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元トレーダー、金アレルギーなのに金本位制の異世界に翻弄される  作者: 夜明け一葉
第4章

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第97話『研修初日』

予行の翌日も装備を背負って街を歩き、肩は荷の重さにだいぶ馴染んだ。そして集合の朝、第三鐘の少し前に、指定されたギルドの訓練場へ着く。


土を固めた広い庭に、若い姿がいくつか散っている。奥にリナが立っていて、こちらに気づくと軽く手を上げた。


「時間ぴったりね。こっちよ」


近づくと、先に来ていた四人が、それぞれの構えでこちらを見た。


「揃ったわね。今日から五日、この班で組むことになる。引率は私」


リナが四人を見渡した。


「みんな、今日が初顔よね。ケイも入れて、一人ずつ名乗っておきなさい」


まず、大柄な男が頭を下げた。鉄の胸当てに円盾を負い、腕も肩も、石でも担いできたような厚みがある。


「ゴルド。剣で前を張る」


一度言葉を切って、こちらの目を真っ直ぐ見た。


「指示は、ちゃんと聞く。斥候の指図に従うのが、盾の仕事だ」


短いが、芯の据わった声だった。


その隣で、赤茶の髪の男が軽く手を挙げる。そばかすの浮いた顔に、値踏みするような目つき。


「レト、弓。中衛から削るのが役目だよ」


視線が、こちらの装備をひと舐めした。


「……で、その斥候さん、ずいぶん落ち着いてるね。とても新人には見えないんだけど」


「そう見えるか」


「見える見える。歳、いくつ?」


「そこそこだ」


「うわ、はぐらかした」


レトが肩をすくめる。悪気のない軽さだった。


「はいはい、次あたし!」


小柄な少女が、栗色の髪を弾ませて前に出る。


「ノナ、魔法使い! 風魔法が得意で、後衛。足の速さなら誰にも負けないよ」


そして半歩後ろの少女を、当たり前のように指した。


「で、こっちがセラ。あたしの相棒」


亜麻色の三つ編みを揺らして、セラが小さく頭を下げた。


「……セラ、です。わたしも魔法使いで、光魔法……回復を」


一度目を伏せ、それから静かに続けた。


「みんなの後ろは、私が守ります」


声は小さいが、最後のひと言だけ、はっきりと芯があった。


ノナが満足げに、その隣へ戻る。二人の間の距離は、初めから決まっているようだった。


四つの視線が、こちらへ集まる。名乗る番だ。


「ケイ。斥候だ。敵と罠を、先に見つける」


それだけで、言葉が続かなかった。若い声の並びに、自分の低さが浮く。


「ケイの索敵は特別でね。見えない位置の敵や罠まで拾えるの。彼がいると言ったら、必ずいる。頭に入れておきなさい」


レトが感心したように眉を上げ、ゴルドが小さく頷く。ノナが目を輝かせた。


「すごっ、そんなことできるんだ」


「今日の段取りを言うわ。これから境界の森の外れまで歩いて、日暮れ前に野営を張る。一泊して、明日、森の浅いところで索敵と連携の実習よ」


「掲示にも同じことが書いてあるけど、耳でも覚えておきなさい」


読み上げてくれたのは、こちらへの気遣いかもしれない。口には出さず、ありがたく受け取った。


「荷物は各自持ち。ポーターはなし。理由は、歩けば分かるわ」


ノナが自分の背の袋を見下ろした。


「ええっ、これ全部自分で?」


「新人研修の名物だよ、それ」


レトが笑う。ゴルドは何も言わず、円盾を背負い直した。


---


門を抜けると、街道の先に境界の森の緑が低く続いていた。五人と最後尾のリナ、その並びを歩き出す前にリナがざっと決める。


「前にゴルド。少し離れてケイ、索敵。中衛にレト、後衛にノナとセラ。私は最後尾で全体を見るわ」


「ケイ、何か引っかかったら、すぐ声に出しなさい」


「分かった」


歩き出すと、荷は肩に食い込むが、予行のぶんだけ足取りは重くない。隣に来たレトが、こちらの背負い袋をちらと見た。


「あんたの荷物、やけに整ってるね。荷造り、慣れてるみたいだ」


「昨日、試した」


「へえ、律儀だ」


口ぶりは軽いが、目はしっかりこちらの装備を確かめている。観察する男だ——弓を持つだけのことはある。


歩きながら、四人を横目で測る。ゴルドは無駄がなく、危ういと見れば真っ先に前へ出るだろう。


レトは軽いが目端が利き、ノナは足取りが弾んで、セラはその半歩後ろを崩さない。見ているうちに、それぞれの癖が浮かんでくる。


伝える相手が、はっきりしてきた。


街道が緩く下り、森の匂いが濃くなる。湿った土と青い葉の匂いが風に乗って流れ、第五鐘を過ぎた頃には、緑の壁がすぐ目の前まで迫っていた。


「この辺りで一度止まるわ」


リナが声を張った。


「ケイ、森に入る前に、周りを一度見て」


右目の奥に、意識を集める。


---


【借金メモ・97話終了時点】

前話(96話)終了時:資金銀貨四十枚と小銀貨五枚・残債なし

97話収入:初級ポーション(作淡濁:緑)二十本(銀貨二枚)+初級ポーション(作澄:緑)七本(小銀貨五枚と大銅貨六枚)+乾燥野菜販売分(小銀貨四枚)=銀貨二枚と小銀貨九枚と大銅貨六枚

97話支出:従業員給与(ミレイ・フィア・ソル・充填×二・ダル・セイナ・アデル・詰め作業担当)+食事分=銀貨二枚と小銀貨三枚と大銅貨一枚

ケイの資金:銀貨四十一枚と小銀貨一枚と大銅貨五枚

残債:なし

※研修中は店舗をミレイらが継続運営。ケイ本人は野外実習のため不在

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【賃料管理メモ更新】

緑の雫(店舗):次回支払いまで残り4日

試作場:次回支払いまで残り8日

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