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元トレーダー、金アレルギーなのに金本位制の異世界に翻弄される  作者: 夜明け一葉
第3章

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第84話『唐揚げと三人』

朝、試作場の大家に賃料を払った。銀貨一枚と小銀貨七枚——二ヶ月目の支払いだ。


「食べ物の試作もやってるそうだね」


「はい」


「臭いが漏れなければ構わないが」


「気をつけます」と答えると大家が頷いて去った——ザワークラフトの匂いのことを言っているのかもしれない。換気と匂いの対策は早めに考えておく必要がある。


昼前、ガッシュ・ミーナ・テオに声をかけた。


「食べてもらいたいものがある。昼飯の時間を空けておいてくれ」


ガッシュが少し眉を上げた。

「食べ物の試作か」


「そうだ」


ミーナが目を輝かせた。

「やった。ケイのって外れないじゃん」


「当たりとは限らない」


テオが無言で頷いた。


試作場の厨房でダストチキンを一口大に切って塩を振り粉をまぶして油で揚げた——唐揚げだ。衣がきつね色になったところで引き上げると油の匂いが厨房に広がり、ザワークラフトと香草を添えた小皿と並べて三人の前に出した。


三人が並んで皿を見た。


「これ、揚げ物?」ミーナが鼻を近づける。「いい匂い……でもこっちの酸っぱい匂いは何」


「ダストチキンを油で揚げたものと、発酵させた野菜だ。一緒に食べてみてくれ」


ガッシュが唐揚げを一口食べた。少し間を置いてから口を開く。


「……外がかりっとしてる。中が柔らかいな」


「どうだ」


「悪くない。というか、かなりいい——食ったことのない食感だ」


ミーナがすぐに手を伸ばした。口に入れた瞬間、目が大きくなる。


「なにこれっ、おいしい! 外がかりかりで中がジューシーで——こんな食べ方あったんだ! 油でこうなるの?」


「そうだ」


「すごい……」


ミーナが次にザワークラフトの小皿を見た。鼻を近づけて、眉が動く。


「……これ、酸っぱい匂いがするけど、大丈夫なの? 腐ってない?」


「腐っていない。発酵させた野菜だ——意図的に酸味を出している」


「発酵……」ミーナが少し迷ってから、少量を指先で取って口に入れた。「……酸っぱい」


「唐揚げと一緒に食べてみてくれ」


ガッシュも小皿を見て、一瞬手が止まった。匂いを確認してから、少量を口に入れる。


「……確かに腐った感じじゃないな。ただ癖がある」


ミーナが唐揚げと合わせてもう一口食べた。


「……あ、さっぱりする! 脂っこさが消えて、また食べたくなる感じ! なんでこうなるの?」


「酸味が脂をさっぱりさせる」


「へえ……すごいね」


ミーナがまた唐揚げを取り、ガッシュが今度はザワークラフトと合わせてしばらく噛んでから言う。


「確かに。こっちの酸味がいい仕事をしてる——単体だとちょっと癖があるが、揚げ物と合わせると丁度いい」


テオはすでに二つ目を食べていて、ザワークラフトも自分で取って合わせている。最初に一瞬匂いを確認したがそれだけで、何も言わないが手が止まらない。


「テオ、どうだ」


テオが顔を上げて、小さく頷いた。それだけだった。


ミーナが三つ目に手を伸ばしながら言う。


「ケイ、これ売るの? 絶対売れるよ。今すぐ売ってほしいくらい」


「まだ準備が整っていない。場所と仕込みの体制が要る」


「食堂みたいな形で出すの?」


「そうなる」


ガッシュが腕を組んだ。


「冒険者には受けると思う。ダンジョン帰りに食いたいやつが多い——揚げ物は腹に溜まるし、こっちの酸っぱいのが後口をさっぱりさせてくれて長い日の締めにいい」


(冒険者向けに出せる)


試食の反応としては十分だった——ガッシュの言うダンジョン帰りという言葉が引っかかる。長期潜りの後に食べたいものとして揚げ物が挙がるなら、ザワークラフトとの組み合わせは自然に受け入れられる可能性がある——リナが五日野菜なしで潜れば体に支障が出ると身をもって経験したように、冒険者にとって野菜を摂れる場所は単なる食堂以上の意味を持つかもしれない。


テオが四つ目を取った。


「テオ、まだあるか確認してから食え」


テオが手を止めて皿を見た。残り二つ——少し考えてから、一つだけ取った。


ミーナが笑い、


「テオにしては珍しいじゃん。いつもこんなに食べるの?」


テオが首を横に振った——それだけだった。


ガッシュが最後の一つを手に取りながら言う。


「ここの家、食堂として使えるんじゃないのか」


「ここで出せる。揚げ物と匂いの問題はあるが、試作場として借りているからポーションの店と分けられる」


ガッシュが頷いた。ミーナが横から口を挟んだ。

「テオみたいに黙って食べ続ける客が来るといいよね——テオって褒め言葉で無言なんだよ、いつもそうで」とミーナが言い、テオが少し視線を逸らした——


三人が帰った後、メモを開いた——唐揚げはダストチキン・塩・粉・油で工程がシンプルで仕込みも早く、ザワークラフトとの組み合わせで三人全員が肯定的な反応を示してテオが四つ食べた。場所は今借りているこの家を使い——ポーションの店と分けられるし裏通りで匂いの問題も許容範囲で、次は体制を固めることだ。


---


【借金メモ・84話終了時点】

前話(83話)終了時:資金銀貨三十五枚・残債なし

84話収入:初級ポーション(作淡濁:緑)二十本(小銀貨一枚×二十=銀貨二枚)+初級ポーション(作澄:緑)七本(大銅貨八枚×七=小銀貨五枚と大銅貨六枚)=銀貨二枚と小銀貨五枚と大銅貨六枚

84話支出:試作場賃料(銀貨一枚と小銀貨七枚)+従業員給与ミレイ(大銅貨七枚)+フィア・ソル・充填×二(小銀貨一枚と大銅貨六枚)+ダル・セイナ(大銅貨十枚)+試作食材(大銅貨三枚)+食事分(大銅貨一枚)=銀貨二枚と小銀貨四枚と大銅貨七枚

ケイの資金:銀貨三十五枚と小銀貨一枚

残債:なし

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【賃料管理メモ更新】

緑の雫(店舗):次回支払いまで残り8日

試作場:84話で支払い完了・次回は26日後

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【所持アイテムメモ】

ポーション類

 初級ポーション(作淡濁:緑) × 20本(今日仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作淡濁:緑・試作強化版) × 1本(ミツロウソウの雫一滴添加・効能確認待ち)

 初級ポーション(作澄:緑) × 7本(今日仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作濁:黄緑) × 大保存瓶三本(満杯・保管中・旧在庫)

 初級魔力ポーション(作淡濁:白) × 製造中(ケイ直接・小銀貨三枚で販売中)

 初級魔力ポーション(作澄:白) × 製造中(ケイ直接・小銀貨四枚で販売中)

 初級魔力ポーション(作濁:白) × 大保存瓶一本目充填中(4本/20本)

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読んでくださってありがとうございます。

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次回もよろしくお願いします!

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