第4章 最初の村への道
谷を抜けると、空がぐっと広がった。花の国の外は、ひんやりとした風がさらりと通り抜けていく。
ジャックが背中の荷物をどすっと下ろし、ぐちゃぐちゃの地図を誇らしげに広げた。
「ほら見ろ!最初の目的地、アルメの小村だ!」指差す先は……羊の絵と、(多分)山らしき落書き。
慧吾が目を細めて眺めるように地図を見る。「……ジャック。これは壁画だ」
ノヴァ、横で大爆笑。「すごいー!!」
ジャックがむっとしながらノヴァの顔をぐしゃぐしゃ撫でる。
「笑うんじゃねぇ!!方向だけは合ってんだよ!!」
慧吾はふっと笑った。
リリカが包みを持って駆けてきた。
「はいこれ!道中のお弁当。ノヴァのクッキーも入ってるよ!」
ノヴァは目をキラキラさせて頬をうっすら紅潮させる。
「ぼくの!ぼくのクッキー!!けいごもたべてね!!」
慧吾は目を細めて、ノヴァの頭を撫でる。
「……ああ。楽しみにしてる」
ジャックが呆れ顔で肩をすくめる。
「ったく甘ぇんだよお前ら。あ、リリカ姐さん。俺の分は?」
「ないよ」リリカ即答。ジャックはがーん。
哲平が背後からツッコむ。「お前期待しすぎ!」
辰彦は杖をつきながら笑う。
「旅はええもんじゃ。 世界が治る場所を見つけたら、ワシにも教えてくれい」
諒介は地図をひと目見て嘆く。
「……ジャック。今度は俺が描く」
ジャックは諒介の視線から地図をひったくる。「やめろ!俺の芸術に手ぇ出すな!!」
慧吾は荷物を持ち、空を見上げて風の向きを読んだ。
「……行くか」
ノヴァは慧吾の手をぎゅっと握る。その温度が、慧吾の顔をまた柔らかくした。
ジャックは大きく伸びをして叫ぶ。
「よし!! 見たことねぇ景色を見に行くぞ。三人で!!」
三人で。
その言葉が、この旅に宿る“希望”そのものだった。
風が吹いた。
旅の道をすっと押してくれるような、やわらかい初春の風だった。




