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元トレーダー、金アレルギーなのに金本位制の異世界に翻弄される  作者: 夜明け一葉
第3章

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第72話『試作』

翌朝、シュゴリーフを棚から出した。


考えても分からないことは試してみるしかない。容器は陶器の鉢があるし岩塩もある——まずやってみて、問題が出たら対処する。


シュゴリーフを細く刻む。包丁の感触を確かめながら均一な細さを意識して切り進め、刻み終えた葉を陶器の鉢に移して岩塩を振り、手で揉み込んでいくとしばらくして水分が滲み出てくる。


(出た)


細胞が壊れて水が出ている。この世界の野菜でも同じ反応をする。


揉み続けると、葉が柔らかくなっていく。水分が十分増えたところで手を止めた。


(問題が出た)


容器だ。


陶器の鉢では口が広すぎる——発酵中に空気が多く入ると腐敗に向かう可能性があって、口が狭く野菜を水分の中に沈めておける容器が要る。ポーションの保存瓶は口が小さすぎて詰め込めず、ちょうどいい大きさの壺がない。


作業場を見回す。陶器の皿、土鍋、石臼——発酵に使えそうなものがない。


(容器から揃える必要がある)


いったん鉢に蓋をして棚の隅に置く。腐らせるつもりはないが、このままでは理想の状態にならない可能性が高い。


昼過ぎ、ミレイが棚の補充を終えてから鉢を見た。


「それ、何ですか」


「野菜を塩で揉んだものだ。このまま数日置く」


「料理ですか」


「試作だ。食べられるかどうかもまだ分からない」


ミレイが鼻を近づけて、少し顔をしかめた。


「薬草の匂いに混じって、変な匂いがしませんか」


手を止める。


鉢に近づいて確かめると、確かに薬草の匂いが絡んでいる。作業場に染みついた匂いが鉢の中に入り込んでいる可能性がある。


(これは根本的な問題だ)


食品を薬の作業場で作れない。発酵食品は匂いを吸収するから、薬草臭がついた状態で完成しても食べ物にならない。


夕方、仕込みを終えてから鉢の中身を確認した。


数時間置いただけで野菜が少し柔らかくなって水分も増えたが、変な方向に向かっていないかどうかはまだ分からない。


翌朝、鉢を開けた。


匂いがある。薬草の匂いと何か別の酸味に近い匂いが混ざっていて、酸味は発酵が始まっているサインかもしれないが、薬草の匂いが混じっている以上これが正常な状態かどうか判断できない。


一かけら口に入れてみる。


塩辛い。野菜の水分が抜けて食感が変わっているが、薬草の後味が残っている。


(食べ物になっていない)


薬草の匂いが問題だということははっきりした。それだけは収穫だ。


作業台に向かいながら、整理する。


この試作で分かったことが三つある。


一つ目——この世界の野菜でも塩揉みで水分が出る。発酵の前段階は再現できる。


二つ目——容器の口が広すぎると空気が入る。口の狭い壺か瓶が必要だ。


三つ目——薬草の匂いが食品に移る。薬の作業場では食品の試作ができない。


(場所が要る)


発酵させる専用の場所。薬草の匂いがなく、温度が安定していて、容器を並べておける場所。


今の作業場ではどうにもならない。


石臼を出して今日の仕込みを始める。試作の問題は一晩で解決するものではないが、次に何をするかははっきりした。


---


【借金メモ・72話終了時点】

前話(71話)終了時:資金銀貨九枚と大銅貨二枚・残債大銀貨二枚と銀貨六枚と小銀貨一枚と大銅貨二枚

72話収入:初級ポーション(作淡濁:緑)二十本(小銀貨一枚×二十=銀貨二枚)+初級ポーション(作澄:緑)七本(大銅貨八枚×七=小銀貨五枚と大銅貨六枚)=銀貨二枚と小銀貨五枚と大銅貨六枚

72話支出:従業員給与ミレイ(大銅貨七枚)+フィア・ソル・充填×二(小銀貨一枚と大銅貨六枚)+食事分(大銅貨一枚)=小銀貨二枚と大銅貨四枚

残債充当:銀貨三枚を充当→残債大銀貨二枚と銀貨六枚と小銀貨一枚と大銅貨二枚から充当→大銀貨二枚と銀貨三枚と小銀貨一枚と大銅貨二枚

ケイの資金:銀貨九枚と大銅貨四枚

残債:大銀貨二枚と銀貨三枚と小銀貨一枚と大銅貨二枚

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【所持アイテムメモ】

ポーション類

 初級ポーション(作淡濁:緑) × 20本(今日仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作淡濁:緑・試作強化版) × 1本(ミツロウソウの雫一滴添加・効能確認待ち)

 初級ポーション(作澄:緑) × 7本(今日仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作濁:黄緑) × 大保存瓶三本(満杯・保管中・旧在庫)

 初級魔力ポーション(作淡濁:白) × 製造中(ケイ直接・小銀貨三枚で販売中)

 初級魔力ポーション(作澄:白) × 製造中(ケイ直接・小銀貨四枚で販売中)

 初級魔力ポーション(作濁:白) × 大保存瓶一本目充填中(4本/20本)


素材・食材類

 シロクサ乾燥葉 × 約三十枚

 ハコネソウ生葉 × 約四十枚

 イヤシゴケ乾燥粉 × 約三十五グラム

 アオバクサ生葉 × 約七十枚

 スイショウカズラの実 × 約四十粒

 ミツロウソウの雫(小瓶) × 残量わずか(要補充)

 ホシクサの露(小瓶) × 一本(解析済み・日の出前採取必須)

 シュゴリーフ試作(陶器鉢) × 失敗(薬草臭混入・廃棄)

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読んでくださってありがとうございます。

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次回もよろしくお願いします!

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