エピローグ
──消えた光が、もう一度世界を照らすとき。
崩れた空間の向こうから、朝の光が差し込んでいた。
白い街は傷だらけで、瓦礫の隙間から、淡い陽が静かに滲んでいる。
総裁の気配は消えた。あの圧も、あの嘲笑も、もうない。
けれど。
胸の奥が、まだ熱い。
あたしはそっと、手を当てた。
ドクン。
鼓動が鳴る。
あたしのものと、もうひとつ。
微かで、確かで、消えそうで消えない光。
「……慧吾」
呼んでも、返事はない。
外套も、剣も、姿も、ここにはない。
命を賭した。それは、事実だ。
守るために。託すために。
でも――消えてはいない。
あの瞬間、闇を裂いた光。あの決意。あの覚悟。
それが、ここに残っている。
諒介が静かに立ち上がる。哲平が拳を握る。辰彦が深く息を吐く。ジャックが空を見上げる。
誰も泣き言は言わない。
悔しさも、喪失も、全部抱えたまま。
それでも、立っている。
「……行くぞ」
誰が言ったのか、わからない。
でも、足は自然と前に出た。
胸の奥の光が、かすかに揺れる。
《……生きろ》
風が吹いた気がした。
それは幻かもしれない。
でも、あたしは笑った。
「……うん」
夜は明けた。
世界はまだ、不完全だ。
それでも、鼓動は止まらない。
透明の心臓は、いまも確かに、脈打っている。
Fin.




