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バトルファイル  作者: クバ


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バトルファイル 001-1 VS人型


星もまばらな漆黒の空間。

円錐形のフォルム、ツヤのある機体表面、太陽光を反射させながら機種の揃わない四機が宇宙空間を光の鏃となって疾走して行く。その船体には素人がスプレーで描いたドクロのマークがあった。


操縦者A

「さて、一体何が発進したやら」


宇宙服も着ていないラフな格好の操縦者は、パネルを操作し光学映像に補正を掛けて拡大する。

拡大されたスクリーンの中、弱々しい太陽の逆光とそれを反射する輸送船の上辺の向こうから、ゆっくりと上昇する人型の影。その影は腰から太い棒状の何かが伸びている。


映像を見た操縦者は、一瞬呆気に取られ、次いで広角を上げ、そして笑い出した。


操縦者A

「ぶわははははっ!!うそだろ!?作業機(ワーカー)のケツにロケットがぶっ刺さってやがる!!アレで宙間戦闘する気か!?わははははっ!!」


共有された映像を確認した他の宇宙機と母船の通信からも、下品な笑いが流れて来る。


母船通信

「ひっひっ、輸送船は中域から離脱中、連中そのロケットワーカーを囮にして逃げようって算段かもよぉ!ひっひっひ」


操縦者A

「ロケットワーカーって!ワードセンスあるなお前!わははは!これは後でSNSでバズ確定だな!近づいてもっと良い写真撮らなきゃな……わははは!おいキャビンに二人乗ってるぞ!!囮なのに二人乗りだぞ!!死ぬ時は一緒よ!じゃねーわ!」


再び通信から下品な笑いが流れたその瞬間。


ビー!ビー!ビー!


警告音と共に虫食いのように赤いブロックに侵食されていく左側スクリーン。


操縦者A

「な、なんだ!?」


瞬間目をやったパネルの表示は、対ビーム兵器用塗膜が左側だけ20%にまで減少していた。


操縦者A

「何が起きてやがる?ビーム照射なんてされてねえぞ!」


ピーーー!


今までより一段高い警告音が発せられ、鮮明な写真を取ろうとズームしていたスクリーンは緑の光で埋まる。



漆黒の静寂の中。一本の緑の光条に宇宙機が貫かれ、貫通点を灼熱に焦がしながら爆散。光の珠となって消えた。



光の珠が残照を完全に失うまでの間、世界は音を失ったかのようだった。

そして次の警告音が人々の意識を戦闘世界へと引き戻す。


母船通信

「何が起こった!?報告しろ!撃墜(おと)されたのか!おい!報告しろって!」

通信B

「グエン!グエン!応答しろ!グエン!」

通信C

「おいこっちからはロケットワーカーが二機出たように見えた!もう一機はどこだ!?索敵ちゃんとやれよ!」


通信から流れているのは煮えたぎるパニック。そこにはさっきまでの卑下た下品さは微塵もなく、混乱の濁流にもまれる恐怖の木の葉のようだった。






時は連邦歴49年。

同盟・連盟と戦争抑止力足り得なかったお飾り組織が、半世紀前遂に地球上から国家間紛争を無くし、連邦として新しい人類の歴史を刻み始めた。


世界をまとめたのはなんの事はない【欲望】だった。


持続可能も包括的も成し得なかった世界平和を招来せしめた【欲望】とは―――宇宙開発である。


月に拠点を持つに至った人類は、地球上の資源を争う愚かさを理解した。命が尊いからではない。コスパが至極悪いのだ。月の砂を原料に低重力下で建造される宇宙船は、自重を支える構造が極小で済む事から、簡単で安く早くそしてスペースメイドシップを駆っての宇宙開発は美味しかった。


新たな鉱石、新たなエネルギー、新たなサービスには新たな法が必要だった。


発見された資源衛星の、所有権利を包括的に登録管理する組織が必要となり、混雑航路での交通ルールが必要となり、それなりの罰則が必要だった。残念組織だった連盟はハーグ国際司法裁判所の下部組織として「宇宙開発のルール策定」の為に連邦に生まれ変わり、大変有意義で忙しい組織となったが、人材が残念なのは伝統か呪いか。


宇宙平和利用の美名の元、「戦争より金儲け」を裏スローガンに人類は宇宙開発バブルを謳歌した。

「如何なる国も地域も組織も、宇宙を活動拠点とする軍隊を編成することを禁ずる」

連邦に加盟した大小二百を超える国と地域はまずコレに同意し、以降のルール策定に参加する資格を得るのである。


いずれ大国が先頭を切って宇宙軍を組織するだろうが、欲に目が眩んでいる何十年かは「抑止力」よりも「美味い飯」に金を使いたい。スローガンにはそんな儚い願いが込められていた。


衛星からの資源採掘、月面基地拡張、宇宙コロニー建設。

平和の海で物流は増大し、運輸業は大企業から個人まで事業者が乱立、クオリティとコストに幅を持ちつつ急激に増大した。



羊が増えれば狼も増える。




大小の輸送船が貴重品を運搬する時。いつの時代も彼らは産まれた。海が波打つように。風が枝を揺らすように。そう、輸送船を狙った海賊が大量発生した。


宇宙海賊の使う宇宙機は、かつて各国が宇宙軍を組織していた頃の機体だ。武装を外して探査機や高速機として払い下げられた物もあれば、連邦参加時に書類上破棄された機体もある。

それらの宇宙機を合法非合法に入手し、改造して武装する海賊は、輸送船を強襲、物資の強奪転売、クルー誘拐からの身代金要求など、天敵不在を良い事に荒稼ぎした。


宇宙保険は支払い条件の厳格化と高額化が進み、宇宙運輸業者は保険と自衛と警備契約の3つの海賊対策をコストと突き合わせて、同業他社の様子を伺っている状態である。



そしてまたここに、宇宙海賊に目を付けられた輸送船が一隻。



読んで頂きありがとうございます。

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