第9章 陽だまりの命
ノヴァは、突然その場に立ち尽くした。
滅びた村には、「人が生きていた痕跡」があまりにも濃く残っていた。干しかけの洗濯物は炭のように黒く縮れ、食卓だった場所には、かき集められた灰だけが残っている。
ノヴァは、村の跡地の中央にしゃがみこんだ。
冷たい土に、そっと小さな指を沈める。
そのひんやりした温度が、胸の奥のなにかをゆっくりと締めつける。
「……この“つめたさ”、しってる……」
指先が震えていた。
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思い出せる。でも、ぜんぶじゃない。
陽の光もなかった。声も聞こえなかった。ただ、遠くで世界が閉じていくみたいに──「ぼく、もうおわるんだ」って、そんな感覚だけがあった。
でも──
次の瞬間、胸の奥で、あたたかい“火”がついた。
暗闇でぽつんと灯る、小さなひかり。
こわくなかった。痛くもなかった。
ただ、涙があふれそうなほど、あたたかかった。
『……生きろ……』
その声だけは、なぜだか、忘れられなかった。
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慧吾とジャックは、短く息を呑んだ。避けさせたかった記憶──そう思ったその刹那。
ノヴァが、陽だまりの下に立った子どもみたいに笑った。
「ぼく、いっしょうけんめい、あるいたんだ。 目のまえに、あの時のひかりがずっとあった。 あれは、けいごだったんだね」
そして、胸の前でぎゅっと拳を握る。
「それで……きづいたらね…… じゃっくのうでのなかに、いたんだよ」
ジャックはほんのわずか視線をそらした。
「……あの時の坊やときたらな。 冷たくて、軽くて…… 息してんのかどうかも、わかんなかった」
ノヴァは首をかしげ、柔らかく笑った。
「でも、じゃっく…… あったかかったよ?」
ジャックの動きが、一瞬だけ止まった。
慧吾はノヴァの髪をそっと撫でる。
「……お前は、ふたりに救われたんだ」
「ふたり?」
「俺が“光”で、お前を呼び戻した。 ジャックが“腕”で、お前を抱き上げて運んだ。 どちらが欠けても、お前はここにいなかった」
ノヴァは大きな目をさらに丸くしたあと、ふわっと笑った。
「じゃあ、ぼくは…… ふたりのいのちで、もう一回うまれたんだね!」
慧吾の胸がわずかに鳴り、ジャックは舌打ちしながらも、口元をゆるめた。
その風景を包む風が、まるで三人の会話に頷くように静かに吹き抜けた。




