バトルファイル007 VS頭
ハンチョウ
「却下よ」
プリーニオ
「まだ何も言ってねえだろうが!」
護衛船ヒュウガの食堂。
ハンチョウの姿が見える前から呼びかけるプリーニオに、声が聞こえた先から却下するハンチョウ。
見慣れた、いつもの光景が繰り広げられていた。
ここヒュウガの食堂は、職種でメニュー構成が異なっており、不満が出にくいようにゾーニングされている。
とはいえ強制ではないのはご覧の通りだ。
柱の陰から姿を表したプリーニオは、一瞬静止し、二度瞬きし、テーブルに付くハンチョウを上下上と見直した。
ハンチョウの服装はいつものツナギではなく、首袖周りの緩い麻のノースリーブに、脚と尻の境界線が見えるホットパンツ姿だった。
美しい双丘と、椅子にむきゅっとされた太ももが、交互に視線誘導をかけてくる。
プリーニオ
「よう……ゴージャス。……はなしくらいきけよ……」
ほぼ食べ終えた食事の乗ったトレイを置いてハンチョウの隣に座ったプリーニオだが、並んで座る二人は、体格差からハンチョウをプリーニオが見上げる格好に。
プリーニオは気を取り直して、気にしてないけどなと言わんばかりに、ゆーくり立ち上がり、ハンチョウを見下ろす。
ハンチョウ
「どうせログ見て格闘戦闘は有効だ。とか、先行してドリル試作しようとか、言い出すんでしょ」
プリーニオ
「え?格闘有効な場面あったの?ログ?」
カシャン
ナイフを落として右手で口を塞ぐハンチョウ。
ハンチョウ
『アタシとラルズの模擬戦ログ見て無かったのね!とんだやぶ蛇!』
「んで何の用なのよ。手短にね」
ハンチョウは掘り下げられないように、話を進める事にした。
プリーニオ
「あ、ああ。新型フレームになってコクピットが閉鎖型になったじゃねえか。そうするとさぁ、気付く訳よ、在るべき物が在るべき場所に無い虚無感にさあ」
この一見カッコいい事言ってる風で、中身スッカスカの話術にイライラしながら、ハンチョウは我慢してプリーニオの話を聞いている。格闘有効の方に穴は掘らせない。
プリーニオ
「センサー各種と高倍率カメラを集中搭載したユニットと言うか、部位と言うか、あって当然だと思うんだよ」
相手が気になってる体で話す言いようにイラッとしながら、藪をつつかぬように食事を再開するハンチョウだが、ようやく言いたい事が分かってきた。
プリーニオ
「その部位に向きや傾きを与えると、無機質だったロボにこう命が宿るんだ」
ハンチョウ
「何が命で何がコウなのよ……」
プリーニオのプレゼンをBGMに、最後のパン欠片で皿に残ったソースを綺麗に拭き取って口に放り込むと、ハンチョウは両手を合わせる。
プリーニオ
「新型にこそアタマ……」
ハンチョウ
「ごちそうさまでした」
プリーニオ
「聞けってぇええ!」
トレイを持って立ち上がったハンチョウが頭一つ上から見下ろす高さになると、プリーニオは顎を突上げ、ゆーくりと椅子に立ってハンチョウを見下ろす高さに上昇する。
ハンチョウ
「アンタの頭は、そうやって見下ろす為だけのギアよね?中身はデッドウェイト?」
プリーニオ
「だからセンサー類を集約して……」
ハンチョウ
「弱点を突出させてどうすんのよ、全周モニター出来てる」
プリーニオ
「必要に応じてより解像度の高い……」
ハンチョウ
「武器毎に有効射程最適化されたセンサーカメラ付いてる」
プリーニオ
「武器向けずに平和的……」
ハンチョウ
「戦闘単位が平和的とか言わない」
食事を終えてテーブルから離れたハンチョウ。椅子を降りて食い下がるプリーニオ。
ハンチョウは食べかけか食べ終わりか分からないプリーニオのトレイが、テーブルに置いてけぼりされた事に気付くと、クルリと回れ右をする。
何故か二度すれ違いながらも、頭の必要性をハンチョウに説明し続けるプリーニオ。
ハンチョウは二人分のトレイを返却口に入れ、料理長にいつもの感謝の言葉をかける。
ハンチョウ、プリーニオ
「ごちそうさま」
二人同時の食後の感謝に、笑顔で応える料理長。
プリーニオ
「なあ、だから聞けってゴージャス」
面倒見の良い母親とよく懐いた子供にも見える二人が、人型機動兵器における頭部の必要性を口論しながら食堂から出ていく。
二人のやり取りをスパイスに食事をしていた数名は、穏やかな顔で感想をもらす。
食事中A
「大人の距離感ですねぇ」
食事中B
「さて、追加交渉は成果を得るか」
食事中C
「交渉に勝っても頭は付かないだろうなぁ」
最後の言葉に料理長含めた全員の穏やかな笑いが起こり、皆そそくさと食堂を後にしたのだった。
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