Ⅱ 堕天の光【プロローグ】
──消えた光が、もう一度世界を照らすとき。
**リリカ**
眠れぬ夜、胸の奥で、あの光がまだ瞬いている気がする。あれは痛みと希望がまじりあった、たったひとつの心臓の音。触れたら消えてしまいそうで、それでも確かに――ここにある。
あのひとがいなくなってから、世界は少し透明になった。見えなかったものが見えて、見えていたものが霞んでいく。それでも歩き出せるのは、あの声が背中に残っているから。
「行け」と言った人の光が、まだ、私を導いている。
**慧吾**
終焉のあとに残るのは、静寂と呼吸だけだった。闇の底で、わずかな脈動を感じる。――それが、リリカの心臓だ。
彼女の光が、あの場所を照らした瞬間を、今も覚えている。機は熟した。あの一言に、すべてを賭けた。
けれど、もしもこの“無”に音が届くなら、それは、まだ生きたいと願う誰かの鼓動だろう。
リリカ。おまえの光は、まだこの世界を温めている。
**ジャック**
焼けた風が頬を撫でた。灰が降る。かつて仲間だった者たちの名を、もう口にはしない。
「これで終わりかよ、まったく」笑ってみせたが、声はすぐに砂に吸われた。
あの夜、誰もが信じていた。最後の作戦が、夜明けを連れてくると。だが、夜は明けなかった。銃声も、叫びも、すべて炎に呑まれた。
残ったのは俺だけだ。それが“奇跡”ってやつなら、神はずいぶん悪趣味だ。
それでも――まだ弾は残っている。次に誰かを守れるなら、その火を、もう一度撃つために。




