第67話『保存食の限界』
数日後の夜、仕込みを終えたところにガッシュから声がかかった。
「飯でも食わないか。ミーナとテオも来る」
断る理由もなかった。
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連れていかれたのはギルドから二本ほど東に入った通りにある酒場で、看板に盾と杯の絵が描いてある。中に入ると冒険者らしい男たちが七、八人、卓を囲んで飯を食っていた。煙と肉の焦げた臭いが混じっている。
ガッシュが奥の卓を確保して、ミーナとテオがすでに座って待っていた。
「遅い」とミーナが言った。
「連れてくるのに手間取った」
木のジョッキが四つ来た。ガッシュが自分の分を傾ける。ケイも一口飲む——麦の味がして、薄いが悪くなかった。
料理が来た。焼いた肉の厚切りと、茹でた根菜、黒いパンが一人分ずつ置かれる。
ガッシュが黙って食べ始める。テオも音を立てずに椀を傾ける。ミーナが「肉、やわらかい」と言いながら口に運ぶ。
四人とも特に会話もなく、飯を食っていた。
隣の卓から声が上がった。三十代くらいの男が二人、杯を傾けながら話し込んでいる。
「今回は五日潜ったが、帰りがきつかった。四層まで届いたのに、戻ってから二人倒れた」
「またか。飯は何持っていった」
「いつもと同じだ。干し肉と塩パンだけ。それ以外は重くて持てない」
「ダンジョン病か」
「多分そうだ。イルゼのところに行ったら食事を取れと言われた。二日で動けるようにはなったが、その二日が丸ごと消えた」
「儲けが消えるな」
「消えた。なんとかならんか、ダンジョンの中で食えるまともなものが」
「ないから困ってる。干し肉と塩パンしか選択肢がない」
男たちは杯を傾けて話を止めた。
ケイはジョッキを持ったまま、その会話を聞いていた。
(飯の問題——解決した者はいない)
「ケイ、また考えてる」ミーナが言った。
「少し」
ガッシュがジョッキを置いた。
「あの話なら、昔からだ。ダンジョンに潜る連中はみんな同じ問題を抱えてる。重くて傷まない、それだけで干し肉と塩漬けになる。解決した者はまだいない」
ケイも黒いパンを口に入れた。
(やはり食事が問題だ)
隣の男が言っていた「飯をどうにかしたい」という言葉が頭に残っている。干し肉と塩漬けしか選択肢がない——それ自体が問題だ。
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帰り道、一人になってから頭の中で並べた。
ダンジョン病は食事で回復する。ならば食事の中に足りないものがある。干し肉と塩漬けにない成分を補えれば予防できるかもしれない。ただ生のものは持ち込めない。重いし傷む。
(形を変えるしかない——軽くて、傷まない形に)
具体的な方法はまだ見えない。ただ方向は決まった気がした。明日、もう少し詳しく調べる必要がある。
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【借金メモ・67話終了時点】
前話(66話)より引き継ぎ
67話支出:酒場(食事・酒代)(大銅貨六枚)
ケイの資金:銀貨一枚と小銀貨七枚と大銅貨八枚
残債:大銀貨三枚と銀貨八枚と小銀貨一枚と大銅貨二枚
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