ほとんど、いつも通り
翌朝になると、水滴の音はもう聞こえなかった。
私はすぐには気づかなかった。ただ、ある瞬間、家の中が少し静かになったことに気づいた。
良くなったわけでも、悪くなったわけでもない。
ただ、少しだけ落ち着いたのだ。
私は流し台の前に立ち、耳を澄ませた。
壁は静まり返っていた。
水は、本来あるべきように流れていた。
九時近くになると電話が鳴った。
「おはようございます。」
修理業者だった。
「部品は手に入りました。ただ、今日は私が伺えそうにありません。代わりに同僚を向かわせます。取り付けは簡単ですので。」
「分かりました。」
私は答えた。
「ありがとうございます。」
一時間ほどして、その同僚がやって来た。
背が低く、動きは素早く、ほとんど口を利かなかった。
浴室へ入り、何かを外し、別の何かを締め直し、水圧を確認し、小さくうなずくと、作業は終わったと言った。
「これでもう大丈夫ですよ。」
玄関先でそう言い残し、そのまま帰っていった。
家は……
また少しだけ、普通になった。
私は、自分がほんの少し残念に思っていることに気づいた。
水滴と一緒に、何か別のものまで消えてしまったような気がした。
けれど、それが何だったのか、私は最後まで言葉にすることができなかった。
私は上着を羽織り、フィルの家へ向かった。
いつものように、彼の家は植物であふれていた。
窓辺にも、床にも、棚にも、部屋の隅にも。
鉢植えもあれば、バケツに植えられたものもあり、木箱に入ったまま育てられているものもある。
葉は互いに触れ合い、絡み合い、外へ向かって伸びていた。
その家は、人が住んでいるというより、
何かが棲んでいるように見えた。
フィルはその植物たちの中にいた。
大きな土の容器の前にひざまずき、両手で丁寧に土を混ぜていた。
「こんにちは。」
私が声をかけると、
「やあ。」
彼は静かに咳払いをした。
「もうだいぶ良くなったよ。昨日のほうがずっとひどかった。」
「そう見える。」
私が言うと、
彼はうなずき、葉をそっとかき分けた。
その下には、みずみずしくしっかりした新芽が伸びていた。
何日もかけて育ったというより、
ほんの数時間で伸びたように見えた。
「ものすごい勢いで育ってるんだ。」
フィルは言った。
「最初は肥料をやりすぎたのかと思った。でも違った。全部順調なんだ。」
「何をあげたの?」
私は尋ねた。
「新しい肥料さ。」
彼は答えた。
「鶏糞と水、それに白樺の樹液。ちゃんとした割合でね。」
彼は穏やかに、心から笑った。
「そうだ、今日はお客さんが来るんだ。」
彼は付け加えた。
「若い苗を買いにね。ジェイド・バインだ。長いこと育ててきたけど、こんな出来になることは滅多にない。」
「売るの?」
私は尋ねた。
「たまにね。」
彼は答えた。
「この子たちが次の場所へ行く時期だと分かったときだけ。」
「うちの修理も終わったわ。」
私は言った。
「もう水は一滴も漏れてない。」
「それはよかった。」
彼はうなずいた。
「少なくとも、その問題は片付いた。」
彼は布で手を拭き、立ち上がると、ほとんど無意識のように腹を軽く掻いた。
強くでもなく、痛そうでもなく、
ただ癖のような動作だった。
「体調はどう?」
私は尋ねた。
「悪くないよ。」
彼は答えた。
「中が少し変な感じはするけど、たぶんストレスだろう。」
彼は少し黙り、
突然苦笑した。
「そうだ……今朝になってやっと気づいたことがある。」
「君の家を出たとき、僕、君のピンク色のバスローブと、あの大きなTシャツを着たままだった。」
私はまばたきをした。
「そうだった……。」
「すぐには気づかなかったんだ。」
彼は続けた。
「近所の人たちはもう仕事へ向かっていて、みんな僕を見ていた。でも僕は頭がぼんやりしていて、気分も最悪で、何もかも霧の中みたいだった。家まで走って帰って、それでようやく気づいた。いや、その時でさえ、すぐには気づかなかった。」
彼はまた小さく咳払いをした。
「全部洗っておいたよ。」
彼は言った。
「今持ってくる。」
彼は家の奥へ入り、
きれいに畳まれた服を抱えて戻ってきた。
「はい。ありがとう。」
「私もあなたの服をすっかり忘れてた。」
私は言った。
「うちにあるから、あとで持っていくね。」
「分かった。」
彼は微笑んだ。
「ありがとう。」
第2部
「財布の件も、今朝張り紙を出したんだ。」
彼は付け加えた。
「見つかるかもしれないと思ってね。」
「それがいいわ。」
私は言った。
「そのほうがいい。」
「お金はたぶん戻ってこないだろうけど。」
彼は肩をすくめた。
「でも書類は……。あれがないと本当に困る。全部作り直すなんて大仕事だから。」
私はうなずいた。
私は彼を見つめた。
胸の奥で、話したいという思いが少しずつ大きくなっていった。
昨夜のことを。
彼が口にした言葉を。
どんなふうに話していたのかを。
最初は空っぽに見えたあの部屋のことを。
全部話したかった。
本当に。
でも――
今ではなかった。
彼は疲れていた。
そして落ち着いていた。
そんな話をするには、あまりにも穏やかすぎた。
「明日、話そう。」
私は言った。
「ただ、話そう。」
「いいよ。」
彼は何についてなのか尋ねることもなく、あっさりとうなずいた。
私は家へ帰った。
帰ると真っ先に洗濯機のスイッチを入れた。
汚れた服を仕分けもせず、そのまま放り込む。
流れる水の音は、ごく普通だった。
穏やかで、人間らしい音だった。
ドラムが回り始めるまでその場に立ち続け、それからようやくテーブルについた。
私は、この家にまだ長く住んではいない。
美術大学を卒業したあと、私は少し立ち止まることにした。
何をすればいいか分からなかったからではない。
ただ、一度止まる必要があったからだ。
両親は亡くなり、家だけが私に残された。
暖かく、きちんとしていて、命に満ちた家だった。
満ちすぎるほどに。
あの家は良い家だった。
あまりにも良すぎた。
だからこそ、息苦しくなった。
思い出は鋭い痛みではなかった。
それは、どこにでもあった。
どの部屋にも。
毎朝にも。
ささいな物一つ一つにも。
その中で暮らし続けることは、私にはできなかった。
私はその家を売った。
そしてすぐに、この家を買った。
古く、修理が必要で、床はゆがみ、水道は水漏れしていた。
でも、空っぽだった。
それが何より大切だった。
ここには、私に昔の人生を続けることを期待するものは何一つなかった。
振り返ることなく、自分の好きなように、少しずつ暮らしを作っていけばよかった。
私はまだ、その途中だった。
昼になると、私はようやくきちんと食事をした。
急ぐことなく、ゆっくりと。
昨日の出来事を思い返さないようにしながら。
気分を変えようと思い、珍しくテレビをつけた。
普段はほとんど見ない。
気が散るからだ。
でもそのときは、ただ何かが背景で流れていてほしかった。
注意を向ける必要のない音が欲しかった。
私は画面をほとんど見ないまま、チャンネルを次々と変えた。
そのときだった。
電話が鳴った。
私は電話で話すのが好きではない。
昔から、話すより書くほうがずっと楽だった。
会話では、言葉はすぐに答えを求める。
私は沈黙のほうが好きだった。
見覚えのない番号だった。
私は出なかった。
電話は鳴りやみ――
ほとんど間を置かずに、また鳴った。
そしてもう一度。
しつこいのに、不思議と不快ではなかった。
まるで、待っているようだった。
三度目に鳴ったとき、私はため息をつき、通話ボタンを押した。
「もしもし。」
「シュリンプ様でしょうか。」
平坦で感情のない声が尋ねた。
「はい。」
「本日、お荷物をお届けいたします。」
その声は言った。
「配達予定時刻は十五時から十六時の間です。宅配員がご本人様に直接お渡しいたします。」
「失礼ですが……。」
私は言った。
「私は何も注文していません。」
短い沈黙が流れた。
「お荷物はお客様のお名前で登録されております。詳細は中をご確認ください。お渡しはご本人様に限ります。」
そこで電話は切れた。
私はしばらく携帯電話を見つめていた。
私は何も注文していないと、確信していた。




