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元トレーダー、金アレルギーなのに金本位制の異世界に翻弄される  作者: 夜明け一葉
第3章

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第73話『裏通り』

試作の失敗から三日が過ぎた。


作業場の問題は解決していない。薬草の匂い、温度の上下、客の出入り——どれも発酵食品の試作には向かなくて、別の場所を探さなければならないと分かっていたが、どこに当たるかも決まらないまま仕込みと販売を続けていた。


昼過ぎ、隣の飲食店の店主が顔を出した。鍋の火番の合間に時々立ち寄る男だ。


「最近、何か変えたか。作業場から変な匂いがしたが」


「食品の試作をした。失敗した」


「失敗か。何を作ろうとしたんだ」


「野菜を塩で揉んで発酵させようとしていた。薬草の匂いが移って使い物にならなかった」


店主が少し首を傾ける。


「発酵させる? 腐らせるのと違うのか」


「違う。酸味が出て長持ちする」


「……そんな食い方があるのか」


店主が腕を組む。


「ここじゃあ聞いたことがないな。変わったことを考えるな」


「冒険者が長期でダンジョンに潜ると体を壊す。食事の問題だと思っていて、野菜を持ち込める形にしたい」


店主がしばらく考えてから言った。


「食品を試作するなら確かにここじゃ難しいな。薬の匂いが染みてる」


「そうだ。別の場所が要る」


「そういや——」店主が顎を引く。「裏通りに煮込み屋があるんだが、近いうちに店を畳む話が出てる」


「理由は」


「年齢だ。息子は別の街にいて戻らないと言ってるから、長年やってきた店だがもう続けられないそうだ」


「その場所は借りられるか」


「契約は商業ギルドを通す決まりだが、見学くらいなら紹介があれば問題ない」


店主が少し間を置く。


「声をかけてみてやるよ。悪い話にはならないと思う」


「頼む」


店主が戻っていく。


裏通りの煮込み屋は一度前を通ったことがある。間口は広くないが奥行きがある造りで、鍋を使う店だから熱源もあるし食品だけを扱ってきた場所なら薬草の匂いもない。


(まず見てみるしかない)


夕方、隣の店主から返事が来た。


「明日の昼頃なら見せてもらえるそうだ。荷物の片付けはまだ途中らしいが、構わないそうだ」


「明日行く」


「借りるなら早い方がいいぞ。他にも話が来てるかもしれない」


明日、見学に行く。


石臼を出す。今夜の仕込みを始める。


---


【借金メモ・73話終了時点】

前話(72話)終了時:資金銀貨九枚と大銅貨四枚・残債大銀貨二枚と銀貨三枚と小銀貨一枚と大銅貨二枚

73話収入:初級ポーション(作淡濁:緑)二十本(小銀貨一枚×二十=銀貨二枚)+初級ポーション(作澄:緑)七本(大銅貨八枚×七=小銀貨五枚と大銅貨六枚)=銀貨二枚と小銀貨五枚と大銅貨六枚

73話支出:従業員給与ミレイ(大銅貨七枚)+フィア・ソル・充填×二(小銀貨一枚と大銅貨六枚)+食事分(大銅貨一枚)=小銀貨二枚と大銅貨四枚

残債充当:銀貨三枚を充当→残債大銀貨二枚と銀貨三枚と小銀貨一枚と大銅貨二枚から充当→大銀貨二枚と小銀貨一枚と大銅貨二枚

ケイの資金:銀貨九枚と大銅貨六枚

残債:大銀貨二枚と小銀貨一枚と大銅貨二枚


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【所持アイテムメモ】

ポーション類

 初級ポーション(作淡濁:緑) × 20本(今日仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作淡濁:緑・試作強化版) × 1本(ミツロウソウの雫一滴添加・効能確認待ち)

 初級ポーション(作澄:緑) × 7本(今日仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作濁:黄緑) × 大保存瓶三本(満杯・保管中・旧在庫)

 初級魔力ポーション(作淡濁:白) × 製造中(ケイ直接・小銀貨三枚で販売中)

 初級魔力ポーション(作澄:白) × 製造中(ケイ直接・小銀貨四枚で販売中)

 初級魔力ポーション(作濁:白) × 大保存瓶一本目充填中(4本/20本)


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