表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元トレーダー、金アレルギーなのに金本位制の異世界に翻弄される  作者: 夜明け一葉
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/94

第86話『乾燥と報告』

三日後、リナが試作場に来た。


「やってみる」


地下に下りて、金属容器にシュゴリーフを入れて蓋を閉める。弁の口にリナが手をかざした。


今回は違った。気流が細く均一に一定の強さで続いていて、前回のように強くなったり弱くなったりしない——練習の成果が出ている。


五分が過ぎた。リナの呼吸が少し浅くなるが、手を止めない。


七分。


「……もういいかしら」


「もう少し」


十分で手を止めた。リナが壁に手をついて、息を整える。


「……かなり魔力を使ったわ」


「助かった」


蓋を開けた。


シュゴリーフが前回と明らかに違う状態になっていた。表面だけでなく全体的に縮んでいて触ると乾いた紙のような質感があり、色はわずかに濃くなっているが腐敗した感じはなく、匂いを嗅ぐと野菜の香りがうっすらと残っている。


口に入れると水分がほぼなく、噛むとしっかりとした歯ごたえがあって、野菜の風味は薄いが残っている。


(できた)


「どう?」とリナが聞く。


「乾燥している。形も色も保たれている」


リナが覗き込んだ。


「……本当だ。縮んでるけど、腐ってはいないわね」


「これをお湯で戻してスープに入れれば、ダンジョンに携帯できる野菜になる」


リナが少し黙った。


「……リナ、ダンジョン潜りで五日野菜を抜いたあと、ザワークラフトを食べたら回復が早かっただろう」


「そうね。あの次の日はかなり楽になってた」


「そのことも含めて、バルドに話してくる」


---


ギルドでバルドを探した。受付で告げると、奥の小部屋に通された。


「前に話していたダンジョン病の件だ。進展があった」


バルドが腕を組む。


「聞こう」


「生に近い状態で乾燥させた野菜を作る方法が確立できた。加熱していないから、生のものと同じ効果がある可能性がある」


バルドが少し眉を動かした。


「乾燥させた野菜で効くのか」


「まだ確かめていない。ただ自分がいた国ではそういう事例があった」


バルドが少し目を細めた。


「自分がいた国では、か。変わった知識を持ってるな」


「ダンジョン病に似た病気があった国だ」


バルドが帳面に書き込む。少し間があった。


「他に何かあるか」


「発酵させた野菜を試した。ダンジョンから帰ったCランクに食べさせたところ、体調の回復が早くなった」


「発酵させた?」


「野菜を発酵させて保存食にしたものだ。酸味がある」


バルドが少し考える顔をした。


「発酵野菜というのは、酢漬けのようなものか」


「近い。酸味がある」


「それで回復が早まったと」


「一例だ。まだ確かめが必要だが、生のものに近い状態を保っている可能性がある」


バルドが帳面に書き込む。


「イルゼに話してみてくれ。あの老女が記録を持っている——何か分かれば俺にも報告を」


「そうする」


---


南区の薬師通りへ向かった。


イルゼの薬舗は以前と変わらず棚に瓶と乾燥草が詰まっていて、白髪の老女が乳鉢の前に座っていた。顔を上げた。


「また来たね。仮説が確かめられたかい」


小瓶を二本取り出して、台の上に置いた。


「一つは乾燥させた野菜で加熱はしていない——容器の中の空気を引き出すことで水分だけを抜いた。もう一つは発酵させた野菜で、これをダンジョンから帰った冒険者に食べさせたところ体調の回復が早くなった」


イルゼが二本を交互に見た。乾燥野菜の瓶を先に手に取り、蓋を開けて匂いを嗅ぎ、一つを指先で取って口に入れた。


しばらく噛んでいた。


「……野菜の味がする。乾燥しているが、確かに」


次に発酵野菜の瓶を開けた。匂いを嗅いで、少し眉を動かす。


「……酸っぱい匂いだね。これは何をしたものだい」


「野菜を塩と一緒に漬けておくと、時間をかけて酸味が出る。腐敗とは違う」


「自然に酸っぱくなるのか」


「そうだ。微細なものが野菜の糖分を食べて酸を出す——目には見えないが、この世界でも同じことが起きている」


イルゼが少量を口に入れた。しばらく考えるような顔をしている。


「……野菜の味は残ってる。酸っぱいが、確かに」


「これをダンジョンから帰った冒険者に食べさせたところ、体調の回復が早くなった」


イルゼが少し眉を寄せた。


「酸っぱくなった野菜で回復が早まる……私には経験がない話だね。ただ、加熱していないのなら、何かが残っている可能性はある」


「自分がいた国では、乾燥させた野菜でも生と同じように効果があるとされていた」


イルゼが少し眉を上げた。


「自分がいた国、ね。どこの国だい」


「遠い」


「……そうかい。変わった知識を持ってるね」


イルゼが二本の瓶を台に並べた。


「加熱していないのは確かかね」


「確かだ。水分だけを飛ばしている」


イルゼがしばらく黙っていた。


「効果があるかどうかは実際の患者に試してみなければ分からない——ただ焼いたり干したりしたものは効かなかったが、それはどれも熱を通していた。熱を通さずに乾燥させたものなら話が違う可能性はある」


「試してみてほしい」


「分かった。次にダンジョン病の患者が来たとき使わせてもらう——瓶を置いていってくれるか」


小瓶をイルゼに渡した。


「結果を教えてもらえるか」


「もちろん。あんたが作ったものだし」


イルゼが瓶を棚の端に置いた。店を出ると、薬品の匂いが薄くなっていく。


---


【借金メモ・86話終了時点】

前話(85話)終了時:資金銀貨三十四枚と小銀貨三枚と大銅貨二枚・残債なし

86話収入:初級ポーション(作淡濁:緑)二十本(小銀貨一枚×二十=銀貨二枚)+初級ポーション(作澄:緑)七本(大銅貨八枚×七=小銀貨五枚と大銅貨六枚)=銀貨二枚と小銀貨五枚と大銅貨六枚

86話支出:従業員給与ミレイ(大銅貨七枚)+フィア・ソル・充填×二(小銀貨一枚と大銅貨六枚)+ダル・セイナ(大銅貨十枚)+食事分(大銅貨一枚)=小銀貨三枚と大銅貨四枚

ケイの資金:銀貨三十六枚と小銀貨五枚と大銅貨四枚

残債:なし

---

【賃料管理メモ更新】

緑の雫(店舗):次回支払いまで残り4日

試作場:次回支払いまで残り22日

---

【所持アイテムメモ】

ポーション類

 初級ポーション(作淡濁:緑) × 20本(今日仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作淡濁:緑・試作強化版) × 1本(ミツロウソウの雫一滴添加・効能確認待ち)

 初級ポーション(作澄:緑) × 7本(今日仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作濁:黄緑) × 大保存瓶三本(満杯・保管中・旧在庫)

 初級魔力ポーション(作淡濁:白) × 製造中(ケイ直接・小銀貨三枚で販売中)

 初級魔力ポーション(作澄:白) × 製造中(ケイ直接・小銀貨四枚で販売中)

 初級魔力ポーション(作濁:白) × 大保存瓶一本目充填中(4本/20本)

---

読んでくださってありがとうございます。

続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや★評価で応援していただけると嬉しいです。更新の励みになります。

次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ