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元トレーダー、金アレルギーなのに金本位制の異世界に翻弄される  作者: 夜明け一葉
第3章

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第88話『食堂と量産』

数日後、バルドから使いが来た。


「風魔法使いの心当たりがある。会ってみるか」


ギルドへ向かうと、受付の脇に若い女が立っていた。二十代前半、短く切った黒髪に、腰に小型の魔道具を下げている。


「アデルだ。風魔法を使う——細かい制御は得意だと言われている」


バルドが短く紹介した。アデルが軽く頷く。


「話は聞きました。容器の中の空気を引き出す作業ですね」


「そうだ。実際にやってみてもらえるか」


試作場に連れていき、金属容器と弁を見せた。アデルが容器を手に取り、弁の仕組みを確認してから頷いた。


「やってみます」


シュゴリーフを入れて蓋を閉め、弁の口にアデルが手をかざした。


気流が出た——リナより細く安定していて、五分十分と続けても乱れがない。十五分を過ぎたところで手を止めた。


「集中が切れなければ、午前と午後で五セットずつは続けられます。慣れれば消耗が減ると思いますが」


蓋を開けると、シュゴリーフが均一に乾燥していた。リナが最初に成功したときより均質で色のムラが少ない。


「リナより安定している」


「リナさんは冒険者としての魔法の使い方で、私は補助作業向けに細かい制御を専門に鍛えてきました。方向性が違うんです」


「一日どのくらい続けられる」


「休憩を挟めば、半日は問題ありません。集中力の問題なので、慣れれば伸びると思います」


「採用する。条件の話をしよう」


アデルが小さく頷いた——表情が変わらない、余計なことを言わない人間だと分かった。


翌週から乾燥野菜の生産量は以前より増えたが、乾燥した野菜を小瓶に詰める作業を担う人員がいない——ミレイは販売で手が塞がっていてダルとセイナはポーションの製造があり、風魔法使いをもう一人増やす前に詰め作業の人員と乾燥用の金属容器の追加発注が必要だ。


ギルドへの納品も始まった。

「試験的に遠征組に配布する」とバルドが言い、最初の五十個分が一週間で出た。


---


食堂を開くための準備を整えることにした。


まず天秤座へ向かい、担当の窓口で告げた。


「今借りている試作場を食堂として使いたい」


帳面を確認してから担当者が口を開いた。


「用途変更の届出が必要です。試作場として契約しているので、食堂として使うなら改めて手続きをしてください」


「費用は」


「手数料が大銅貨五枚、新しい契約書に署名してもらえれば当日から使えます」


手続きを済ませた。


次は人員だ。揚げ物と盛り付けを担う者と乾燥野菜の小瓶詰め作業を担う者——最低二人は必要で、フィアとセイナはポーション担当で食堂には回せず、ミレイは販売で手が塞がっている。


ミレイに採用の話を振った。


「食堂の調理と盛り付けができる人と、細かい詰め作業ができる人を探してほしい。急がなくていいが、できれば早めに」


「分かりました。知り合いに聞いてみます」


「あと、試作場が手狭になってきた——食堂と乾燥野菜の作業場を同じ建物でやり続けるのは難しい。場所も探す」


ミレイが帳簿に書き込んだ。


「食堂の開業はいつ頃ですか」


「人が揃ってから」


---


夜、試作場の地下に下りた。


棚に乾燥野菜の小瓶が並んでいる。シュゴリーフ、エンシンルート——二種類を安定して出せるようになって、ギルドへの納品分・食堂でスープに添える分・イルゼへの追加分と三方向に出ていくようになった。


(保存食は完成した)


次は量産と流通だ——アデルを加えたことで生産量は上がったが、ギルドの全員分に行き渡らせるにはまだ足りない。風魔法使いをもう一人増やすか、容器を増やすか、あるいは別の方法を考えるか。


(ダンジョン病を減らせるなら、この街の冒険者の生存率が上がる)


それだけの話でもある——ポーションが売れれば収入になり乾燥野菜が広まればポーションを必要とする場面が減るかもしれないが、それでいい。この街で冒険者が長く生き残れる仕組みができれば、ポーションの需要も安定して続く。


石段を上がった。扉を閉めると、揚げ物の匂いがまだかすかに残っていた。


---


【借金メモ・88話終了時点】

前話(87話)終了時:資金銀貨三十八枚と小銀貨七枚と大銅貨六枚・残債なし

88話収入:初級ポーション(作淡濁:緑)二十本(小銀貨一枚×二十=銀貨二枚)+初級ポーション(作澄:緑)七本(大銅貨八枚×七=小銀貨五枚と大銅貨六枚)+食堂収入(銀貨一枚と小銀貨二枚)=銀貨五枚と小銀貨七枚と大銅貨六枚

88話支出:従業員給与ミレイ・フィア・ソル・充填×二・ダル・セイナ(小銀貨三枚と大銅貨四枚)+アデル雇用(大銅貨八枚)+食堂材料費(小銀貨五枚)+食事分(大銅貨一枚)=銀貨一枚と小銀貨三枚と大銅貨三枚

ケイの資金:銀貨四十枚と小銀貨九枚と大銅貨八枚

残債:なし

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【賃料管理メモ更新】

緑の雫(店舗):次回支払いまで残り27日

試作場:次回支払いまで残り10日

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【所持アイテムメモ】

ポーション類

 初級ポーション(作淡濁:緑) × 20本(今日仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作澄:緑) × 7本(今日仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級魔力ポーション(作淡濁:白) × 製造中(ケイ直接・小銀貨三枚で販売中)

 初級魔力ポーション(作澄:白) × 製造中(ケイ直接・小銀貨四枚で販売中)


乾燥野菜

 シュゴリーフ(乾燥) × 量産体制確立・ギルド納品中・食堂スープ用・イルゼへ追加提供中

 エンシンルート(乾燥) × 量産体制確立・同上

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読んでくださってありがとうございます。

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次回もよろしくお願いします!

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