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元トレーダー、金アレルギーなのに金本位制の異世界に翻弄される  作者: 夜明け一葉
第3章

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第68話『納品と計画』

朝、ミレイが受付を開ける前に冒険者ギルドの使いが来た。


素材の袋を二つ持っている。


「採取クエストの納品です。アオバクサ生葉三十枚、スイショウカズラの実二十粒、確認をお願いします」


袋を受け取って開ける。アオバクサは葉脈の青い光がまだ残っていて鮮度があり、スイショウカズラの実は透明に近い薄青で傷みがない。


(状態はいい)


素材に指先を当てて軽く意識を向ける。有効成分が均質に入っている感触があって、問題のある素材ではない。


「受け取った」


ミレイが控えを受け取り、素材代を払う。使いが出ていく。


袋を作業場に持ち込み、並べて確かめる。アオバクサ三十枚、スイショウカズラ二十粒——これで量産に入れる。


今日から準備する。


昼前、ミレイが棚の補充を終えてから、こちらに一歩近づいた。


「あの……少しよろしいですか」


「なんだ」


「最近、作業場の周りの匂いが強くなってきていて。お客さんに気づかれることも増えてきました」


「薬草か」


「はい。服に染みているときもあって、今日も入口で止まったお客さんがいました」


確かに気になっていた。部屋に戻ると乾燥草の匂いが床に染みていて、眠りが浅い夜が続いている。


昼過ぎ、リナが装備をつけたまま顔を出した。ダンジョンから帰ったばかりの顔だ。


「今日は第二層で止めた。第三層手前の通路が混んでた」


「怪我は」


「なし」


ミレイが水を出すと一口飲んで、棚を一度見てから続ける。


「今日、入口のところで立ち止まってるお客さんを見たけど。匂い、かなり来てない?」


「ミレイにも言われた」


「増やしていけば増えるのは当然だけど、作業場を分けることは考えた方がいい。今の間取りで量産を続けると半年以内に限界が来ると思う」


「分かってる。借金が落ち着いたら動く」


リナが頷いて立ち上がる。


「夜また来る」


リナが出ていく。店の奥の加熱室を確認すると壁に茶色い染みが出始めていて、濾過後の残渣を捨てるたびに匂いが広がっていく。


急ぎではないが、このまま量産を続ければ半年以内に限界が来る。


午後、フィアとソルを呼んで話した。


「今日から初級魔力ポーションの製造を始める。俺が直接作るから、フィアとソルは初級ポーションをそのまま続けてくれ」


フィアが頷く。ソルが小さく返事をする。


「初級魔力ポーションは金属の道具を使えないから専用の木製と陶器の道具を用意する。加熱台は一つ空けておいてくれ」


「分かりました」


フィアとソルが戻っていく。


帳簿に数字を書いていく。一日に作れる本数、素材の消費量、クエストで確保できる量——どこに余裕があって、どこが詰まるか。


(今の納品でアオバクサ三十枚、スイショウカズラ二十粒。十本作れば葉十枚と実五粒を消費するが、俺一人で回せるのは一日せいぜい十本——それ以上は手が回らない)


(本格的に増やすには人が要る。加熱を任せられる人間をもう一人入れないと、初級ポーションとの掛け持ちには限界がある)


まず十本製造して出来を確認する。人の手当ては次だ。


夜、机に向かう。


薬草の匂いが部屋の空気に混じっていて、ミレイの言う通り服にも染みている。一度気になると頭から離れない。


保存食の件を書きかけたメモを取り出す。


「生のまま持ち込めないなら形を変える——小さく、軽く、傷まない形に」


そう書いてある。


(素材も手段も揃っていない。今は手をつけられる段階じゃない)


素材が何かも、加工の方法も、試す手段もまだない。イルゼの話を聞いて方向は見えたが、それだけだ。


メモを裏返して机に置く。


(初級魔力ポーションは動かせるし素材も届いた。ただ一人で回せる本数には限りがあるから、まず十本から始めて人を増やす余地を作りながら保存食の材料も探すしかない)


石臼を出す。今夜は淡く濁った初級ポーションと初級ポーションの仕込みだが、頭の中では明日からの切り替えを並べている。


薬草の匂いが少し鼻に刺さる。慣れてきている気もするが、慣れていい匂いではない。


リナが来て帳面を開いた。数字を確認して、一言だけ言う。


「残債が大銀貨三枚台に入ったよ。あともう少し」


「分かった」


リナが帳面を閉じてから、部屋を見回した。


「……この匂いで毎晩寝てるの? よく倒れないね」


「慣れた」


「慣れるもんじゃないと思うけど」


リナが出ていく。石臼を動かし続ける。


---


【借金メモ・68話終了時点】

前話(67話)終了時:資金銀貨一枚と大銅貨六枚・残債大銀貨三枚と銀貨五枚と小銀貨一枚と大銅貨二枚

68話収入:初級ポーション(作淡濁:緑)二十本(大銅貨六枚×二十=銀貨一枚と小銀貨二枚)+初級ポーション(作澄:緑)七本(大銅貨八枚×七=小銀貨五枚と大銅貨六枚)=銀貨一枚と小銀貨七枚と大銅貨六枚

68話支出:従業員給与ミレイ(大銅貨七枚)+フィア・ソル・充填×二(小銀貨一枚と大銅貨六枚)+採取クエスト素材代(アオバクサ三十枚・スイショウカズラ二十粒分・小銀貨一枚と大銅貨四枚)+リナ帳簿管理費(小銀貨一枚)+食事分(大銅貨一枚)=小銀貨四枚と大銅貨八枚

残債充当:なし(資金銀貨二枚と小銀貨四枚と大銅貨四枚<返済条件の銀貨三枚)

ケイの資金:銀貨二枚と小銀貨四枚と大銅貨四枚

残債:大銀貨三枚と銀貨五枚と小銀貨一枚と大銅貨二枚

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【所持アイテムメモ】

ポーション類

 初級ポーション(作淡濁:緑) × 20本(今夜仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作澄:緑) × 7本(今夜仕込み分・翌朝棚補充予定)

 初級ポーション(作濁:黄緑) × 大保存瓶三本(満杯・保管中・旧在庫)

 初級ポーション(作濁:緑) × 大保存瓶四本目充填中(累計12本/20本で満杯)

 初級魔力ポーション(作淡濁:白) × 在庫なし(明日から量産開始・販売対象)

 初級魔力ポーション(作澄:白) × 在庫なし(明日から量産開始・販売対象)

 初級魔力ポーション(作濁:白) × 大保存瓶別途保管予定(販売不可・20本で満杯)


素材類

 シロクサ乾燥葉 × 約四十枚

 ハコネソウ生葉 × 約四十六枚

 イヤシゴケ乾燥粉 × 約四十一グラム

 アオバクサ生葉 × 三十枚(本日納品・量産開始分)

 スイショウカズラの実 × 二十粒(本日納品・量産開始分)

 ミツロウソウの雫(小瓶) × 一本(ダンジョン産・効能不明・解析待ち)

 ホシクサの露(小瓶) × 一本(ダンジョン産・効能不明・解析待ち)


道具類

 調合道具一式(購入済み) × 石臼・土鍋・計量皿一式×二組(回復用)

 保存瓶 × 約三十五本(刻印済み・運用中)

 精密型刻印魔道具 × 一個(稼働中)


発注・依頼中

 採取クエスト(冒険者ギルド・Eランク以上指定)アオバクサ・スイショウカズラ:継続発注中


採用・勤務中

 販売員:ミレイ(天秤座保証・正式長期契約・日当大銅貨七枚・六ヶ月更新)

 生産者A(加熱担当):フィア

 生産者B(濾過担当):ソル

 充填作業員×二


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読んでくださってありがとうございます。

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次回もよろしくお願いします!

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