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バトルファイル  作者: クバ


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17/22

バトルファイル 011 VS PONR


片道キャンセル事件から数週間後。

輸送船ラダンのオーナーバイソンが、莫大な身代金を支払って解放されたとの情報に、法務部がにやりとしたその日。


「壮観壮観♫。あ、お世話になりますキリサメ営業部のザラメと申しますぅ」


護衛船ヒュウガを待つ桟橋に、積み上げられた補給物資の山、山、山。

スリーピースの背広のジャケットを肩に掛けて、通話する赤髪の男。


ザラメ

「……はい、契約書は伺った時に。はい。よろしくどうぞぉ」


右手親指を右耳に入れ、右手小指を口元に伸ばして通話していたのは、キリサメ営業部きってのお調子者ザラメ。

ここ数週間の大繁忙でもっともイキイキしている男である。


ザラメ

「総務さん!総務の応援って今日何人来てるぅ?」


声を掛けられたのは、黒髪の一本結に黒縁メガネの、リクルートスーツを着た目立たない女性社員。

ウルナンと没個性コレクションでも開いているのかと思える程に、消えている。


総務の人

「ザラメさん。桟橋の警備増やしてください。物資積み上げすぎてヒュウガに積むまで把握できませんよ!」

ザラメ

「お!見えてきた!さすが時間通りですねぇうちのヒュウガは」


ザラメは宇宙港ゲートが開いて見えたヒュウガを双眼鏡で確認。ヒュウガの艦橋から同じように双眼鏡を除くハンチョウを発見した。

双眼鏡ごしに目が合ったと確信したザラメは、あとよろしくねぇと陽気に告げて、ハンチョウとのエンカウントから逃亡した。



ハンチョウ

「なんなのこの量は……!」


接舷した桟橋に降り立ち、始まった搬入を見ながらハンチョウは絶句する。


総務の人

「今回は1.5航路分なので多目です。機動兵器のハンガーに食料を置くのは最初の二週間だけです」

ハンチョウ

「一時間でもありえないのよ」


チラリと総務のタブレットに視線を落としたハンチョウは、お手本のような二度見を披露する。


ハンチョウ

「なにそのスケジュール!?」

総務の人

「まさかこのタイミングでセール打つとは思いませんでした。経営部もよく承認したなと、定期便を抱える大手運送社が長期契約でバシバシ釣れてます。臨時便もまるでコッチの予定を聞いたかのようなタイトなインサートしてきます」

ハンチョウ

「ザラメの仕業でしょうよ」

総務の人

「仕業です。ハンガーの小腹が空いたタイミングで試作パーツ搬入しますので」

ハンチョウ

「小腹って言うな!」

総務の人

「アンキースリー事件が業界を大きく変えましたね」

ハンチョウ

「詳しく教えてよ。今回の航路あんまり情報入らなくてさ。運送業協会が構築した護衛航路構想がたった一隻の身勝手で崩壊したって解釈なんだけど合ってる?」

総務の人

「輸送船アンキースリーの立ち回りがクソ過ぎました。戦場に味方護衛船を置いて逃げたんです。二回も」

ハンチョウ

「二回!?」

総務の人

「コンテナ二十番から第二倉庫です。順に奥に突っ込めば手前から使える用に中身精査してますから、番号守って下さい。はい、よろしくー」


搬入の指示を出しながら、没個性な総務の人は協会の護衛航路がいかにして崩壊したか説明してくれた。


中型輸送船アンキースリーは、護衛航路構築後、様子を伺っていた海賊に目をつけられた。高価な建設機械を輸送していたからだ。

アンキースリーは暗礁宙域を巧みに使って護衛船のエリアまでたどり着き、一息ついた。

だが、アンキースリーは自分たちを護る為に戦闘に突入した護衛船を置いて、我先にと戦闘中域を離脱。何度も戻れと無線で言われるアンキースリーは、その無線が単独航行のアナウンスになってしまっているのに気付かなかった。


総務の人

「アンキースリーが次のエリアに入った時、背後に三隻の海賊船を引き連れていました。そのエリアの護衛船は長くは保ちませんでしたが、その間にまたもアンキースリーは戦場から逃げたのです」

ハンチョウ

「二回も味方をエサにしたの?!」

総務の人

「そうなります。通信では制度上問題ない筈だと言い張っていたそうです」

ハンチョウ

「制度ねぇ」

総務の人

「護衛航路に分散配置されていた護衛船は海賊の同時襲撃を恐れて連絡を取り合っておのおの集結し、航路の安全度は担保されなくなりました。そのタイミングでうちの営業部がセールを打ったんです。定期便の半額前金が長期契約分ガッポガッポ入って……」

ハンチョウ

「運送業協会ってよく短期間に護衛体勢を構築できたわね」

総務

「それは営業部が……」

ハンチョウ

「営業部?」

総務

「我が社、対海賊護衛会社キリサメの最も利益を出している業種は?」

ハンチョウ

「護衛は割と薄いから……海賊船売却か」


総務の人は、メガネをクイッと上げた。


総務

「改造され、母艦機能を持った海賊船、それを我が社は売却し大きな利益を得てきました。そして宇宙機試作ラインを休ませるを良しとしない経営部は、新型フレーム開発過程で得たデータで、Bクラスの宇宙機を少数販売し、そこからもデータと利益を得ていたのです」

ハンチョウ

「あ!運送業協会の装備って!!」

総務

「はい。結構我が社の商品です」


ハンチョウは妙な合点がいっていた。

HAKUフレーム時代から、機体から吸い出すデータがやたらと大きかった。

まさか戦闘した宇宙機のデータをクロスミッシングして、販売予定の宇宙機のベースデータを構築していたとは。


ハンチョウ

「経営部、営業部、恐るべし」


うんうんと頷く二人。


総務

「というわけで、運送業協会自体には戦力が残ってるんですが、宙域駐留するシステムが破綻。さりとて我が社の様に随伴護衛のノウハウは無し」


ハンチョウ

「いずれ赤くなる海なら、青いうちに前金せしめようと……からいなぁ」


総務

「というわけで、依頼A後補給無しで依頼Bスタート、依頼B復路で補給の運びになりました」


ハンチョウが持つタブレットは、ずーっとスワイプしているが、未だに終わりが訪れずにサインが出来ない。

営業部はここが攻め時と契約を取りまくったかもしれないが、実際に護衛をするヒュウガ乗組員は1回でもミスをしたら終わりである。以降の契約がドミノ式に契約違反になるし、人質交渉リストに乗るには殺しすぎた。


総務

「というわけで、そちらのサインが済んだらこれの確認をお願いします。これだけは直接お渡ししろと厳命されてまして」


総務が出したのはプチプチでパンパンになった茶封筒。A4とかいうサイズが入るやつだ。


受け取った何も書かれていない茶封筒をタブレットに近づけるハンチョウ。

タブレットが何かを認識し、ハンチョウの眉をピクリと動かした。


ハンチョウ

「このレベルのモノをこの梱包この警戒で寄越すとは……いや、盲点か」


総務

「あの……サイン頂けないと私も次の業務が……」

ハンチョウ

「どんだけ搬入品あるのよ!これループしてない!?してない?」


アンキースリー事件を契機に、護衛船ヒュウガは大繁忙期に突入。

アンキースリー事件は運送業海賊業ともに大きな影響を与えた事件となった。



後年に言われるPoint Of No Return。



身勝手な一隻の行動が、一つの連邦憲章を廃止に追い込んだのだから。


読んで頂きありがとうございます。

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