↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透明の心臓  作者: 水瀬 悠里
Ⅴ 赦しの環

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
67/73

第16章 幸せのかたち

久しぶりの、仲間があつまった夕餉の席が、一段落した頃。


ふと、リリカが首を傾げた。


「……慧吾、あなた……」


慧吾が箸を止めて顔を上げる。


「どうした」


リリカは少し驚いたように微笑んだ。


「顔色が……ね。前よりずっと、いいのよ」


慧吾は少しだけ瞬きをした。気づいていたのは、ジャックだけではなかった。


その時。


ノヴァがキュッとジャックの袖を引っ張った。小声で──いや、わりと丸聞こえで囁く。


「ねぇねぇ、じゃっく、いって!ねっ?」


ジャックは吹き出した。


「自分で言えよ坊や!」


「やだぁ!! はずかしい!!」


慧吾が一瞬だけ肩を震わせて笑う。


リリカが「どういうこと?」と首をかしげると、ジャックは渋々と言いながらもどこか誇らしげに鼻を鳴らした。


「……まぁ、あれだ。 この旅で、坊やの光がだいぶ“役立った”んだよ」


ノヴァは顔を真っ赤にしながら、消え入りそうな声で言った。


「けいごのいたいの、すこしだけ、ね、“なおした”んだ…」


慧吾の目がふっと柔らかくなる。


「……謙遜するな。 お前のおかげで、ずいぶん楽になった」


「すごいねノヴァ!」

「さすが風の戦士ジュニア!」

「大手柄だな!!」


みんなが口々にノヴァへの賛辞を贈る。ノヴァはついに照れてジャックの後ろに隠れた。


ジャックは笑いながら、ノヴァの頭をぐしゃぐしゃ撫でた。


「ほら見ろ、お前の手柄だってよ。 誇れ誇れ。いっちょまえに“命の恩人”なんだからな」


ノヴァはくしゃっと笑った。

「すこしだけ…おんがえし、できたかな」


呟くような声を聞き、慧吾が破顔して、大きな手をノヴァの頭に置いた。


ふたりの笑顔を見て、リリカの胸に、静かで深い安堵が広がった。


「……ありがとう。 あなたたち、本当に……綺麗にしてくれて」


風が窓辺で軽く鳴り、夕餉の灯りがほんのり揺れた。


それはまるで──「この家族は、もう壊れない」そう告げるような、優しい揺れだった。


寝入りそうなノヴァの髪を整えながら、リリカはふと慧吾を見た。


「……あなたね。 自分の痛みを隠すの、ずっと下手よ」


慧吾はわずかに眉を動かした。


「隠しているつもりだが」


「ふふ。 隠し事は、あなたよりジャックの方が上手よ。 あなたは、誰かに気づいてほしくて、 でも迷惑をかけたくなくて…… そういう顔、すぐに出るんだから」


慧吾は何も言えず、ただ視線を落としてノヴァを見つめた。


リリカは続けた。


「──大丈夫。 あなたの痛みは、あたしたちで全部背負わせてもらうわ。 だってね、慧吾。 あなたはもう、ひとりで闇に立つ人じゃないのよ」


慧吾の喉が、かすかに震えた。


ノヴァの寝息が、すう、と静かに響く。


「……ありがとう、リリカ」


リリカは女神のような微笑みで、ふっと顔をあげた。


「あたしね。あなたに救われたあの日から、ずっと言いたかったの。


ありがとう。


そしてここに戻ってきてくれて、ほんとにありがとう。何度言っても、足りないくらいよ」


慧吾は柔らかく微笑む。


「そしてね」


リリカはノヴァに毛布をかけ直しながら、続ける。


「ここでみんなで、生きていってくれることが、 あたしの一番の“救い”よ」


外の風が、やさしく二人の間を通り抜けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
, ,

,

,

,

,
,
,
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。