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元トレーダー、金アレルギーなのに金本位制の異世界に翻弄される  作者: 夜明け一葉
第3章

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第87話『報告と量産』

五日後、イルゼから使いが来た。


「話がある。来られるか」


南区の薬師通りへ向かった。


イルゼの薬舗に入ると、老女が椅子を引いて待っていた。いつもの乳鉢が脇に置かれている——今日は作業をしていない。


「座りな」


向かいに座った。


「三日前にダンジョン病の患者が来た。二週間ほど潜って野菜を断っていた男で、歯茎が腫れていて倦怠感が強かった——目の下が落ちていて、これは長引くと思っていたよ」


「乾燥野菜を使ったか」


「使った。あんたが置いていった瓶のものをお湯で戻して、汁ごと一日二回食べさせた」


イルゼが帳面を開いた。


「二日目から顔色が戻り始めて、三日目には倦怠感がだいぶ和らいで患者自身が驚いていた——いつもはもっとかかると言ってね。五日目で歯茎の腫れがほぼ引いた」


少し間があった。


「三十年で初めてだよ、こんなに早く回復するのは」


イルゼが帳面を閉じた。声は静かだが、目に力がある。


「三十年で何人も診てきたが、これほど早いのは見たことがない。あんたが持ってきたあの瓶のおかげだ」


「加熱していないから有効成分が残っていたのかもしれない」


「そうだと思う。なぜ効くのか——あんたの国では分かっているのかい」


「加熱すると失われるものがある。それが何かは、はっきりとは言えないが」


「……そうかい。三十年調べても分からなかったことが、あんたの国では分かっているのか」


イルゼが少し間を置いた。


「効いたのは確かだ」


少し間を置いてから、イルゼが続けた。


「患者にも確認した。食べ始めたとき酸っぱくて食べにくいと言っていたが、二日目からは慣れてきたそうだ——量を少なくして食べやすい形にすれば、もっと広く使えるかもしれない」


「それは今後の課題だ」


「発酵野菜の方は」


「そっちも少し試した。乾燥野菜ほど劇的ではないが回復の助けにはなっている感じがして、ただ酸味が強いから患者によっては食べにくいようだが」


イルゼが乾燥野菜の瓶を手に取り直した。


「それより、こっちの乾燥の方が気になる——どうやって野菜をあんな状態にしたんだい」


「容器の中の空気を引き出した。加熱せずに水分だけを飛ばせる」


「そんな方法があるのか」


イルゼがしばらく瓶を見ていた。


イルゼが立ち上がり、棚の奥から別の帳面を取り出した。


「ギルドに報告する。あんたの名前を出していいか」


「構わない」


「それとあんたも一緒に来てくれ。ギルドが直接話を聞きたいと言うはずだから」


---


その日の午後、ギルドへ向かった。


バルドが執務室で待っていて、イルゼも同席しており書記が端に控えていた。


「イルゼから話は聞いた」とバルドが言う。「乾燥野菜でダンジョン病が回復した——正式に記録に残す」


「分かった」


書記が羊皮紙に書き込んでいる。バルドが帳面を机に置いた。


「一つ聞く。量産できるか」


少し間があった。


「今の方法では難しい——風魔法を使って容器の中の空気を引き出す必要があるが、今は一人の魔法使いに頼んでいて一度に一つの容器しか処理できない上に精密な制御が必要で長時間は続かない。一組の遠征パーティ分にも足りない量だ」


バルドが少し考える顔をした。


「ダンジョン組は百人を超えている。その全員に行き渡らせるには、桁が違う」


「分かっている。だから量産が必要だ」


「風魔法使いを増やせばいいか」


「そうなる。ただ誰でもいいわけではない——細かい気流を安定して保てる者でないと乾燥が均一にならなくて、力が強いだけでは駄目で繊細な制御が得意な者が要る」


「ギルドに登録している風魔法使いで、細かい制御が得意な者を当たってみる。心当たりがあれば紹介する——雇用の条件はそちらで決めてくれ」


「助かる」


「こちらとしても、ダンジョン病で帰還を余儀なくされる冒険者が減れば損失が減る——一月で何人か帰還を余儀なくされているか、ギルドとしても無視できない数字だ。協力できることはする」


バルドが立ち上がり、手を差し出した。


「続けてくれ」


握手をした。イルゼが脇で小さく頷いていた。


---


ギルドを出ると、夕方になっていた。


街の通りを歩きながら、今日のことを頭に入れる。


イルゼが効果を確認し、ギルドが正式に認め、バルドが量産への協力を申し出た——三つが一日で揃った。想定より早かった。


(乾燥野菜が量産できれば、ダンジョンに潜る冒険者全員に届けられる可能性がある)


ポーションは怪我や病気の後に使うものだが、乾燥野菜はダンジョン内でも野菜の栄養を摂れるようにするものだ——治療ではなく、維持だ。


百人を超えるダンジョン組に届けるには風魔法使いが複数人必要になる——紹介が来れば雇用の話を進めて、それが決まれば量産体制に入れる。


試作場に寄って、今日のことをメモに書き留めた。


---


【借金メモ・87話終了時点】

前話(86話)終了時:資金銀貨三十六枚と小銀貨五枚と大銅貨四枚・残債なし

87話収入:初級ポーション(作淡濁:緑)二十本(小銀貨一枚×二十=銀貨二枚)+初級ポーション(作澄:緑)七本(大銅貨八枚×七=小銀貨五枚と大銅貨六枚)=銀貨二枚と小銀貨五枚と大銅貨六枚

87話支出:従業員給与ミレイ(大銅貨七枚)+フィア・ソル・充填×二(小銀貨一枚と大銅貨六枚)+ダル・セイナ(大銅貨十枚)+食事分(大銅貨一枚)=小銀貨三枚と大銅貨四枚

ケイの資金:銀貨三十八枚と小銀貨七枚と大銅貨六枚

残債:なし

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【賃料管理メモ更新】

緑の雫(店舗):次回支払いまで残り3日

試作場:次回支払いまで残り17日

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【所持アイテムメモ】

ポーション類

 初級ポーション(作淡濁:緑) × 20本(今日仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作淡濁:緑・試作強化版) × 1本(ミツロウソウの雫一滴添加・効能確認待ち)

 初級ポーション(作澄:緑) × 7本(今日仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作濁:黄緑) × 大保存瓶三本(満杯・保管中・旧在庫)

 初級魔力ポーション(作淡濁:白) × 製造中(ケイ直接・小銀貨三枚で販売中)

 初級魔力ポーション(作澄:白) × 製造中(ケイ直接・小銀貨四枚で販売中)

 初級魔力ポーション(作濁:白) × 大保存瓶一本目充填中(4本/20本)

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