第3章 ジャックの地図と、旅支度
昼下がりの縁側。
慧吾は砥石で剣を軽く整え、ノヴァは木の鳥を並べて遊び、リリカは洗濯物を干していた。
そこに、どん、と豪快な足音。
「おーい!! 旅支度、できてっかァ!!」
ジャックが現れた。手には丸めた紙束……いや、紙の塊。
慧吾が眉をひそめる。
「……それは」
「地図だ!! 俺が徹夜で書いた、世界一わかりやすい地図!!」
(※徹夜した事はおそらく本当)
ジャックは勢いよく紙をバサァッと広げた。
……ぐちゃぐちゃ。
円、線、動物、謎の×印、炎の絵、そして意味不明な英語まで描かれている。
「わぁ〜〜〜……すごいね……
……ぐちゃぐちゃ〜〜〜〜!!」
「ジャック。これは地図ではない。絵だ」
「はァ!? 雰囲気で伝わるだろ!?」
リリカが覗き込んで吹き出し、諒介は遠くから「絶対迷うやつだ」と呟き、哲平は「これ火の魔物いんじゃん」と×印の横の落書きを指した。
ジャックはむくれる。
「お前らなぁ……! でも安心しろ。道は俺が覚えてる!!」
「なおさら地図はいらない」
慧吾がまだ地図を凝視しながら呟く。
「あのなぁ!形が大事なんだよ!!」
ノヴァはけらけら笑い、慧吾は顔を手で覆い、みんなが久しぶりに声を出して笑った。
ジャックは胸を張る。
「飯は俺!! 風読みは慧吾!! 隊長は坊や!!」
ノヴァ「たいちょう!? ぼく!? ……じゃあ、ジャックは?」
「副隊長だ!!」
「けいごは?」
「……参謀長か?」
慧吾の目が少し大きくなる。
「聞いたことのない役職だな」
「……ふたりとも、かっこいい!」
ノヴァはニコニコと小さく手を叩く。
ジャックは調子に乗って荷物を詰めはじめる。
・肉の干し物
・鍋
・タオル10枚
・ノヴァの布団
・ノヴァの木の鳥(3羽)
・ノヴァの着替え(多すぎる)
慧吾「……多い」
「旅ってのは準備が命なんだよ!!」
ノヴァも真剣そのもの。
「ぼくね! これ持っていく!!」
小さなポシェットを持ち上げる。リリカが一晩で仕上げたポシェットだ。
中身は──
・飴玉2つ
・リリカ先生のメモ(さみしくなったらおもいだしてね、と書いてある)
・木の鳥の羽・慧吾の外套のほつれ糸(?)
慧吾「……それは何に使う」
ノヴァ「ひみつ!!」
慧吾は小さく笑う。
ジャックが腕を組む。
「よし。 飯の村も、風の谷も、湖も全部回る。 “世界がきれいになったか”この目で見るぞ」
ノヴァが目を輝かせる。
「けいごとジャックと三人で行くんだね!」
慧吾はノヴァの頭に手を置いた。
「……ああ。 一緒に確かめよう」
風が縁側を通り抜け、テーブルの上の地図(絵)がひらりと揺れた。
それはまるで、世界が三人を歓迎しているようだった。




