バトルファイル 006-4 VS戦闘AI
サトウ
「ト、トラブルは検知できず!機体トラブルじゃありません!どういう事ですか!?」
ハンチョウ
「……ほんと……負けず嫌いね」
視野外からビームの直撃を受けたプリーニオ機は、索敵に動き回るでもなく、回避運動をするでもなく、ただそこに浮かんでいたのだ。
サトウ
「どういう事ですか!」
ハンチョウ
「ラーニング進んでないわよね」
AI用オペレーター
「え、あ、はい、変則機動どころか回避運動すらしてませんので、データは取られてません」
説明してよ顔のサトウとオペレーターに、ハンチョウが早口で説明する。
視認された現状はプリーニオが不利だが耐ビーム塗膜はまだ十分に残っている。
エースがプリーニオを撃墜するには光線が走るビームか、発射光の出る実弾を撃つ必要がある。
ならエースが次の一撃を放つまでは、1バイトすら情報はやらん。エースの場所を特定してからが勝負だ。そういう作戦だというのだ。
サトウ
「だからって、敵前で動きを止められますか!?」
ハンチョウ
「そう。理屈では分かる。でも自分を狙っている敵に向かって目を見開いて、さあ撃ってこいって戦法は……捨て身寸前だわ」
AIオペレーター
「模擬戦ゆえの戦法ですか?」
サトウ
「いや、プリーニオさんは実践で使う戦法しか、シュミレーションでもしない人だ。実戦でもアレやる気で準備してたんだ」
ピーーー。
ラルズ
「ロック!」
プリーニオ
「全方位索敵、光線元を見逃すなよ!」
エース
「……まったく」
エースはガングリップのビーム出力を最大にし、ビームチェンバーのカウントを待つ。
ゼロのカウントと同時にトリガーは絞られ、最大出力最大収束されたビームが漆黒を貫く。
CGモデル上で光を叩きつけられたプリーニオ機は、全天モニターの右半分を赤いスクエアに覆い尽くされた。
ラルズ
「塗膜蒸発!残り5%!次で……」
プリーニオ
「そこかぁあああああ!!」
変則機動をしながらエース機へと距離を詰めるプリーニオ機。
あと一撃ビームを命中させれば撃墜のエースは、浮岩陰でぎりぎりまで粘り、ラーニングで完全に優位に立った瞬間宙間戦闘に打って出た。盤石の選択である。
AI用オペレーター
「エース機ラーニング50%」
サトウ
「次のビームは貫通だ!」
プリーニオ、ハンチョウ
「ラルズ!今だ!!」
ラルズはパネルに手を伸ばし、テストと書かれた枠を押した。
次の瞬間プリーニオ機の装甲表面に現れる幾何学模様。
エース
「ん?今頃都市迷彩?」
都市迷彩を思わせる幾何学模様。だがそれは只の模様では無かった。
AI用オペレーター
「エース機戦闘AI処理速度低下!ラーニング進みません!」
AI用オペレーター
「プリーニオ機は順調にラーニング進行、熟成ラインゴールデンクロス!55、70、90!」
このドックファイトで、プリーニオは塗膜残量5%の状態から、一撃も食らう事なくエース機に実弾を浴びせ続け、遂にはエース機にキルコールを鳴らした。
エース
「……説明してくれるよな?」
プリーニオ
「だとよ。ラルズ」
エース
「ラルズ?」
訝しむエースと照れたようにヘルメットを掻くラルズ。
ラルズ
「本能に根ざした視線誘導です」
はぁ?と口を開けるエースとくくくっと笑いを堪えるプリーニオとハンチョウ。
ラルズ
「あの迷彩……AI用の敵対的視覚パターン――まあ、QRコードみたいなものが仕込んであるんです 。戦闘AIは熟成度が生存率に直結する為、情報収集に過剰なほど敏感でいうなれば学習意欲に振り切れてるんです。なので機体表面に浮かんだ数万のQRコードを読み込んで処理しようとしてしまったんですよ」
エース
「な……! 敵の学習能力の高さを逆手にとって、処理能力を飽和させたのか!?」
絶句するエース。
ハンチョウ
「ラルズの思い付きでテスト自体初だったけど、思った以上にハマったわね」
エース
「いや、こんな物で戦闘AIが弱体できるなら……」
ハンチョウ
「効果は数秒よ。現にそっちの戦闘AIの処理速度はもう元に戻ってる。でも4秒しかなかった時間が10秒になったなら……あなた達なら何とかするんでしょ?」
エース、プリーニオ
「する!!」
こうして対海賊警備会社キリサメは、研鑽された技術と新たなアイディアを融合させながらバージョンアップを重ねて行く。
模倣者に簡単に追いつかれないように。
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