残された微笑み
家は、沈黙で私たちを迎えた。
いつもの沈黙ではなかった。夜の静けさでも、夕暮れの静けさでもない。音という音が、すべて後回しにされているような沈黙だった。
私は扉を閉め、その場に数秒立ち尽くした。背中を扉に押しつけ、外にいる何かがまだ中へ入ろうとしてくるのではないかと身構えるように。
何も起こらなかった。
眼鏡は、ソファのそばの小さなテーブルに置かれていた。
朝、持って出るのを忘れた、あの眼鏡だった。私は震える手でそれを取り上げ、かけた。
世界が、一瞬で鋭い輪郭を取り戻した。
私は不運な隣人の様子を、改めてじっと見た。
フィルの状態は悪かった。
あまりにも悪かった。
もともと彼の肌は青白かったが、今はほとんど真っ白だった。長いあいだ光の触れていない壁のように。緑色の目は大きく見開かれたまま動かず、ただ一つの表情に凍りついていた。口元には耳から耳まで届くほどの笑みが張りついていた。広く、不自然な笑みだった。身体全体が衝撃を受け、意識だけがどこかへ抜け落ちてしまったように見えた。
『不思議の国のアリス』のチェシャ猫。
それ以外の何ものでもなかった。
背筋に震えが走った。
何かしなければ、と私は思った。
携帯電話をつかみ、救急車を呼ぼうと番号を押し始めた。指は震え、画面が目の前で揺れていた。
待って。
だめ。
私は突然、発信を取り消した。
信じてもらえるはずがない。
自分でさえ、自分の目をほとんど信じられなかった。
私たちは頭がおかしいと思われるだろう。あるいは、ひどい神経衰弱だと。もし、あの技術者が水に何かを入れていたら? もし、これが全部幻覚だったら? もし私もフィルと同じくらい奇妙な姿をしていたら?
私は鏡へ駆け寄った。
そこには、髪を乱した少女が映っていた。明るい茶色の髪は、朝にはきちんと編んであった。
けれど、もう編み込みとは呼べなかった。髪の束があらゆる方向へ飛び出していた。顔はフィルと同じくらい青ざめていたが、笑ってはいなかった。困惑し、怯えている。それでも、正気だった。そこにあるのは恐怖であって、狂気ではなかった。
私は自分の頭を平手で叩いた。
次はもっと強く、鼻を叩いた。
痛かった。
私は息を漏らし、目を固く閉じた。
眠ってはいない。
これは幻覚ではない。
私はここにいる。
フィルはソファにいる。
では、どうすればいい?
医者は私を狂っていると思うだろう。警察も同じだ。濃く粘つく霧のようなパニックが、私を覆った。
私はフィルのそばへ行った。
両頬を叩いた。
彼はわずかに身じろぎした。
感覚はあるんだ、と私は思った。
脚をつねった。彼はまた反応した。冷たい水をコップ一杯、彼の身体に浴びせた――するとその瞬間、笑みがさらに大きくなったように見えた。
ひどく不安になった。
服を着替えさせなければならない。風邪をひくかもしれない。
もっとも、すでに彼は……
具合が悪かった。
彼はとても重かった。
身体をひっくり返し、床に落としたり、どこかにぶつけたりしないように濡れた服を脱がせるのは、本当に大変だった。私は息を切らし、手を震わせていた。結局、絵の具の染みがついた私の大きなTシャツを着せた。絵を描くときに使っていたものだった。その上から、ぶかぶかのピンク色のガウンをかけた。幸い、ズボンは濡れていなかったので、替えずに済んだ。
彼に合うものは、それしか見つからなかった。
フィルは背が高い。
それに、かなり大柄だった。
フィルは静かに横たわっていた。
微笑みながら。
そして何より恐ろしかったのは、彼が満足しているように見えたことだった。
私は何時間も、彼をその状態から引き戻そうとした。
肩を揺さぶり、ドライヤーの熱風を当て、腕を振り回し、くすぐり、大きな音で手を叩いた。鋭い音なら彼をどこかへ引き戻してくれるかもしれないと思い、鍋をスプーンで叩いた。
怒りでもいい。
苛立ちでもいい。
叫び声でもよかった。
何も起こらなかった。
フィルは、そんなことは自分には関係がないとでもいうように、微笑みながら横たわっていた。
まるで、別の何かに心を奪われているように。
私は疲れ切っていた。
手は震え、脚には力が入らなかった。いつの間にか私はソファの隣の床に座り込み、そのまま立ち上がれなくなっていた。
もう夕方だった。
フィルは一人で暮らしていた。
花々に囲まれて。
彼は植物を集めていて、家の中は本当に庭のようだった。整然と計算されたインテリアではない。生きている空間だった。葉、茎、鉢、蔓、湿った土の匂い。
家を取り囲む庭も見事だった。本物の楽園のようで、そこでは何もかもが、誰かに管理されているのではなく、ただ理解されているかのように育っていた。
私はフィルと知り合って、まだそれほど長くなかった。
ほんの数か月前、私はこの町へ引っ越してきて、まったくの偶然から彼と出会った。
ある日、生きたロバが私の敷地に迷い込んできた。
ただ入ってきた。
そこに立った。
そして草を食べ始めた。
私は困り果てていた。そのとき、通りの反対側からフィルが出てくるのが見えた。彼は、その動物の飼い主を探すのを手伝ってくれた。
そのロバはしょっちゅう逃げ出すらしかった。どういうわけか自分で縄をほどき、歩き回るのだという。
それが、私たちの出会いだった。
その後、私たちは時々話をするようになった。
けれど、フィルはほかの誰ともほとんど話さないように見えた。近所の人と親しげに会話しているところも、電話で誰かと話しているところも、一度も見たことがなかった。
もしかすると、彼の友人は植物たちなのかもしれない。
もしかすると、彼の人生には何か悲劇的な出来事があったのかもしれない。
私には分からなかった。
それに、なぜ彼は足を引きずっているのだろう?
人生は奇妙で、予測できない。
私は目を閉じた。
突然、自分の背中に、きらめくピンク色の翼が生えたところを想像した。私は翼を広げ、飛び立ち、フィルの家の上を漂い始めた。
上から見ると、すべてが違って見えた。
もっと柔らかく。
もっと静かに。
もしフィルにも翼があれば、花や植物のあいだを飛び、その香りを胸いっぱいに吸い込み、幸せそうに大きく笑えるのに、と思った。
本物の笑顔で。
今のような笑顔ではなく。
そして突然――
男の叫び声が響いた。
「ラクティモルス! ラクティモルス! あいつが奪った!
やつらが焼いた! 焼いたんだ!
ラクティモルス!」




