表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

Ⅰ 終幕「光」

「……終わらせる!」

あたしは立ち上がった。

闇が弾け、総裁の力が弱まっている。


ドクドク、ドクン──!!


ふたつの光が調和し、仲間たちと共鳴した。

慧吾のビジョンが重なる。

あたしは流れる涙を拭おうともせず、両手を高く掲げた。

眩い光が、あたしの身体中から溢れ出した。

全員を輝かせた白い光がいっそう広がり、総裁の影を飲み込んでいく。


『なん……だと……!!』


総裁の仮面がひび割れ、黒い影がのたうつ。

命を賭して託された慧吾の思いを、あたしたちのちからの全てに変える。


「いまだ!」

諒介が叫び、刃を突き立てる。哲平の拳が振り下ろされ、辰彦の足が地を鳴らす。

ジャックの銃声が轟き、光と音が重なった。


あたしは胸の奥から、すべてを放った。

「……慧吾を!…みんなを返して!」


光が激しい流れとなってほとばしり、総裁の仮面を包み込む。


『あぁぁぁぁぁぁぁーー!!』


黒い影は絶望に満ちた、つんざくような悲鳴を上げ、空を裂き砕け散った。


残されたのは、白い光と、仲間の息遣いだけ──。


胸の奥に残るのは、勝利の実感じゃない。

慧吾の姿だけが、焼き付いて離れなかった。


あたしは崩れ落ちたまま、ふと手のひらを見た。

そこから、スッ……と光が抜けていく。


小さな光の球が空へ舞い上がり、白い残滓に溶けていく。

けれどその奔流の一部が、あたしの胸に宿ったのを感じた。


胸が熱い。涙がこぼれる。喉を震わせても、もう声にならない。


──慧吾。


崩れた空間の向こうから、朝の光が差し込んでいた。

夜明けの色は淡く、けれど確かに世界を照らしていた。


その時、胸の奥がじんわりと熱を帯びる。

慧吾は、いつも涼しい顔をしていた。

なぜ外套を脱ごうとしなかったのか──今ならわかる。


彼の胸にも、光があったのだ。

それを隠して、守って、最後の瞬間に託した。


あたしの胸には、そのぬくもりがまだ残っている。押し潰される痛みに耐えた心臓が、いまも確かに脈打っていた。慧吾が、最後に残した意志のように。


《……生きろ》


幻聴かもしれない。でも、その声にすがりつかずにはいられなかった。


涙が溢れ、視界が滲む。

堪えても、嗚咽が漏れる。


諒介は肩を支えながら、苦い顔で呟いた。

「……最後まで、黙って背負いやがって」


ジャックは顔を背け、吐き捨てるように言う。「I'm gutted…」


辰彦は拳を握り、静かに天を仰ぐ。

「慧吾よ……その覚悟、わしらが引き継ぐ」


哲平は黙って拳を打ち合わせ、声にならぬ悔しさを滲ませた。

あたしの涙は、止まらなかった。


それでも聞こえた。

確かに、あの声が。

胸の中に残る、確かな鼓動が。


──行け。


あたしは目を閉じ、その言葉を胸に抱きしめる。

あのひとつの言葉の裏に、どれだけの覚悟があったのか。

たった1人で、ずっと戦っていたんだね。

こんな形でいなくなるなんて。


……ずるいよ。慧吾。


顔を上げる。涙は乾かない。

それでも、夜明けはもう訪れている。

未来を照らすその光の中へ、あたしたちは歩き出す。


透明の心臓 終幕 ~完~


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
, ,

,

,

,

,
,
,
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ