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元トレーダー、金アレルギーなのに金本位制の異世界に翻弄される  作者: 夜明け一葉
第3章

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第91話『説明書と量産』

夜、リナと向かい合った。


「乾燥野菜を緑の雫でも販売したい」


「どういうこと」


「今はギルドへの配布分だけだ。これに加えて緑の雫でポーションと一緒に販売する形にしたい。ギルドへの納品は続ける」


「両方やるということね。ギルド配布分は遠征組に届いて、店頭分は個人で買いに来た冒険者に売れる」


「在庫の管理はミレイに任せられる。先にバルドに話して確認する」


「それで——量産の体制は今どうなってる?」


「アデルが一人で一日に十五本前後を安定して出せるようになった。ただ瓶の在庫が追いついていない。発注をかける必要がある」


「ハリル工房でいいの?」


「そこに頼む。月百本の定期発注を増やしたい。まず百五十本から試す」


リナが口を開く。


「一つ聞いていい?」


「何だ」


「冒険者って、乾燥野菜の使い方を知らないわよね。そのまま食べても美味しくないし、戻し方を教えないと意味がないんじゃない?」


手が止まった。


(そうだ。知っているのは俺とリナとイルゼとバルドだけだ)


お湯で戻して汁ごと使う——それを知らなければ、そのまま口に入れて終わりになる。


「説明が要る。買った客に一枚ずつ渡す形で、絵で手順を示したものを作りたい。紙はいくらくらいで用意できるか」


リナが少し考えた。


「枚数にもよるけど、絵入りで一枚小銀貨一枚はかかるわよ。毎回渡すなら相当な量が要るわね」


手が止まった。


(百人に渡せば銀貨十枚以上——それが毎回かかる。現実的じゃない)


「別の方法にする。一枚だけ作って店に貼る。買った客にはそこを見てもらう」


「掲示板ね。それなら板一枚で済むわ。絵師に頼めば文字が読めない人にも伝わるものが作れるんじゃないかしら」


「そうする。絵が描ける者を探す必要がある」


「ミレイに聞いてみたら? 知り合いに心当たりがあるかもしれない」


「頼む。板の寸法を決めて木工所に発注する」


---


翌朝、冒険者ギルドへ向かった。


受付でバルドへの面会を申し入れると、少し待つよう言われた。しばらくして案内が来て、三階の執務室へ通された。


バルドが書類を確認していた。入ってきたのを見て手を止める。


「ポーション屋か。何かあったか」


「乾燥野菜のことで話したい。ギルドへの納品は続けるつもりだが、緑の雫でも並行して販売したい。個別に買いたい冒険者が出てきたときの対応だ」


バルドが少し間を置いた。


「遠征組への配布分は変わらないということか」


「そうだ。量産が軌道に乗れば納品数も増やせる。店頭分はそれとは別の在庫として管理する」


バルドが腕を組んだ。


「ギルドとしては配布分が確保されれば問題ない。店で売ることに口を出す理由もない」


「確認が取れれば十分だ」


「一つだけ聞く。価格はどうする」


「小銀貨一枚を考えている」


バルドが少し考えてから頷いた。


「問題ない。ギルド経由の分と店頭の分は別の流通だ。冒険者が自分で買いたければ店に行けばいい」


「助かった」


バルドが書類に視線を戻す前に一言添えた。


「量産が進んだら、また話に来てくれ。全体の数が増えれば配布の枠も広げられる」


---


緑の雫に戻り、ミレイに話した。


「乾燥野菜を店でも売る。ギルドへの納品分とは別に棚に在庫を置く。管理を頼む」


ミレイが帳簿を開いた。


「値段はどうしますか」


「シュゴリーフとエンシンルートで一本ずつ。乾燥野菜だけの単品が小銀貨一枚、干し肉と岩塩を同じ瓶に入れたセットが小銀貨一枚と大銅貨五枚を考えている。お湯を注ぐだけで食べられる形にする」


「セットですか。それなら買った方がそのまま使えますね」


「そうだ。ダンジョンに持ち込む用途を想定している」


「一本あたりの量はどのくらいですか」


「一回分が二、三日分になる量だ」


ミレイが書き込んだ。


「掲示板を作る。乾燥野菜の使い方を絵で示したものだ。絵が描ける者に心当たりはあるか」


「一人います。この通りで看板の絵を描いている人で、丁寧な仕事をする方です」


「紹介してほしい。今日中に会いたい」


「伝えておきます」


---


昼前、木工所に寄った。


「掲示板用の板を一枚作ってほしい。壁に引っかけられるもので、縦に長い形だ。横は三十センチ前後、縦は五十センチ前後でいい」


「いつ必要ですか」


「三日以内に」


「問題ない。大銅貨八枚になります」


大銅貨八枚を渡し、三日後の受け取りを確認してから木工所を出た。


---


ミレイが紹介した絵師は四十代の男で、染料と細筆を持ち歩いていた。一善屋の厨房に来てもらい、乾燥野菜の瓶を見せながら使い方を説明した。


「一——瓶の蓋を開ける。二——椀にお湯を注ぐ。三——中身を全部入れる。四——野菜と干し肉が柔らかくなるまで待つ。五——そのまま食べる。これを順番に絵で示してほしい。セット版と単品版で工程が少し違うから、二種類描いてもらえるか」


男が瓶を手に取り、中身を確認してから頷いた。


「三日いただけますか」


「構わない」


「板の寸法を教えてください。合わせて描きます」


木工所で伝えた寸法を告げると、男が控えに書き留めた。


「料金は大銅貨十五枚でいかがでしょうか」


「払う」


---


三日後、板と絵の両方が届いた。


木の板に、工程が上から順に描かれていた。上半分がセット版、下半分が単品版で分かれていて、瓶の絵、椀と湯気の絵、中身を入れる手の絵、柔らかくなった野菜と肉の絵、食べる椀の絵——各絵の横に短い文字が添えてある。


カウンターの脇の壁に引っかけた。


ミレイを呼んで確認させた。


「乾燥野菜を買った客には必ずこの板を指して、使い方を確認するよう伝えてくれ。指さすだけでいい。文字が読めない客にも絵で伝わるはずだ」


「分かりました。声がけのタイミングは会計のときでいいですか」


「そうだ。袋に入れて渡すときに一言添えてくれ」


ミレイが板をもう一度見た。


「これなら読めない方にも伝わりますね」


「そのつもりだ」


---


一善屋の方は、開店から数日で客足が落ち着いてきた。


昼前には卓が全部埋まる日が続いていて、ザワークラフトを怪訝な顔で見る客はほとんど来なくなっていた——口コミが広がっている。


イナが夕方に帳簿を出した。


「今日で開店から五日です。朝は出発前の冒険者が数人来て、昼は落ち着いて、夕方にダンジョンから戻った方が集まる流れが固まってきました。夕方だけ卓が全部埋まる日が続いています」


「分かった。カナの仕込み量は追いついているか」


「夕方の集中が問題で、揚げ物の提供が少し遅くなる日があります」


「明日、カナに確認する」


イナが帳簿を閉じた。


---


【借金メモ・91話終了時点】

前話(90話)終了時:資金銀貨四十枚と小銀貨四枚と大銅貨一枚・残債なし

91話収入:初級ポーション(作淡濁:緑)二十本(銀貨二枚)+初級ポーション(作澄:緑)七本(小銀貨五枚と大銅貨六枚)+食堂収入(銀貨一枚と大銅貨八枚)=銀貨三枚と小銀貨六枚と大銅貨四枚

91話支出:従業員給与(ミレイ・フィア・ソル・充填×二・ダル・セイナ・アデル・カナ・詰め作業担当・イナ)(銀貨二枚と小銀貨九枚と大銅貨八枚)+食堂材料費・パン仕入れ含む(小銀貨七枚)+掲示板用板(大銅貨八枚)+絵師代(大銅貨十五枚)+食事分(大銅貨一枚)=銀貨三枚と小銀貨七枚と大銅貨二枚

ケイの資金:銀貨四十枚と小銀貨三枚と大銅貨三枚

残債:なし

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【賃料管理メモ更新】

緑の雫(店舗):次回支払いまで残り14日

試作場:次回支払いまで残り25日(支払い済み)

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