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元トレーダー、金アレルギーなのに金本位制の異世界に翻弄される  作者: 夜明け一葉
第3章

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第71話『治る理由』

夜、石臼を動かしながら頭の中で並べていた。


リナが持ち帰った話——第三層の奥で倒れたパーティ、体がだるい、傷が治らない。ダンジョン産の上級ポーションを使ったら動けるようになったが、食事は干し肉と固いパンだけだったという。


バルドの記録にあった十七名も、食事内容はほぼ同じだった。干し肉、固いパン、塩漬け——新鮮な野菜も果物も持ち込んでいない。


(保存食だけで数日——そこから何かが足りなくなる)


元の世界に、似た症状の病気があった。長期航海で船乗りたちを苦しめた病気で、倦怠感、傷の治りの遅さ、食欲の低下——生のものを食べると回復する。


(壊血病に似ている)


ただ、すぐに同じとは言い切れない。


壊血病の発症は通常、数週間から数ヶ月かかる。しかし冒険者たちは四日から八日で症状が出ている——早すぎて、元の世界の知識がそのまま当てはまるとは限らない。


もう一つ、説明がつかないことがある。


ダンジョン産の上級ポーションで治る、という事実だ。


壊血病なら欠乏した栄養素を補うしかなく、ポーションは体の損傷を回復させるが欠乏した成分を補う仕組みではない——少なくとも地上産にはそういう性質はない。なのにダンジョン産の上級だけが効く。


(ダンジョンの素材に、地上産にはない何かがある可能性がある——ただし今は確かめようがない)


保留にする。


手を止めて、確かなことだけを並べる。


保存食だけで数日過ごし、新鮮な野菜も果物もない。その後に体が動かなくなり、地上に出て食事を取ると治る。


(原因が何であれ——野菜が足りていないのは確かだ)


この一点だけは疑いようがない。


問題は、ダンジョンに生の野菜を持ち込めないことだ。傷みやすくて重く、第三層以降を数日かけて攻略するパーティに毎食分の新鮮な野菜を担がせるのは無理だ。


(持ち込める形に変えるしかない)


ふと、一つの方法が浮かんだ——発酵させればいい。


塩と野菜で乳酸発酵させる——元の世界でも古くから使われていた保存法で、腐らず軽くなり、かさが減る。生の野菜の成分が保たれる可能性もある。


ただ、アイデアを並べた途端に問題が積み上がった。


この世界に漬物という文化があるかどうかが分からない。発酵野菜という概念自体が存在しない可能性がある。


容器の問題もある。乳酸発酵には密封に近い環境が要るが木樽では隙間が多く、陶器の壺か瓶が向いているが、ポーションの保存瓶を流用できるかどうかも分からない。


温度管理の問題もある。発酵には適温があって高すぎると腐敗に向かい低すぎると止まるが、作業場の温度が安定しているかどうか確認していない。


(この世界の野菜が同じように発酵するかどうかすら分からない)


素材の性質が違えば、期待した反応が起きない可能性もある。


石臼を動かしながら、並べた問題を一つずつ見ていく。答えはどれも出ない。


夜、リナが来て帳面を開いた。数字を確認して帳面を閉じてから作業台の上を見ると、シュゴリーフが刻まれずに置いてある。


「何それ」


「対策を考えていた。問題が多くて詰まっている」


「何の対策」


「ダンジョン病だ。野菜を長期保存できる形にしたいんだが、方法が分からない」


リナが少し考えてから言う。


「この街で野菜の保存って、干すか塩漬けか燻すかくらいしか聞いたことないけど」


「塩漬けは知っている。ただ俺が試したいのはそれとは違うし、その方法があるかどうかが分からない」


リナが首を傾けてから出ていく。


シュゴリーフを棚の隅に置いた。刻む前に解決しなければならないことが多すぎる。


問いの形ははっきりした。答えはまだない。


---


【借金メモ・71話終了時点】

前話(70話)終了時:資金銀貨九枚と大銅貨六枚・残債大銀貨二枚と銀貨九枚と小銀貨一枚と大銅貨二枚

71話収入:初級ポーション(作淡濁:緑)二十本(小銀貨一枚×二十=銀貨二枚)+初級ポーション(作澄:緑)七本(大銅貨八枚×七=小銀貨五枚と大銅貨六枚)=銀貨二枚と小銀貨五枚と大銅貨六枚

71話支出:従業員給与ミレイ(大銅貨七枚)+フィア・ソル・充填×二(小銀貨一枚と大銅貨六枚)+シュゴリーフ二玉・岩塩(大銅貨二枚)+食事分(大銅貨一枚)=小銀貨二枚と大銅貨六枚

残債充当:銀貨三枚を充当→残債大銀貨二枚と銀貨九枚と小銀貨一枚と大銅貨二枚から充当→大銀貨二枚と銀貨六枚と小銀貨一枚と大銅貨二枚

ケイの資金:銀貨九枚と大銅貨二枚

残債:大銀貨二枚と銀貨六枚と小銀貨一枚と大銅貨二枚

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【所持アイテムメモ】

ポーション類

 初級ポーション(作淡濁:緑) × 20本(今夜仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作淡濁:緑・試作強化版) × 1本(ミツロウソウの雫一滴添加・効能確認待ち)

 初級ポーション(作澄:緑) × 7本(今夜仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作濁:黄緑) × 大保存瓶三本(満杯・保管中・旧在庫)

 初級魔力ポーション(作淡濁:白) × 製造中(ケイ直接・小銀貨三枚で販売中)

 初級魔力ポーション(作澄:白) × 製造中(ケイ直接・小銀貨四枚で販売中)

 初級魔力ポーション(作濁:白) × 大保存瓶一本目充填中(4本/20本)


素材・食材類

 シロクサ乾燥葉 × 約三十枚

 ハコネソウ生葉 × 約四十枚

 イヤシゴケ乾燥粉 × 約三十五グラム

 アオバクサ生葉 × 約七十枚

 スイショウカズラの実 × 約四十粒

 ミツロウソウの雫(小瓶) × 残量わずか(要補充)

 ホシクサの露(小瓶) × 一本(解析済み・日の出前採取必須)

 発酵シュゴリーフ(木樽) × 一樽(仕込み中・数日~一週間で完成予定)


道具類

 調合道具一式(購入済み) × 石臼・土鍋・計量皿一式×二組

 保存瓶 × 約十五本(刻印済み・運用中)

 精密型刻印魔道具 × 一個(稼働中)



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読んでくださってありがとうございます。

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次回もよろしくお願いします!

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