狂ってんのかってくらい外れるぞ!」
宇宙機からビームが発射される都度。人型は手足を振り出して肩や足首のパーツを光らせ、宇宙機では考えられない軌道を取る。
発射とほぼ同時に標的に照着するビームだが、宇宙空間を変則軌道で飛び回る標的に命中させるにはAIによる軌道予測は欠かせない。だが今回その戦闘AIは、標的のデータ不足が原因で十分に機能していなかった。
……が、逆は十分に機能していた。
追いすがられ優位置を取られながらもビームを回避し、横移動の際に発射した実弾は数発が確実に着弾し、有利な筈の宇宙機の塗膜を着実に割っていく。
対実弾の戦闘経験が無い宇宙機の操縦者は、偏差を取って発射された実弾に自分が当たりに行っている事に気付いているだろうか。
海賊パイロット2
「ふざけんな!こっちは型落ちとは言え元軍用機だぞ!そんなガラクタにヤラれる理由がねーんだよ!おいシャルル!そっちはどうなってる!?シャルル!!……ウソだろ……」
人型を追い回している自分が、後ろからロックを受けている。つまりシャルルはもう……。
海賊パイロット1
「くっそ!!どうなってやがる!あんなロケットワーカーに三機も撃墜されたってのか!援護……援護機はまだか!」
宇宙機が前後から挟まれた不利な位置を脱しようと上昇を掛ける。
とたんにスクリーンを埋め尽くす赤い四角。前後から同時に実弾の直撃を受けているのだ。一瞬でゼロになる塗膜表示。
ピー―!
前下、後下から放たれた二本のビームが交差するように宇宙機を貫き……。
通信から流れるかすかなノイズ。
宙に浮かぶ酒瓶。快楽店が表示されたままの端末。開戦時お祭り騒ぎだったろう海賊船の艦橋は水を打ったように静まり返っていた。
帽子を被る男が喉から声を絞り出す。
帽子の男
「て……撤退だ。根城に戻って……」
他の男
「ボスを助けにいかねーのかよ!通信不良なだけかも知れねえだろ!」
他の男達A
「そうだ!まだ戦ってるかも知れねえのに見捨てるのか!?」
他の男達B
「やられたんだよ!こっちにゃ宇宙機はあと一機しかねえ!パイロットだってボスよか弱えんだ!」
帽子の男
「静かにしろ!ボスは死んだ!新しいボスはこの俺だ!それが俺達海賊のルールだ!そして新しいボスである俺が命令する!撤退だ!」
必要以上に大げさな身振りで机を叩き床を踏み鳴らして帽子の男は訴え、周囲を見渡した。自分がこの場を支配した事を確認するかのように。
よし。俺がボスだ。俺がこの海賊団の頭領だ。
帽子の男が内心そうほくそ笑む。だがレーダー席に居た男は、帽子の男のイイ時間を邪魔した。
レーダー席の男
「ロー……いや、ボス。反応が二つ、浮岩群を縫って近づいてきます」
帽子の男
「はあああああ!?護衛のお仕事に追撃なんかねええんだよ!頭おかしいのかコイツらあああ!主機始動……いや、対宙迎撃と対制艦戦準備だ!」
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