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透明の心臓  作者: 水瀬 悠里
Ⅴ 赦しの環

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第3章 ジャックの地図と、旅支度

昼下がりの縁側。


慧吾は砥石で剣を軽く整え、ノヴァは木の鳥を並べて遊び、リリカは洗濯物を干していた。


そこに、どん、と豪快な足音。


「おーい!! 旅支度、できてっかァ!!」


ジャックが現れた。手には丸めた紙束……いや、紙の塊。


慧吾が眉をひそめる。


「……それは」


「地図だ!! 俺が徹夜で書いた、世界一わかりやすい地図!!」


(※徹夜した事はおそらく本当)


ジャックは勢いよく紙をバサァッと広げた。


……ぐちゃぐちゃ。


円、線、動物、謎の×印、炎の絵、そして意味不明な英語ジャックのクセまで描かれている。


「わぁ〜〜〜……すごいね…… 

……ぐちゃぐちゃ〜〜〜〜!!」


「ジャック。これは地図ではない。絵だ」


「はァ!? 雰囲気で伝わるだろ!?」


リリカが覗き込んで吹き出し、諒介は遠くから「絶対迷うやつだ」と呟き、哲平は「これ火の魔物いんじゃん」と×印の横の落書きを指した。


ジャックはむくれる。


「お前らなぁ……! でも安心しろ。道は俺が覚えてる!!」


「なおさら地図はいらない」

慧吾がまだ地図を凝視しながら呟く。


「あのなぁ!形が大事なんだよ!!」


ノヴァはけらけら笑い、慧吾は顔を手で覆い、みんなが久しぶりに声を出して笑った。


ジャックは胸を張る。


「飯は俺!! 風読みは慧吾!! 隊長は坊や!!」


ノヴァ「たいちょう!? ぼく!? ……じゃあ、ジャックは?」


「副隊長だ!!」


「けいごは?」


「……参謀長か?」


慧吾の目が少し大きくなる。

「聞いたことのない役職だな」


「……ふたりとも、かっこいい!」

ノヴァはニコニコと小さく手を叩く。


ジャックは調子に乗って荷物を詰めはじめる。


・肉の干し物

・鍋

・タオル10枚

・ノヴァの布団

・ノヴァの木の鳥(3羽)

・ノヴァの着替え(多すぎる)


慧吾「……多い」


「旅ってのは準備が命なんだよ!!」


ノヴァも真剣そのもの。


「ぼくね! これ持っていく!!」


小さなポシェットを持ち上げる。リリカが一晩で仕上げたポシェットだ。


中身は──

・飴玉2つ

・リリカ先生のメモ(さみしくなったらおもいだしてね、と書いてある)

・木の鳥の羽・慧吾の外套のほつれ糸(?)


慧吾「……それは何に使う」


ノヴァ「ひみつ!!」


慧吾は小さく笑う。


ジャックが腕を組む。


「よし。 飯の村も、風の谷も、湖も全部回る。 “世界がきれいになったか”この目で見るぞ」


ノヴァが目を輝かせる。

「けいごとジャックと三人で行くんだね!」


慧吾はノヴァの頭に手を置いた。


「……ああ。 一緒に確かめよう」


風が縁側を通り抜け、テーブルの上の地図(絵)がひらりと揺れた。


それはまるで、世界が三人を歓迎しているようだった。

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