70/73
§2 裏切りの瞳
慧吾の胸の光が激しく疼いた。
鋭い痛み。
まるで誰かが、遠くから鼓動を打ち返してくるようだった。
慧吾はわずかによろめき、壁へ静かに手をつく。
「……慧吾」
諒介が一歩近づく。
「大丈夫だ」
短く返す。
その顔色を見て、諒介は静かに息を吐いた。
「その言葉を信じろと言われても、少し難しいな」
慧吾は苦く笑う。
「すまない」
「謝ることじゃない」
諒介は慧吾の隣へ並び、同じように雨の向こうを見つめた。
「ノヴァの鼓動と、お前の光。何か関係があるんだろう」
沈黙。
雨だけが屋根を叩いている。
やがて慧吾が、小さく口を開いた。
「……分からない」
その一言には、珍しく迷いが滲んでいた。
「だが、あの子が苦しむたび、俺の光も応える」
諒介は黙って聞く。
否定もしない。
問い詰めもしない。
「だったら確かめよう」
静かな声だった。
「推測のままじゃ、お前も苦しい」
慧吾は諒介を見る。
その眼差しには、焦りも責める色もなかった。
ただ、同じ答えを探そうとする意思だけがあった。
慧吾は小さく頷く。
「……ああ」
「行こう、北区の管理棟だ」
雨の向こうへ視線を向ける。
「あの信号の正体を確かめる」
二人は並んで歩き出した。
夜の街を、雨だけが静かに見送っていた。




